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博士と転寝をする助手の話
しおりを挟む「やぁ、助手君よ、実験の続きを始めるぞ!」
私と助手君しかいない研究室では、今日も私の元気な声が響く。
そんな訳で休憩を終え、実験の続きをしようと実験室に入ると机では転寝をしている助手君の姿があった。
「おやっ、珍しいな。助手君がこんな所で転寝をしているとは」
いつもは私に「そんなところで寝るな」と怒るはずなのにいざ自分がするとなると気持ちよく寝るのだから、些かズルいと思う。
と言っても、もう休憩時間はお終い。
そろそろ、作業に戻らなくては。
このままにしておいては体も痛めてしまいそうだし、さっさと叩き起こしてやらなくてはな。
……だが、ここまで無防備な助手君もなかなかに珍しいな。
いつもはしっかりしていて口うるさい助手君も、こうやってぐっすりと寝ていると可愛い青年に早変わりするから、全くもって不思議だ。
何だか、出会った頃の無垢で可愛い助手君を見ているようだ。
今では、遠慮も無くなって、まるで物語に出てくる継母のように口うるさくなってしまったからな。
まぁ、そんなでも未だに私の癒しなのだが。
と言うか、本当にぐっすり寝ているな……
……これなら何かしても、助手君にはバレないんじゃないか?
……よし。
私は今までできなかったことをしようと考える。
だが、悪戯をしたら、後が怖いからな……。
だからと言って、この機会を逃すわけにも……。
そうだ……アレをしよう……
そう思った私は、誰もいないことは分かっているが周りをキョロキョロと見まわす。
そして、自分の唇を、助手君の唇に重ねるために近づく。
あと10cm……、あと5cm……、
もう少しで付くというところでいきなり、ピピピピピピと大きな音が鳴り響く。
「!?」
「ん、んぅー、もう休憩終わりですか……あれっ、博士どうしたんですか?」
助手君はスマホのアラームを切りながら、私に声を掛けてくる。
「い、いや、何でもないよ。ただ、もう時間になったから起こそうかと思っただけさ」
「あ、そうですか。それはすいません。それじゃあ、早速、再開していきましょうか」
「う、うん、そうしよう」
そうして、私たちは実験の続きを始める。
……はぁ、まったく、また私は出来なかったな。
いつになったら、出来るようになるんだか……
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