角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

文字の大きさ
126 / 247

124、犬も不満。

しおりを挟む
犬は最近、散歩が少しつまらないと感じていた。
勿論散歩に出るのは楽しいのだが、以前のように走れなくなっている事に不満を覚えている。
なにせ最近は少女が散歩に付いて来てくれない。
つまりリードをつけながら全力で走ってくれる人が居ないのだ。

彼女は長距離の散歩も嫌がらずにしてくれるが、走る事が殆ど無い。
羊角は彼女よりものんびりと歩くし、絶対に走らない。
単眼は他の皆より一歩が大きいので少し早めに歩けるし、走ってくれる事も有るが、そんなに散歩に出る頻度が多くない。
複眼はそもそも滅多に犬の散歩に出ない。

という訳で少女だけではなく、犬の不満もたまっているのだった。
運動が好きな一匹と一人が運動が出来ないとどうなるか。
それはお互いの運動不足を解消するかのように、庭で並んでかけ回るのであった。

犬はワフワフとご機嫌に吠えながら少女の横に並び、少女をもそれを確認して満面の笑みを見せながらバタバタと走る。
少女の走り方は少々不格好なのだがそれでも早く、犬でも全力で走らないと追い付けない。

犬はそれがとても楽しいらしい。
ただ走り回るのではなく、一緒に走ってくれる少女が居る事が楽しいのだ。
少女も一緒に走れない事を残念と思っていたので、犬が楽しげな様子を見て喜んでいた。
途中で偶に転ぶのはご愛敬だろう。速度が速度なので良く止まれずにゴロゴロと転がっている。

「いつかバターになるぞ、あれ」

男は二階からそれを眺め、元気だなと思いながら呟いていた。
声音は少し呆れ気味だったが、その口元は小さく笑っている。

「最近外で走れてませんからね、おチビちゃん」

その呟きを聞いていた単眼も庭を眺め、少女の様子にクスクスと笑いながら応える。
見つめる目はとても優しく、傍から彼女を見ても気分が良くなる事だろう。
実際に男もその様子に素直に笑顔を見せ、再度少女に視線を落とす。

「・・・まだ、駄目そうですか?」

だが暫く眺めていると、単眼が少し寂し気な表情で男に訊ねた。
男は横目でその表情を見つめてから視線を庭に戻す。

「屋敷周辺なら大丈夫だとは思うんだが・・・暫くは念の為、な」
「そう、ですか」

男の言葉に反論する事は無く、少し寂し気に納得する単眼。
使用人達も詳しくは聞かずとも、少女が特別な事は解っている。
以前に女と少女の事で騒動が有った事はまだ記憶に新しいのだから。

「暖かくなる頃には、またお出かけしたいですね」
「ああ、そうだな・・・」

単眼の呟きに応えながら、おそらくそれは無理だろうと男は思っている。
友人から貰った情報では、蝙蝠男はまだ少女を捜していると報告されていた。
男もこちらから何か手を打てないかと相談をしたが、それは逆に少女の存在を教える事になりかねないと、やり過ごす方向で方針が決まっている。

そうなるともうすぐ冬も終わるこの時期では、暖かくなる頃はまだ動けない可能性が大きい。
だがそれを態々言って余計に暗い顔をさせる気にはなれず、男は真実を伝えなかった。

「優しいな、お前さんは」
「普通ですよ。それに皆同じ気持ちだと思いますよ?」
「そっか・・・そうだな・・・」

皆同じ。単眼のその言葉に男はつい先ほどの暗い気持ちが無くなるのを感じた。
我ながら単純だなと思いながらも、彼女達が屋敷の使用人で良かったと、男は今更ながら感じている様子だ。

「何より一番心配してるのは先輩と旦那様じゃないですか」
「あー・・・そう見えるか?」
「ええ、見えますよ」

単眼に何を今更な事をという風にクスクスと笑いながら言われ、男は照れくさそうに応える。
二人は何処か和やかな空気を持ちながら、心地よい気分で少女を想い見つめていた。









「なんか良い空気?」
「でもあの二人だし、特にそういう感情は無いと思うけど」
「いやいや解んないよー、旦那様だって男だし、あの子はなんだかんだ言って中身は良いし」
「アンタ、それだと中身以外は悪いって言ってるみたいに聞こえるけど?」

そんな二人の様子をコソコソを盗み見る彼女と複眼。
因みに複眼の言う通り二人に特に思う所はない。
純粋に少女を想い、和やかな時間を心地よく過ごしているだけだ。

「聞こえてるんだけどなぁ・・・全くもう、どうしてくれよう」
「あの馬鹿は・・・そもそもお前こそ男を見つけろよ」

そしてその声は単眼と男の耳にも届いており、まるで隠れられていない。
男は頭を抱えて溜め息を吐き、単眼は彼女に何かしらの制裁を加える事を決めるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...