角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

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120、お説教。

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羊角、彼女、複眼、そして少女は男と女の前で、テーブルを挟んで整列していた。
全員呼び出しを受け、女に「そこに並べ」と言われて並んで立っている。
単眼と少年もこの場に居るには居るが、少女達側ではない。
男と女から少し離れた位置に控えて、少し困った顔で立っている。

「お前達、何故呼び出されたかは解っているか?」

感情の感じない平坦な声音で問いかける女。
それが逆に少し怖いと思う使用人達だが、女はなるべく穏やかに問いかけたつもりであった。
完全に逆効果ではあるものの、全員女がどういう人物か解っているので一応は通じている。
ただ通じているのと実際の恐怖は別というだけの話だ。

「私は、少々、身に覚えが」

そう言ったのは複眼だ。実際複眼はここ数日、不安を抱えたまま過ごしていた。
彼女と羊角は少し覚えがあるものの、違うと良いなぁという様子に見える。
少女は考えても全然解らず、むーんと悩まし気な顔で首を傾げていた。

「これを見てみろ」

女はそう言って、テーブルに封筒を置く。差出人を見て、少女以外は皆状況を把握した。
そこには先日遊びに行った遊技場の名前が入っていたからだ。
少女だけはキョトンとした顔で封筒を見つめている。

「一応あちらは本当に事故で済ませてくれるつもりだった様だが、損害額を請求してくれる様にこちらから頼みに行った。これはその封筒だ」

遊戯場の経営者は本当に事故として済ませてくれるつもりであった様だ。
だが少女から遊戯場での出来事を聞いた女がそれを男に報告し、二人で急いで遊技場に連絡。
実際に足も運んで頭を下げに行き、こうして請求書をお願いしに行っていた。

「お前らが壊した物なら別に良いけど、壊したのその子だろう。それに目立ち過ぎだ」

男が頭を抱えながら語るそれには、少しばかり理由が有る。
少女の身は奴隷であり、奴隷が起こした問題は主人の問題となる。
今回の件は何事も無く終わったが、もし悪意がある誰かが居れば大きな問題が起きていた。

たとえば後々で刑事事件になり、男の下に警察が来る。
たとえばこの事が切っ掛けで少女は奴隷身分すら問題有りとされ、犯罪者とされる。
たとえば男の立場を知っている者が、民事裁判で後々に賠償込みで多額の請求をする。
たとえば、少女のあの超人的な能力を見て、それに目を付けた誰かが何かを企む。

そんな面倒事が起きていた可能性が大いにあったと、男と女は思っていた。

「最近少々気が緩んでいた私も悪いが・・・お前達が付いていながら何をやっている」

女は今の少女であれば自分が近くに居なくても大丈夫だろうと思っていた。
実際少女が起こしたのは遊技の上での事故では有るので、大きな問題にはなっていない。
少女自身が積極的に問題を起こしたわけでも、面倒をかけようとしたわけでもないのだから。

ただそれでも、少女の力と角は少々目立つ。
角は帽子で隠しているとはいえ、力は誤魔化しようがない。
その辺りの問題がまだあるからこそ、完全に目を離す事はしていないのだ。

問題が起こればすぐさま対処するようにと、基本的には誰かが傍にいる様にしている。
勿論最近は一人で出来る様にと色々やらせているが、陰ながら誰かの目が有るのが現状だ。

「いやー・・・遊んだ上での事故だし、大丈夫かなーって・・・」
「天使ちゃん、とっても楽しんでいましたし・・・」

彼女と羊角は目を背けながら言い訳を口にするが、複眼は黙って目を伏せている。
そして当の少女はというと、ようやく事情を察してアワアワしていた。
彼女達が怒られているのは自分のせいだと。

そしてパタパタと男の前に移動し、スカートをぎゅっと掴みながら頭を下げた。
悪いのは自分なので、皆を怒らないでほしいと。
男はそんな少女の頭にポンと手を置き、ふっと笑顔を見せた。

「悪気が無いのは解ってるさ。遊戯している所のデータも見せて貰ったが、本当に遊んでいての事故だったしな。けど壊したのは事実だから、こういう事はちゃんと言う様に」
「奴隷の制度を余り知らないからだろうが、奴隷の起こした事故は事故として済まされない場合が有る。その事を伝える為に呼び出しただけだ。別に叱る為ではない」

男と女の言葉にほっと息を吐く使用人達。
単眼もドキドキしながら黙って見つめていたので、穏やかに終わりそうな事にほっとしている。
少女も顔を上げ、若干涙目な笑顔を男に向けてコクコクと頷いて返す。
ただ少女は報告自体はちゃんとしている。楽しく遊んだ報告ではあったが。

「とはいえ、だ。そこの問題児二人、貴様等には説教が待っている」
「え、何で!?」
「私達だけ!?」
「当たり前だ。止めるどころか囃し立てていただろう。音声が聞こえずとも、映像から貴様等が何をしていたか大体は解っているぞ」

女の言葉に抗議のつもりで声を上げた二人だったが、次の言葉に黙るしかなくなってしまった。
実際複眼は色々と注意をしたり、気を払って動いていた。
だがそれを、この二人が殆ど台無しにしていたのだ。
少女が楽しそうだったから、楽しんで貰いたかったから、という理由ではあるが限度がある。

という訳で羊角と彼女は女に連行され、少女は自主的にパタパタと付いて行った。
その事に二人は好感を覚えて一層少女を可愛いと思うのだが、女は少しやり難そうだ。
ただ少女にも少し気を付ける様にと言っておくべきだと思い、心を鬼にして強めに注意をしておいた。
少し涙目になりながら真剣に聞く少女に、女は辛くて後で男に八つ当たりに行く事を決める。

その後少女は単眼にも可愛く「めっ」とされて、力加減の大切さを再確認した。
普段お生活では壊す事は余り無くなったが、それ以外ではまだまだ加減が解っていないと。
ふんすと気合を入れ、手に持った箒をみしっと言わせる少女であった。
今回は握り潰していないので、少し成長しているのだと思いたい。






尚、遊戯場での防犯記録データもお金を払って買い取っており、その辺りも抜かりない。
そして少女が楽し気に遊んでいる映像を一人で何度も楽しむ女であった。
因みにトランポリンで転げまわっているのが一番お気に入りらしい。
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