角持ち奴隷少女の使用人。

四つ目

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182、皆で一緒。

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「そろそろ暖かい時期も終わりかなぁ」

庭の掃除をしつつ、日の落ち始める空を見て呟く彼女。
隣に居た少女もつられて空を見上げ、確かに少し日が落ちる時間が早くなったと感じていた。
とはいえまだまだそれなりに暑く、上着を着るには早い気温な様だが。

「今年は皆で海にも行けたし、楽しかったねぇー」

彼女の言葉に当時の事を思い出し、にへーっと嬉しそうな顔を見せる少女。
どうやら少女にとって、今年の夏はかなり良い思い出になっている様だ。
皆一緒にお出かけ出来たし、初めて海水浴に行ったし、男と女共目いっぱい遊んだ。
思い出せば思い出す程、少女はニマニマが止まらなくなっている。

少女にとって残念な事を上げるとすれば、少年と単眼と老爺が来なかった事だろうか。
出来れば一緒に行きたかったなと思う少女ではあるが、またいつか機会が有ればと思っている。
ただし少年が本当に行けるのかどうかは怪しい。なにせ水着なので。
たとえ普段着の様な系統で露出が少なくとも、肌に張り付く光景を見た少年が平静でいられる可能性は低いだろう。

友人は最初からカウントされていない。怖いので。

「しっかし、旦那様は何であれで女の影が無いのかねぇ」

彼女は彼女で、一緒に海に来た男の事を少し思い返していた。
普段から距離感の保ち方が上手く、女性に慣れていない訳でもない。
基本的な気遣いは当然出来るし、財布の紐も緩くないだけで硬すぎない。
むしろ使用人達が遊びに行きたいから車を出すなんて、気前が良いと言っても良いだろう。

そもそもこんな屋敷に住んでいて、相当な金を稼いでいるはずだ。
土地持ち家持ち性格も悪くない。
適度に自分の事をやり、周囲に構い過ぎないのも良い所だろう。
いや、よくよく考えると性格には少し癖は有るが、それでもその程度と言える範囲だ。

「女の一人や二人、押しかけてくる奴とか居てもおかしくないと思うんだけどな」

等と他人事の様に呟いているが、そこに関しては女も似た様なものである。
勿論一雇われ使用人なのでお金に関しては無いが、割と色んな人間に愛想を振りまいている。
当然少女が振りまく愛想の類とは違い、大人の女性らしい愛想の振る舞い方だ。
言っている本人こそ、そういう男達が寄って来てもおかしくはない。

ただ彼女の場合、怒らせたら怖いという事が少々知られている。
そもそも屋敷の住人達は基本的に怒らせると怖い者達が多い。
女は元より、複眼も冷静に切れる。単眼はその気がなくともあの体格に力が有る。
彼女の活動範囲が他の使用人達、特に女と被っている以上はそう滅多な事は無いだろう。

それに女は角の事を抜いても、知る人ぞ知る怖さが有るらしい。当然彼女も知っている。
という理由もあって、屋敷の使用人達の身柄は基本的には安全なのだ。
なので皆が気楽なのも致し方ないのだろう。彼女は特別気楽な気もするが。

「ん、どうしたの角っこちゃん」

彼女の呟きを聞いていたらしい少女は、不思議そうに首を傾げていた。
そして暫くみゅーんと悩む様子を見せた後、首を傾げたまま右手の指を自分に、左手の指を彼女に向ける。
どうやら男の傍に女の影が有っても良いのに、という言葉をそのまま受け取ったらしい。

旦那様の傍には自分も皆も居るよ? という事だそうだ。
確かに女では有るが、少々意味が違う。そもそも少女は『女性』と呼ぶには幼すぎる。
とはいえその答えを可愛いと思ったのか、彼女はクスクス笑いながら少女の頭を撫でだした。

「そうだねー、あたし達が居るよねー。なら皆で旦那様のお嫁さんにして貰おう。そうすれば皆ずっと一緒だねー」

少女はその言葉を聞いて一瞬キョトンとしたが、飛び跳ねる様にわーいと喜び始めた。
ただし『皆でお嫁さん』という部分にではなく『皆ずっと一緒』という部分に反応したらしい。
一緒♪一緒♪と彼女の手を取って嬉しそうに振っている。

やはり少女にはまだ『お嫁さん』という概念は今一理解しきれていない様だ。
ただ少女が楽し気ならそれで良いかと、彼女が訂正する事は無かった。










「旦那様、少し宜しいですか」
「ん、どうしごふっ・・・!」

女が何時もの様子で男に声をかけ、当然男は振り向いた。
だがそこに予告無しのボディーブローが突き刺さる。
身構えていなかった男はモロに突き刺さったボディーに崩れ落ちてしまった。

「げふっ、がふっ、な、すっ・・・!」
「黙れド外道。貴様あの子を嫁になどと、ふざけた事をのたまったか。その上女を囲むだと?」

いきなり何をと聞きたかった男だが、上手く喋れなかった。
だがそんな男に女の冷たい目と言葉が突き刺さる。
男は「何言ってんだお前」と言い返したかったが、まだ喋る事が出来ない様だ。

少女はあの後、皆でお嫁さんになれば皆一緒、という事を女に話したらしい。
しかもそれをとても嬉しそうに話し、あたかも男も受け入れたかのような様子であった。
当然そんな話は聞いていないので、男は訳の解らない状態で殴られているのだが。

「去勢してやろうか、貴様」
「まっ、ちょ、ぬれ、ぎっ、げふっ」

男は完全に覚えのない濡れ衣のせいで、女に酷い目にあわされたのであった。
少々女難の相が、男には有る気がしなくもない。
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