角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

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31、朝食。

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本日は珍しく、少女は早朝の台所に立っていた。
基本的に朝が早くとも台所に立つような事はほぼ無いのだが、先日のお菓子作り以降料理に少しばかり興味が強くなってきている様だ。
一応は女が簡単な料理程度は教えているので、今日はその成果を見せようと張り切っていた。

端的に言えば、ただ朝食を作るだけである。
ただし少女にとっては始めて一人で男に作る朝食なので、気合いの入り方は普段の比ではない。
だからこそハラハラとした様子で少女の調理風景を眺める男が居るのだが。

「旦那様、何が出て来ても全て食べて下さい。残したら殺します」
「そうですよー。角っこちゃんが頑張って作るんですから」
「天使の料理を残すとか絶対に駄目ですよ!」
「ちみっこが泣く顔は見たくないですよねー?」
「おチビちゃん張り切ってますから、褒めてあげて下さい」

と、前日に使用人達が男に言いたい事を言って、本日は一切手を貸さないつもりだ。
男は最初は不安では無かったのに、釘を刺された事で逆に不安になってしまっている。
余りに不安になって「食べれる物が出てきますように」と神に祈る男であった。

一応男も少女が作った物を食べた事が無いわけではない。
先日の菓子もそうだが、普段の食事も偶に手伝っている事を知っている。
だが今回は周囲に少女のフォローをする人間が一人もいない。
男は朝が弱いにもかかわらず、早朝から様子を見に来ているのはそのせいだ。

「大丈夫だとは思うんだ、うん、きっと。食べれない物は作らないと思う」

男は不安を払う様に独り言を呟く。
その様を見てクスクスと使用人達が笑っているが、今日の男には構う余裕は無い。
とにかく少女がちゃんとした物を出してくれるようにと、それだけで頭がいっぱいな様だ。

だがこれには少し裏話があり、少女は既に軽い物なら十分な料理を作れる様になっている。
女や他の使用人達もそれを知っており、ちゃんと美味しい物を作った事を知っているのだ。
特に女は味見を何度もやっていて、少女の手料理を何度も味わっている。
今回の事はただ男の不安を煽る為だけに使用人達で仕掛けた悪戯だ。
因みに少年も知ってはいるが、何も言わない事で関わらない事にした。賢明であろう。

ただし少女は知らない事なので、そんな事は一切関係なく張り切っている
少女はただ男に喜んで貰おうと想っているだけなのだから。

そうして男が不安になりながら見つめる中、少女は調理を始める。
と言っても朝食なので凝った物を作る予定は無いし、量を出す予定もない。
少女は簡単な卵料理とトースト、後は適当に肉類とスープを出すつもりである。

先ずはスクランブルエッグを作る為に卵を取り出し、ボールに割入れて軽く塩コショウをかけ、事前に作っておいた出汁を混ぜて溶き解す。
卵が溶き終わったらトースターを温める為に軽く火を入れ、今度はフライパンを温め始める。

因みにこの作業の間、少女は小さくない台所をちまちまと動き回っているのだが、今日の台所は特別仕様になっている。
少女は背が小さく、基本的に作業台にまともに手が届かない。全く届かないわけではないが、普通に作業をするにはやはり少し高いのだ。それに冷蔵庫も上の方だとやはり手が届かない。
なのでコンロや流し、オーブンやレンジなどの前には全て階段状の作業台が用意されていた。

作業のたびに作業台にトテトテと登り、違う作業のためにピョンと飛び降りる。
そしてまた登りと、普段から発揮している小動物加減を更に発揮していた。
まるで台所が巨大化したかと錯覚するほどチマチマと良く動いている。

「可愛い・・・! 可愛いわぁ・・・!」

いつの間にか羊角が大容量ビデオカメラを手に撮影を始める程度には魅力的であった。
流石の男もでれっでれの顔で撮影をする羊角にはドン引きである。

「いつの間に居たんだよ。ていうか何してんのお前」
「お気になさらず、旦那様」
「気にするわい」
「成長記録ですので。隠し撮りじゃないので」
「完全に隠し撮りだと思うんだが」

とは言うものの、男も少しだけ気持ちは解らなくはないと思ってしまっている。
堂々と自分の前に現れるという事は女も承知の上だろう、男はそう判断して放置する事にした。
ただし男の場合は犬猫がちまちま動いているのを撮りたいと思う感覚であり、羊角とは致命的なまでに感性が違うのだが。因みに無許可撮影である。

そんな事を言い合っている間に、少女はソーセージを切ってレンジに入れ、トースターにパンを突っ込み、温まったフライパンに油を引き、溶いた卵をフライパンに流して行く。
作業内容だけ見ればとても鮮やかに、手際よく作業をしている。
だがいかんせん少女のトテトテパタパタと擬音が聞こえてきそうな動きのせいで、効率よくやっているはずの作業がまるでそう見えない。動く度に作業台の上り下りがあるせいだろう。

「んー・・・なんか、心配する必要有るか? これ」

だが作業効率が良い事は確かなので、男がそれに気が付かないはずが無い。
少女の順調な調理風景を見て自分の心配が馬鹿馬鹿しくなってきた様だ。

「・・・揶揄ったな、お前ら」
「あ、待って、手がぶれる、旦那様ブレちゃう。天使が、天使が撮れない」

男は使用人達に揶揄われた事に考え至り、横で少女を撮影する羊角の頭を掴む。
だが羊角は頭に力を入れられる事よりも手がぶれる事の方を気にしていた。最早病気レベルだ。
その様子に全て馬鹿馬鹿しくなった男は手を放してその場を離れ、少女が呼びに来るまで自室にいる事にした。

だが少女は背後で起こっている出来事なぞ目もくれず、真剣に朝食を作り続ける。
最後にコンソメの固形調味料をポットのお湯でスープにした事は目を瞑ってあげて欲しい。
そうして出来た料理を皿に盛り、お盆に乗せて食堂に向かう。
その際羊角は見つからない様に物陰から撮影していた。やはり盗撮である。

少女は料理を食堂に用意し、急いで男を呼びに部屋へ向かう。
男は当然何時でも動けるように待っていたので、笑顔で食堂へ移動を促す少女について行った。
そうして出された食事を見て先ず少女の頭を撫で、一つ口にして美味いと感想を口にし、食べ終わると少女をに頑張ったなと褒め倒す。
少女は男に褒められて嬉しいのだが、余りに褒められて何だか照れ臭くなっていた。





因みにその一部始終も羊角が撮影しており、後々で皆が男を揶揄うネタになるのであった。
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