角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

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60、アクセサリー

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今日の少女は、羊角の部屋でアクセサリーを見せて貰っていた。
ただし二人きりは危険と言われ、彼女が同席している。

「何もしないわよぉ」
「普段のアンタ見てて信用出来ると思う?」
「・・・何もしないわよー?」
「何で今返事に間が有った」

と、いう様な会話も少々有ったせいでもある。
そもそもなぜアクセサリーの話になったかと言うと、羊角の角に小さな穴が開いている事に少女が気が付き、大丈夫なのかと尋ねた事が起因だ。
心配そうな表情をする少女に、アクセサリーをつける穴だという話をし、実際に見せる事にしたらしい。

「ほら、こういう風に付けるのよ?」

そう言って、羊角は自分の角に付けたアクセサリーを少女に見せる。
アクセサリーは角の根元に空いた穴に通してあり、角につける為に作られた物らしい。
キラキラと輝く装飾は羊角の女性らしさを際立たせ、黙っていればとても綺麗だ。
勿論少女は「黙っていれば」等とは思っておらず、素直にキラキラした瞳を向けていた。

「角につけるのって大変そうよね。穴開けるのって専用の道具使うんでしょ?」

角を持たず、そもそも余り特徴の有る要素をもたない人種である彼女は、羊角の角をまじまじと見ながら質問をする。
偶に羊角がこういった物を付ける事は知っていたが、今まで聞いた事は無かったらしい。
少女も興味が有るのか、彼女と一緒に首を傾げながら耳を傾ける。

「ん-、角に神経が通ってる人といない人が居るから、それで変わるかな。通ってる人の場合は、空けたかったら専用の道具とお医者さんにも診て貰わないといけないかもね」
「あんたは?」
「私は通って無いから、日曜大工で使う様なドリルでも平気」
「・・・か、可愛くない」

少し呆れた様に呟く彼女と、大工のドリルと聞いて思わず角を手で隠してしまう少女。
現物が屋敷に有るので、ドリルの威力を少女は知っている。
なので自分の角にあの振動を当てられる事を想像し、ちょっと怖くなってしまったらしい。

「あ、違うからね? 私はやって無いからね? ほら、良く見て、綺麗でしょ?」

二人の態度に思わず訂正を口にする羊角。
アクセサリーを外して二人に見せた穴は、確かに雑に開けたとは思えない綺麗さだ。
細く小さな穴が、綺麗に反対側まで通っている。

「私の角って、種族の中では結構可愛いから、尚の事似合うでしょ?」
「自分で言うな自分で。まあ確かに、あんたの角は丸くて可愛い形の部類だと思うけど」
「あら、珍しい。初めて聞いたわ、そんな誉め言葉」

彼女の言う通り、羊角の角は大きく内巻きになっていて、角の先が円の中心になる形で丸くて可愛らしい形になっている。
何もつけておらずとも、角が装飾品を付けている様な可愛らしさになっている程だ。

「事実を言っただけ。褒めてないわよ」
「あら、そ?」

少し悔しそうな様子で目をそらしながら応える彼女だが、羊角はクスクスと笑うだけでそれ以上問い詰める事はしなかった。
隣で少女がうんうんと頷いていたのも、羊角が喜んでいる理由かもしれない。

「ま、これはこの形を保てる様に努力してますからねー」
「そうなの?」
「うん、私の種族って角は死ぬまで伸びるから。だからこの形を保てる様に、定期的にやすりで削ってるの」
「成程、爪みたいな物か」
「あはは、そうかも。だからほら、表面だって手触り良いのよ?」

羊角はそう言うと少女と彼女の手を取り、角に触らせる。
本人の言う通り角はつるつるでとても触り心地が良く、少女は尚の事キラキラした瞳を向けながら撫でていた。
彼女もその感触には少し驚いた様で、真剣な顔で撫でている。

「どう、気持ち良いでしょ?」
「確かに」

彼女は神妙に頷き、少女は首が取れるかと思う勢いで頷く。

「これぶった切ったらいい値段で売れそう」
「何ていう怖い事言うかなぁ!?」

彼女の物騒な言葉に、羊角は飛びのいて逃げだす。
少女もその発言には目を丸くして驚き、彼女もちょっと失敗したかなと目を逸らしていた。

「冗談冗談。しないって」
「あなたと先輩の言葉は冗談に聞こえない時が有るから止めて・・・」
「失敬な。あの人程いつもマジで言ったりしないわよ」
「どうだか。ふざけ始めたら突っ込まれるまでふざけるじゃない、あなた」
「てへ☆」

羊角が彼女を責めている様子を、少女は珍しい物を見る目で眺めている。
だが羊角が色々と言われるのは基本的に少女関連だけであり、それ以外では意外とまともな人間なのだ。
少女が来るまではこの光景は珍しくも何とも無かったのだが、それを少女が知る由もない。
勿論少女が来たばかりの頃はおっとり優しいお姉さんだった筈なのだが、少女の記憶からその事は消え始めている。

「こういうのって、角っ子ちゃんの角にも付けられるのあるの? あ、勿論穴開けな―――」
「天使の角に穴なんか空けて良いはずがないでしょ! 何言ってんの!?」
「・・・あ、はい、すみません」

だがすぐにいつも通りの羊角に戻り、彼女は先程の事が有るので素直に謝っておいた。
少女は、もう少しさっきまでの羊角が見たかったな、と残念そうだ。

「でも申し訳ないけど、この角に似合いそうな物はないかなぁ・・・」
「角に似合う似合わない有るんだ」
「じゃあ聞くけど、サイズの合わない指輪とか不格好じゃないの?」
「あ、はい、ごめんなさい、あたしが悪かった。確かにその通りだ」

自分に解るアクセサリーを例に出され、素直に認める彼女。
少女は羊角の持つ角用のアクセサリーを見ながら、少し残念そうに指でつついている。

「そうだ、代わりに髪飾りとかどう? 普段から少し留めてるけど、シンプルな物ばかりだし、こういう花飾りも似合うと思うの。んっ、と、ほら可愛い」
「お、良いね。可愛い可愛い」

羊角は少女に可愛い花飾りのついた髪飾りを付け、すかさずパシャッと一枚撮る。
いつの間に構えたのかと思いながらも、彼女も少女を褒めながら角を撫でた。
少女は鏡を見て、頭に可愛い花が付いている事にご満悦だ。
そしていつもの如く、これを女に見せたいとパタパタと女を捜しに行った。

「今度角用の物を探してみようかしら。それに合わせた衣服一色も探さないと。天使ちゃんは何でも似合うけど、どうせならきっちり可愛くしたいし。そうだ、先輩にも話してみよう・・・」
「・・・また角っ子ちゃんの私物が増えるなぁ」

嬉しそうに去っていく少女を見て、完全にスイッチの入った羊角。
彼女はそんな羊角の様子を見て呆れた様に呟くのであった。




尚、嬉しそうに去って行った少女は女より先に少年に会い、嬉しそうに近づいて髪飾りを見せ、相変わらずの距離の近さに少年の思考回路を完全に奪っていた。
しかも今日は髪飾りを見せる為か、顔がかなり近くまである事に余計に真っ赤になっている。
ワタワタと慌てながらも「カワイイデスネ」と口に出来た事だけは、それを見ていた複眼が心の中で「よく頑張った」と褒めていた。
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