29 / 36
目隠しをする博士と助手の話
しおりを挟む「ふふふ、だーれだ!」
僕と博士しかいない研究室では、今日もそんな博士の声が響く。
「……ちょっといきなり視界を塞がないでくださいよ。作業中なんですけど」
「だーれだ!」
「聞いてますか?いい加減、この手をどかしてもらいたいんですが」
「だーれだ!」
あ、これ、ちゃんと反応しないといけないやつだ……
「はぁー、まったく……博士でしょ。と言うか博士じゃなかったら逆に怖いんですけどね」
「ブッブー!博士じゃないよ」
「え?その声はどう考えても博士でしょ。嘘つかないでくださいよ」
「その博士の前に付けないといけない言葉があるでしょ?」
「……うーん、ポンコツか面倒くさい、それかバカ」
「ちっがーう!『可愛い』でしょうが!と言うかそこまで私、ひどくなくない?」
「結構ヤバいとは思いますけどね……はぁ、それじゃあ、可愛い博士、手をどかしてください」
「仕方ないな。君がそこまで言ってくれるのならどかしてあげよう」
そう言って、博士は僕の視界を覆っていた手をどかす。
はぁ、やっと作業が再開できるよ。
「……と言うかいつも言っていますが、自分のことを自分で可愛いというのは如何なものかと」
「だって、誰も言ってくれないんだもん。それだったら、自分で言うしか無くない?」
「それ、言ってて悲しくならないんですか?」
「別に?事実だもんね!」
博士はまあまあある胸を張りながら、そう言い放つ。
「……さいですか」
「まぁ、これも君が私のことを『可愛い』って言ってくれたら解決することなんだけどね」
「さぁ、実験の続きをやっていきましょうかね」
「え、無視?そこまで露骨に無視されたら、私泣いちゃうよ?いい大人が泣いちゃうよ?」
「泣くなら好きにしてくださいよ。……と言うか、いつまでそこに突っ立っているんですか。早く実験をして下さいよ」
「うぅ、助手君が冷たい。-273℃並みに冷たい」
「誰が絶対零度ですか。分かりづらいな。もういいから、そんな無駄口叩いてないで、やりますよ」
「はーい……」
そうして、若干しゅんとしている博士と共に実験を再開していくのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる