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異界召喚編
第十七話 地獄の魔物
しおりを挟む黒き蛇のようなものが女神を締め付ける。
「が、ぁッッ!?何故…ッ!?黒蛇が…!」
黒蛇。異名、闇喰。
地獄のモンスター。
それを召喚した。
地獄の魔物。
かつて、地獄を統べた者たちの中から一匹。
ランダムで魔物を召喚するというもの。
地獄の魔物は強い。女神でさえ純粋な戦闘力は敵わないかもしれない。
女神はその膨大な知識から、黒蛇について思い出す。
そして、対策法を思い出す。
「……空間転移」
次元転移は対策されていたため、それとは違う転移の魔法を発動させる。
…魔法。元来それは創造神が作り上げた十二の神々のもつ特技のことを指す。
それらは幾度派生され、幾多の魔法という名をもってして様々な種族間を伝わった。
まぁ、歴史を辿れば、その地点では知識しか伝わっておらず、実際に使用できるようになるのは、魔神が世界中のいけとし生けるものに魔力を与えた時からである。
かつて魔神が世界中のいけとし生けるものに魔力を与え、それからあらゆるものの媒体が魔力を介して行われるようになった。
要は、何にでも魔力を使用すれば適用できるようになった、ということだ。
それが魔力の発端である。そして、初めて魔力を授けられた十二の種族を、元素種族と言う。
龍
竜人
魔人
天使
妖精
精霊
獣人
獣
魚人
人
人形
幽体
これら、十二種族である。
それら、派生で様々な種族が誕生したのだが。
元素種族の中でも特に秀でて強いのは、やはり龍と、魔人であろう。
魔人、その派生にて生まれた最強の生物、液状最強生物。
龍は魔力を与えられる以前から強かったのでそこまで支障はなかったのだが。
やはり、それでも世界情勢は大きく変化した。
魔力はあらゆるものを巡るようになった。
それは、神族もまた例外にあらず。
故に、女神も魔力を使用して、魔法を発動させるのだ。
まぁ、種族によって保有できる魔力の限界量(保有魔力最大値)は決まっているのだが。
神族はもちろんぶっちぎりでトップだ。
第一、魔法のレベルに上限がない地点でお察しな訳だが。
──閑話休題。
女神は黒蛇についての対策法として、
まず距離をとる。
ということをした。
なぜならそれは、黒蛇の能力、世界汚染という能力によって起きる現象を避けるため。
それは、黒蛇から発せられる、悪魔の如き能力。
周囲にいるものの魂さえ穢す、禁術の一つである。
それを受けてしまえば幾ら治神でさえ己を治すことが困難になる。
故に、待つ。
「…ふっ」
転移によって、かなり遠くへ離れた女神は微笑む。
召喚した魔物は一定時間で元の場所へと帰還する。
それが、強ければ強いほど早く帰還する。
地獄の魔物となれば、それはそれは帰還がはやいだろう。
第一、女神は見つかっていないのだ。
このまま異界から召喚したものたちを連れて逃げてしまえばいい。
女神は一瞬自分の華々しい未来を想像し、そして現実へと戻る。
「何が地獄の魔物よ」
確かにあれを召喚したのは賞賛に値するかもしれないが、だがしかし対策法さえ知っていれば問題は無い。
いや、一つ問題があるとすればあの反耳長族か。
あれは厄介だ、と女神は思う。
一般の人を、女神と戦うことのできる神レベルまで昇華させている。
その魔法の名前を、神格化。
一部精霊しか使えない技だ。
つまり、彼女アルペは、妖精から派生した闇妖精ではなく、精霊から派生した何らかの種族なのだ。
故に、反耳長族。
「……とにかく、ここは分が悪い…か?」
「そうね」
「──ッッ!?貴様は、アル──」
「神槍」
神殺しの槍とは別の槍。
神槍。
それは、女神の腹部に当てられ、その瞬間治神は爆風と共にはるか彼方へと吹き飛ばされていく。
女神が転移した場所はかなり開けた場所であったが、そこから地面を抉りながら元の王城付近まで吹き飛ばされていく。
「──ぐ、っ、ふぉ!?」
神にさえ大ダメージを与える、神武器たち。
その威力は絶大であり、世界でも五本の指に入るほどだ。
ガラガラ、と王城が軽く崩れ、王城の一室(どこかは不明だが)が崩れ落ちる。
そして、瓦礫の中から女神は出てくる。
頭から血を流しながら。
「テメェら……よくも、よくもわたしをぉぉおぁあぉおぉおおあぁおぉぉ」
「呂律が回ってねぇなぁ…っと」
神格化したエーデルガンドの一人が剣で斬りかかるが──
「え?」
パシっ、と何も無いかのように掴まれる。
「もぅ、種は分かったの…ね?さよなら」
女神の口が醜く開く。
「お、あ、え」
大きい。それは、まるで、カバほどの大きさであった。
そして。
「あ」
ばくん!
と、エーデルガンドの一人の頭が喰われた。
ちぎれた首から血を噴出させ、エーデルガンドの一人は崩れ落ちる。
ゴミのように。
「……ワールズぅぅうううううぅうう!!」
防御に特化したワールズは、あっさりと死んだ。
その死体の首からは、血がどくどくと流れ、地面に溜まり、地面が赤くなっていった。
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