角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

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178、確認と自戒。

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その日の少女は庭に薄いマットを引き、ぐにゃーんと二つに折れていた。
どうやら柔軟体操をしている様で、足を開いてぺたーんと上半身を地面にくっつけており、少女の体の柔らかさがそれだけで理解出来る。
ただこれは純粋に元々柔らかいという訳では無く、ちゃんと普段から柔軟をしている成果だ。

体を起こすと今度は横に、んっんっと声を漏らしながら伸ばし始めた。
後は体を捻ったり丸まったり伸びたりと、全身くまなく動かしている。

何故今日少女がこんなに念入りに運動をしているかと言うと、自分がどこまで出来るのかを確かめようとしているからだ。
自分の身体能力が人よりかなり高いらしい、という事を流石の少女も最近は自覚し始めていた。
なら自分はその気になれば、今はどのぐらい出来るのだろうかと思ったらしい。



暫くそうやって体を解している少女だったが、最後にうーんと伸びをしてから立ち上がり、ピョンとマットの外に飛び出て、そのまま軽くピョンピョンと跳ね始める。
何かを確かめる様子で暫く跳ね続けた後、ぐっと膝を膝を曲げて力を溜める少女。
そしてそのまま膝のばねを使い、ピョーンと真上に勢いよく飛び上がった。

その脚力は凄まじく、屋敷の屋根の高さまで飛び上がってしまっている。
ただ少女はそこまで飛び上がるつもりは無く、予想外の高さにワタワタと慌てていた。
精々飛べでも二階の窓に手が届くかどうか。それぐらいの力加減のつもりだったのだ。
だが実際は屋根まで飛んでしまい、え?え?と驚いている間に落ち始める。

元々バランス感覚の悪い少女が慌てた事により、少女の体は空中で倒れて行く。
そして無情にもそのまま落下していき、少女はドンと音を立てて地面に落ちてしまった。
とはいえ少女は何とか手足から落ち、頭を打つなどの最悪の事態は避けられた様だ。
ただしかなり驚いたし怖かった様で、心臓をバクバクさせながら固まっている。



暫くしてから震える様に息を吐き出し、あー怖かったという顔で立ち上がる少女。
立ち上がるともう一度はふーと息を吐き、そこで少女は少しおかしな事に気が付く。
あの高さから落ちて、手足を使って着地した。なのに手足の何処にも怪我がない事に。

普通にこけて手を突いたとか、足から綺麗に着地した訳ではない。
腕は肘からいったし足は膝もついた。なのに何処にも擦り傷すらないのだ。
少女は自分の状態に首を少し傾げるが、すぐにピコピコ体を動かし始めた。
どうやら考えても解らないという結論に至ったらしい。それで良いのか。


だたその後は大ジャンプの驚きが頭に残っていたのか、少々恐る恐るになっていた。
とはいえ先程の光景を住人達が見ていれば、それすらもさせてくれなかったかもしれない。
それは良い事か悪い事か、微妙なところである。

結局自分の身体能力の把握は中途半端に終わる少女ではあったが、更に力が強くなっている事はしっかりと認識出来たらしい。
前より気をつけなきゃと思っている様で、手をぐっと握って気合いを入れている。

だがそこで少女は手のひらに痛みを感じ、ふえっと声を漏らして驚いた顔を見せた。
手を開いてみるといつの間についたのか、小さな擦り傷の後が有る。
高所からの着地で怪我が無かったのに何故だろうと、少女はまたも自分の体の疑問が増える。
確かにあの後の運動で手を突いた覚えは有るけど、落ちた時に比べれば可愛いはずなのにと。

「角っこちゃーん、おやつだよー。かえっといでー」

だがその疑問も彼女の呼びかけで消えてしまい、わーいと彼女の下へ駆け寄っていく。
食堂でおやつを食べる頃には、何に悩んでいたのか完全に忘れている少女であった。







少女がおやつをご機嫌にもむもむ食べている頃に、少し慌てている人物がいた。
休憩の合間に回収したカメラの録画を止め、映る映像を軽く確認していた羊角だ。
そこにはジャンプして中々落ちて来ない少女の映像があり、背筋をぞわっとさせていた。
なのでこれは危ないと思い、女の下へその映像を見せに向かっている。

「せ、先輩、これ、ちょっと見て下さい」
「む、どうした・・・はぁ、あの子は」
「屋敷に居る間も、まだ誰か傍に居た方が良くないですか?」
「だがこの状況で助けられるのは一人しかいないだろう。それにあの子も自分の身の危険は自分で守らねば、何時までも危ない事を繰り返す」

女が言う一人とは単眼の事だ。勿論自分も角を使えば助ける事は出来るだろう。
だが日常的な範囲で今回の事をどうにか出来るのは、屋敷では単眼しかいない。
おそらく単眼に命じれば喜んで面倒を見るとは思うが、少女の自立も促そうとしている事を考えると余り好ましくないとも思う女。

「後で注意はしておく」
「うー・・・大丈夫でしょうか」
「・・・解らん。が、何もせんよりはマシだろう」

少女は素直な子だし、女の言う事に否と応える事は無い。
だがそれとこれとは別の話だ。注意しても本人がうっかりやってしまうのだから。
とはいえ注意しないよりはマシだろうと、自分が注意すると落ち込む事を今から想像しながら、重い足を食堂に向ける女であった。

「後で旦那様に八つ当たりをしよう」

理不尽な八つ当たりが男に向かう事が決定してしまった様である。
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