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冷たい魔法使いの分身体は素直でカワイイ
しおりを挟む「おっ、今日は僕たちが受けれそうな依頼が沢山ありますよ。どれにします、リアンさん?」
「……別にどれでもいい」
「どれでもいいって……いつもそう言いますけどそういう訳にもいかないですよ。僕たちの生活にも関わって来るんですからちゃんと選びましょう?」
多くの冒険者で賑わっている冒険者ギルド。
その中で僕はパーティを組んでいる魔法使いのリアンさんと一緒に壁に張り出されている依頼の内、ランク的に受けられそうな依頼を物色していた。
しかし、僕らの間には温度差があるようで……
「……私はどんな相手でも倒せる、だからどの依頼でもいいって言ってる」
「でも、この間のオーガ討伐の際は倒せなくて撤退したじゃないですか」
「それはただ単に君が弱かっただけ。私1人なら倒せたけど君をサポートしながら立ち回るなんて無理。だから撤退した」
「……中々ひどいこと言いますね……まぁ……その通りですけど……ふぅ、それじゃあ今日はこのゴブリン討伐でも行きましょうか」
「じゃあ、私は先に装備の準備をしておくから早く手続き済ましてきて」
「えっ、あ、ちょ、リ、リアンさん!?さ、先に行かないでくださいよ!って……はぁ……」
我関せずといった感じで先に行くリアンさんの姿を見て、一つため息をつく僕。
生憎このギルド内の喧騒によって瞬く間にかき消されてしまったが。
魔法使いである彼女とパーティーを組んでそろそろ半年。
以前よりは色々なクエストを達成できるようになったから、彼女の魔法の腕は本当に凄いと思うのだけど……性格がなぁ……
出会った時からあんな風に冷たかったし、アレが彼女の本当の性格なのだろうから文句は無いのだけどため息はつきたくなる。
いや、まぁ、僕が弱いのもあるかもしれないけど……
……取り敢えず、早く依頼を受注して彼女の後を追わなくては。
********
「……本当にこっちの道で合ってるの?」
依頼書を見ながら道を進んでいく僕に対して、彼女はそう聞いてきた。
結局、僕が選んだのはゴブリン5体を討伐する依頼。
これなら僕らでも出来そうだ。
「依頼書に書かれている地図によるとこの先のようですね」
「ふぅん……」
「……何ですか?」
「いや、この間のような間違いをまた起こさないか心配になっただけ」
「大丈夫ですよ。前みたいな道に迷うなんて失態はもう起こしません。何だったら、リアンさんが地図を見ながら探しますか?」
「それは面倒くさいから、いい」
「……本当に何なんですか。もう、ちゃんと分かってます?パーティーというのは信頼―――」
「――シッ、この先、いる」
急に言葉を遮られた事に少し「ムッ」としたが、彼女の視線の先を見て僕は即座に理解し、サッと戦闘態勢を整える。
早速、標的たちがお出ましだ。
「何体いますか」
「5、依頼は何体?」
「5体です。丁度良いですね。僕が前の2体をやるので、リアンさんは奥の3体を任せても良いですか?」
「もちろん」
彼女がそう頷いた瞬間、僕らは標的に向かって走っていく。
そして、走った勢いそのままに剣を抜き、一番近くにいたゴブリンの首を一閃する。
よし、まずは1体。
討伐の証拠になる耳は後で削ぐことにしよう。
そう考えながら、今度は奥にいる2体目に目を付ける。
棍棒を手に持ち、欲望に忠実なゴブリンらしいギラギラとした目をこちらに向けてくる。
気圧されないように、勢いよくまた首に向かって薙ぐ。
……だが、今度は棍棒で防がれてしまった。
一度一歩退き、ゴブリンの次の行動に注目する。
……多分、これはこのまま真っすぐに来るな。
そう思った僕は、今度は一歩左に動きゴブリンの攻撃を避け、空いた横腹を下から斬り上げる。
ふぅ……これで終わりかな。
剣を腰の鞘に仕舞いながら、そっと息を吐く僕。
……あっ、リアンさんは!
戦闘に夢中ですっかり忘れていた彼女の方を振り向くと、そこには……
「遅い」
リアンさんのそんな一言と結構焦げているゴブリンの耳と、真っ黒こげになっているゴブリンだったものが待っていた。
「……やっぱり、リアンさんの魔法は凄いですね。流石です」
「……別に……凄くなんかない。こんなのは普通。逆に君が弱いだけ」
「……えーっと、これで依頼は達成ですね。ちゃんとゴブリンの耳を持って帰りましょうか」
彼女の魔法を褒めたことを若干後悔しながら自分が倒したゴブリンの耳を削ぎ、そしてしっかりとバッグの中に入れ帰路に就こうとする。
ガサガサガサッ
……が、どうやら遅かったようだ。
「これは……マズいですね。ゴブリンの群れです」
「パッと見でも10体はいる。……仲間を呼ばれる前に倒したはずだけど」
「単純にゴブリンの巣が近くにあったのでしょう。それにしても……どうしたものか。流石にゴブリン10体は……」
「……私がやる。君は傍で見ているといい」
「で、でも」
「大丈夫。私なら倒せる」
「……そこまで言うのなら、任せます。無理だと思ったら躊躇せず撤退してくださいね」
「分かってる」
ヒヤヒヤしている僕を横目に、彼女はゴブリン達の元へと向かって行く。
そして、愛用している魔法書を開き、一言。
「この間新しい魔法を見つけたから、その実験台にしてあげる。ツインズ・エグゼ!」
そう言った瞬間、スーッと彼女の横にもう一人彼女が現れた。
これはまさか……分身魔法!?
そんな高位の魔法を使えるとは……
彼女もこの結果に対して、満足げに「成功」と呟いた。
それからはキッとゴブリン達の方へ向き、攻撃へと移していった。
いつもよく見る炎魔法を使って、すぐにゴブリン達を一掃していく。
……ホントにあっという間に一掃していった。
「……これで報酬が増える」
今倒したゴブリン達の耳を削ぎながら、そう満足げに言う彼女。
そんな彼女に声を掛けようとした時―――
「君ー!ちゃんとゴブリンの群れ倒したよー!!!褒めて!」
彼女(分身体)が勢いよく抱き着いてきた。
「……え、えっ?」と戸惑う僕の事を気にしない様子でギューと強く抱き着く彼女。
「難しい魔法も使いこなせたし、私凄いでしょ!褒めて!褒めて!もっとギューってして!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!?な、な、何してんの!!!」
分身体がしている行動に気が付いたのか、彼女はバッバッバッとまるで虫を払うかのように分身体を手で払う。
すると、分身体はまるで煙かのようにボワァーと消えていった。
……あっ、そんな感じで消えるんだ。
分身体が消えた今、少し気まずい空気が僕たちの間に流れる。
そんな中、真っ赤になった顔を隠さないまま彼女は言い放つ。
「あ、あれは私じゃないんだからね!分身体の行動だから、早く忘れなさいよ!」
そして、そのまま僕の反応を見ずに足早に来た道を戻っていった。
……でも、まさか彼女が分身魔法を使えるとは。
実は分身魔法自体は使える人は少ないが結構有名な魔法で、昔話や童話にもよく出る魔法でもある。
そして、作品に出てくる分身体も色々種類があるが共通の特徴がある。
それは『分身体は分身魔法を使った人の本心を具現化した存在である』という事。
という事は……あの甘えてきた彼女の姿は……
ハハハッ、何だか今日は彼女の新しい一面を沢山知れたな。
……これからの彼女との生活も心配はなさそうだ。
今回の依頼で貰える報酬と彼女が欲しいと言っていた新しいローブのお店はどこだったか考えながら、僕は彼女の後を追うのだった。
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