元カノとの最悪な邂逅

御厨カイト

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元カノとの最悪な邂逅

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「別にいいでしょ。私がどの男とヤッたって」

「別にいいって……俺たちって付き合っているよな。付き合っているのに別の男とヤるなんてお前、それ浮気だぞ」

「浮気なんていつもの事でしょ。毎回毎回いちいち目くじらを立ててたら身が持たないよ」

「お前……毎回毎回そう言ってはぐらかして、ちっとも反省しないな。なんでお前はそう節操はないんだ」

「もう、うるさいな。私が節操がないことなんて付き合う前から知っていたことでしょ。何よ、今更……」

「確かに分かっていたことだが、正式に付き合い始めたらその節操のない男遊びも収まると思うだろ」

「そんなわけないじゃん。もう2年以上付き合っているのにそんなことも分からないんだね」

「お前いい加減にしろよ。なんでお前は反省しないんだ」

「反省も何も私は何も悪いことしてないもん」

「浮気はお前にとって悪いことじゃないのか」

「悪いことじゃないよ。だってあんた全くそういうことしてくれないじゃん。そんなのこっちもつまらないよ。だから、あんたより遊んでくれる人のところに行っただけだよ」

「それは確かに相手しなかった俺も悪いが、だからといってそれが浮気をしてもいい理由にはならないだろう」

「もう、本当にいつもいつもうるさいな!」

「いつもいつもってお前が浮気を止めないからだろ」

「もういいじゃん。この話もうやめようよ。ほら、ね、いつものことだと割り切って」

「いいや、今日こそはもう我慢の限界だ。お前のその節操のなさにはもう耐えられない」

「だからってどうするの。私と別れる?私は別にいいよ。あんたみたいに見た目も普通で精力もそんなになくて、話も面白くないあんたとなんて別にね。でも、あんたはどうせヘタレだから別れられないでしょ。あ~あ全く不憫だね」

「別れよう」

「……え?」

「俺たち別れよう」

「……あんた本気?」

「俺はいつだって本気さ。もう我慢の限界だ。別れよう」

「ふーん、そうなんだ。いいよ。私たち別れよう」

「じゃあ、ここから出ていくから」

俺はそう言うと自分の私物とかをまとめる。
歯ブラシとかはめんどくさいから目の前でムスッとしている楓に処分してもらうことにしよう。

2年もここで住んでいた割には私物があまりなくて、大きめのリュックサックと手提げバッグ1つで事足りてしまった。
なんだか虚しく感じてしまうがこれも仕方がない。

そして俺はその荷物を背負って玄関に向かい、俺が荷物をまとめるのは無言で見ていたアイツに声をかける。

「歯ブラシとか枕とかはそっちで勝手に処分しておいてくれ。もう顔を合わせることもないと思うけど、じゃあな」

俺は背後にいるアイツの方には振り向かず、扉を開けて外に出る。
アイツから何か言われるかと思ったが結局何も言わなかった。

玄関の扉が「ガチャン」と閉まる音が嫌に響く。

これからどうしようか、ひとまずネカフェに行くか。
そんなことを考えながら、俺は夜道を歩く。









*********




3年後



俺は親類が倒れたというので病院にお見舞いに行った。
その親類にあいさつした後、俺は帰ろうと思って病院の受付を通ろうとすると声をかけられた。

その声の主は俺の幼馴染で俺とアイツを引き合わせた蓮だった。

「よっ、久しぶりだな」

「おぉ、久しぶり」

「今日は誰かのお見舞いか?」

「親類が倒れたとかでそのお見舞いに」

「なるほどな」

「お前は?」

「俺は楓が自殺未遂したとかでその見舞いと様子見にな」

「えっ」

「お前知らなかったのか」

「あぁ、ど、どういうことだ。楓が自殺未遂するなんて」

「なんかな、お前がアイツと別れた後、アイツなんか病んじまったみたいでな。それで、とうとう限界を迎えてしまったみたいで自分のマンションの部屋の窓から飛び降りたみたいなんだよ。まぁ、運がいいんだか悪いんだが足とか肋骨とかの骨折しただけだったみたいだがな。それでも、命には別条がないみたいだから一安心なんだが」

まじか。
まさかそんなことになっていたとは。

「まぁ、お前が知らないのも無理はないか。お前あれからアイツと連絡とっていないみたいだからな」

「それは仕方ないだろう。俺はもうアイツとは縁を切ったんだ。それに俺はもう新しい人生を歩んでいる」

「それに関してはおめでとうだな。まぁ、ここで会ったのもなんかの縁だ。少しだけでも顔を見せてやったらどうだ。ちなみにアイツの病室は108号室だそうだ」

それ言うとあいつは「頼んだぞ」みたいな感じのニュアンスで帰っていった。

……どうしたものか。
正直に言って気が重い。

もう別れたのは3年も前の事だ。
それなのにいまさら……。

だがあいつが言ったとおりこれも何かの縁かもしれない。
ちょっと顔を出してやるか。

そうして俺はアイツの病室を探す。



「108号室、ここか」

緊張してきた。
なんせ、3年ぶりに会うんだ。
元カノなら尚更。

俺は少し迷いながらも病室の扉を開ける。

アイツはこちらを見るなり、目が飛び出るくらいびっくりしている様子だった。

「な、なんで。なんで君が」

「いやぁ、さっき柔田に会ってな。お前が自殺未遂したって聞いたから」

「あ、そうなんだ。その話聞いたんだ……」

「単刀直入に聞くがお前、なんで自殺なんかしたんだ。一体どうした」

「いやぁー、ハハハハッ。なんか自分が嫌になってきちゃって」

「お前ってそんなに自分のアイデンティティに悩むやつだったっけ」

「いや、そうじゃなくて。……私が自殺未遂したっていう話を聞いたんだったら病んでいたことも知っているんでしょう」

「ああ、それも蓮から聞いた。一体本当にどうした。お前はそんな奴じゃなかっただろう」

「……私はね、まだ君のことが好きだよ」

「い、いきなりどうした」

「なんかね、あの時君と喧嘩別れしちゃった時は『あぁ、清々した』と思ってたんだよ。でもね、そこから、1人で暮らしているうちにだんだん寂しくなってきたんだよ。その気持ちはいつも遊ぶ遊び仲間と遊んでも、何をしても晴れなくてそこで君の大切さに気付いたんだよ。何もしても君の温もり、君の香り、君の声とかを思い出すんだ。そして私はなんてことをしてしまったんだって心の底から思ったんだ。心の底から」


なるほど、これは失った後にその大切に気づくやつか。

俺がそんなことを感じているのを露知らずアイツの話はまだまだ続く。


「それからね、私は何て君にひどいことをし続けたんだろうって考えるようになったんだ。だってそうでしょう?君に何回も怒られてもいろんな人と浮気したり、君にひどい言葉を吐いたり、君には色々ひどいことをしてきたんだよ。私が君だったらこんな彼女嫌だよ。嫌いになるよ。でも、君は2年以上もこんな私に付き合ってくれた。なのに、私は君のそんな優しさに甘えていた。そして、とうとう君にも見放された。そのことをちゃんと客観的に考えたとき、私って最低なんだなって思うようになったんだよ」


……なんだか、あの頃のアイツとは違うな。
ここまで人というのは変わるものなのだろうか。


「そこから、もう自分が嫌になってきちゃって。こんな私はもう生きてても意味がないんじゃないかなって思っちゃったから、もう死のうと思って自分の部屋の窓を開けてそこから飛び降りたんだよ。でも、結局このざま。死にたくても死にきれなくて本当に自分が嫌になる……」

「……」


俺は黙り込んでしまう。


「あっ、ごめんね。こんな話を聞かせちゃって」

「い、いや大丈夫」

「君も本当は私になんか会いたくなかったでしょう。私が君ならこんな彼女になんかもう2度と会いたくならないよ」

「確かにお前とはもう会いたくないって思ってたよ。でも、お前のこんな姿を見たらそんな感情も吹き飛ぶよ」

「……君は本当に優しいね。なんで私は君を手放してしまったんだろう。本当にあの頃に戻りたい」


俺は正直もう御免かな。
そう思っていたらアイツは衝撃的なことを言う。


「ねえ、私たちもう1度やり直せないかな?」

「……えっ?」

「いや私たちもう1度あの頃に戻れないかなって思って。どうかな?」

「い、いや、それはちょっと……」

「どうして!私はもう君無しでは生きていけないっていうのに。何がダメ?何でも言って直すから」

「……」

「もうあの頃みたいなことはもうしない。絶対にしない。だから、ね?」

「……」

「私が彼女になったら毎日毎食手料理を作ってあげるし、家事も全部やってあげる。なんなら夜の相手も毎夜してあげる」

「……」

「これじゃ足りない?何だったら奴隷みたいな扱いをしてもいいよ。君にだったらどんなことをされてもいい!」

「……」

「何がダメなの?何が嫌?どんなことをしたら私の元に戻ってきてくれる?それとも君はもう私なんて興味ない?」

「……いや、そういうわけじゃないんだけど」

「だったら、今日からでも一緒に住もう!私の住んでるところ前から変わってないし、君の使っていた歯ブラシとか枕とかまだ全部取ってあるよ!だから、私とまた付き合おう?」

「……ごめんけどその頼みは聞くことが出来ない」

「なんで!私はこんなにも君のことを想っているというのに!どうして!私に直してほしいところがあるのなら直すから!」

「違う、そうじゃないんだ」

「じゃあどうして!」

「……俺、実はもう結婚したんだ」


俺はそう言って、キラリと光る左手の薬指を見せる。


「……へっ?」

「もう俺は一生を添い遂げる相手を見つけたんだ。だから君のお願いは聞くことが出来ない」

「えっ、君が結婚?えっ、どういうこと?」

「お前と別れた後、俺はお前と社内で顔を合わせたくなかったから、会社を変えたんだ。そして、その変えた会社で出会った後輩と意気投合して2年付き合った後、結婚することにしたんだ」

「えっ」

「そういうわけだから。ごめんな」

「ちょ、ちょっと待ってよ。私は、私のことは?どうするの?」

「どうするっていうのは?」

「い、いやだって私はこんなにも君のことを想っているというのに、そんな私をよそに君は別の女と結婚したってこと?そんなの……」

「いや、そんなことを言われても、もう結婚のことは既成事実なんだから仕方がないだろう……っておい、泣くなよ」


いきなり、アイツは泣き出した。


「そんな……ひどいよ」


……どうしよう。
まさかこんな修羅場になるなんて思ってもみなかった。
こういう時はそそくさとこの場を後にした方がいいだろう。
どうせ、もう顔も合わせなくなるのだから。


そう思った俺は『もう話は終わりだ』という雰囲気を醸し出しながらその場を後にしようとする。


「……もう帰っちゃうの?」

「あぁ、お前の姿も見れたし」

「そんなの嫌。もうちょっとここにいてよ。もう1人は寂しいんだよ」

「これからちょっと予定があるから……すまん」

「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!まだまだここにいてよ!」

「じゃあな……」

「嫌だーーーーーーー!!」



俺はアイツの叫び声を背後に聞きながら病室を後にする。















  
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