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【2】婚約披露宴と余波
32.「こちらこそよろしくお願いします」
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それなら、彰吾の実の両親はどうしたのだろう。
綾子の心に即座に浮かんだ疑問に答えるように砂羽は話を続けた。
「あの子の母親は、私の末娘で、菊門家の妾でした」
「菊門家……」
菊門家は通常の火風水木の家紋属性の枠を超えた、最強の力を持つ【超越家紋】を発現する家系として知られていた。代々国の重要な役職を担う名門中の名門の華族だ。【超越家紋】の発現者を一族で維持するため、男女問わず複数の妾を迎えていることでも知られている。
砂羽は「ええ」と頷いて話を続けた。
「たくさんいるお妾さんの一人、ということで嫁がせるのは不安だったのですが。当主の正蔵さんにお会いしたら、娘は、――あの子の母親の、美和は、他に奥様がいてもお嫁に行きたい、と。ですが、生まれた彰吾は、母親の家紋である我が家――鈴原の【疾風】は継いだのですが、【超越家紋】は発現しなかったのです」
「それで養子に……?」
「いいえ」と砂羽は首を振った。
「【超越家紋】を発現しなくても、通常は菊門家の子として養育されるのですが……あの子の母親は……、美和は、正妻の奥様と【超越家紋】を継いで生まれたそのお子さんを、嫉妬心から、家紋の力で傷つけてしまったのです」
苦しそうな表情でうつむいた。
「嫁いだ旦那様――当主の正蔵さんに惚れ込んでしまっていたのでしょうね。彰吾が【超越家紋】を継いでいないと知った旦那様は、美和のことも、彰吾のことも訪ねることがなくなってしまったそうなので、美和も辛い思いをしたのだと思います。――だからと言って、人を傷つけて良い理由にはなりませんが」
「その、正妻の方とお子さんは……」
「命に別状はなかったのですが、怪我を負ってしまって――本来なら、警察沙汰になってもおかしくはなかったのですが、揉め事を公にしたくなかった両家の間で、美和と彰吾は菊門家から出て遠方へ行く、ということで合意しました。彰吾はまだ一つにもなっていなかったので覚えていないと思いますが」
家紋の力を使って人を傷つけることは重罪に当たる。
家紋の力を持たない者よりも強力な力を持ってるからこそ、妖に対抗できる者として家紋を持つ家柄は華族として重要な地位を持ってきた。
その力を悪用することは、その地位の面目を汚すことになるととらえられているため、家紋の力を使った傷害や殺人は罪が重くなる。
そのため家紋の力を使って人を傷つけてしまった場合は、公にせずに内内に処理することも多い。
「それで……彰吾さんのお母さま――美和さんは?」
母親と一緒に家を出て、実家に戻ったということではないのだろうか。
姿の見えない彼女はどこに?
「――彰吾は、顔がね、正蔵さんによく似ているんです。特に、目元が」
砂羽は言葉を濁した。
「それで、美和は……彰吾の『顔を見たくない』と。一人で家を出て行くから、彰吾は私たちが育ててくれ、と言って聞かなかったのです。自分がお腹を痛めて生んだ子だというのに」
綾子は言葉を失ってしまった。
赤子のうちに母親に『顔を見たくない』と言われて、去られるのはどんな気持ちなのだろう。
「――そう言われたことを、彰吾さんは知ってるんですか……?」
「私たちは言ったことはないのですが……口さがない人たちが噂しているのを聞いてしまったようです」
「そうですか……」と綾子は呟いた。
彰吾の様子から、彼がそんな事情をかかえているとは露ともわからなかった。
彼の元を去った母親は、今どこで何をしているのだろう。
「美和さんは今……」
「美和は遠方で再婚し、彰吾は私たちが養子として引き取りました。美和は、今の嫁ぎ先で、家族を持って暮らしています。彰吾にも父親の違う弟と妹が1人ずつ……。彰吾に負い目があるのでしょうね。家を出て以来、手紙を出しても返事もなくて。私もずっと会っていないのよ」
砂羽は悲し気に視線を落とした。
「……」
今、彼女は幸せなのだろうか。
それは良いことなのかもしれないが……。
(彰吾くんの気持ちは……どうなるのかしら)
うつむいてしまった綾子の肩に砂羽は手を置いた。
「あの子は、あの2年前の中央公園での事件まで、何をするにも無気力だったんです」
「無気力?」
綾子の印象では彰吾は何をするにも溌剌としていて、『無気力』という言葉は不似合いだった。
「勉強も運動も友達付き合いもソツなくこなす子だったのですが、何にも本気を出さないというか……、とりあえずで、その場をやり過ごしているというか、そんな感じだったんです。高校で進路を選ぶ時にも……将来何をしたいかと聞いても『官僚になったら良いと先生に言われたから』とだけ言って、帝大に進んで。自分から『何かをしたい』と言ったことがなかったんです」
砂羽は学生服姿の彰吾の写真を見つめて、それから綾子を見た。
「それが、中央公園の事件の後は、人が変わったように熱心に『防衛隊』に入ると言い出して――最初は敵わなかった主人を圧倒するほどの家紋の力を身につけて戻ってきたときは、驚きました。――私も主人も、彰吾がそこまでやりきることなど、できないと思っていましたから」
「綾子さん」と目を見て、呼びかける。
「あなたがあの子の原動力だったんです。寮に入ってしまって顔を合わせるのはたまにでしたが、防衛隊に入ってからのあの子の表情は、家にいた時とは全然違って、いつも楽しそうでした。『憧れの人の近くで、家紋の力で街を守る仕事ができて嬉しい』と事あるごとに言っていましたよ」
「『憧れの人』ですか……」
綾子は「自分はそんな」と言いかけて口を閉じた。
そういうことを自分に対して言うのはやめようと決めたことを思い出した。
(――素直に相手の言葉を受け取ろう)
そう思いなおし『憧れの人』という言葉を真正面から受け止めると、とても恥ずかしい気持ちになってきて、両手で顔を押さえた。砂羽は「ふふふ」と微笑む。
そんな砂羽を見て、綾子はほっと安心した。
(良かった……彰吾くんには、きちんと大事に思ってくれている人が近くにいたんだわ)
「――私こそ、彰吾くんの言葉に救われたんです」
『隊長の姿を見て、こういう風になりたいって思ったんです』
『――綾子さんのせいじゃ、ないですよ』
『あなたは悪くない』
彰吾のかけてくれた言葉を一つずつ思い出しながら、綾子は呟いた。
自分のことを丸ごと肯定してくれた言葉のおかげで、長く下を向いて俯いていた顔を前に向けられた気がする。
砂羽は綾子を見つめると、微笑んだ。
「綾子さん、彰吾のことをよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げて、それから食卓へと戻った。
綾子の心に即座に浮かんだ疑問に答えるように砂羽は話を続けた。
「あの子の母親は、私の末娘で、菊門家の妾でした」
「菊門家……」
菊門家は通常の火風水木の家紋属性の枠を超えた、最強の力を持つ【超越家紋】を発現する家系として知られていた。代々国の重要な役職を担う名門中の名門の華族だ。【超越家紋】の発現者を一族で維持するため、男女問わず複数の妾を迎えていることでも知られている。
砂羽は「ええ」と頷いて話を続けた。
「たくさんいるお妾さんの一人、ということで嫁がせるのは不安だったのですが。当主の正蔵さんにお会いしたら、娘は、――あの子の母親の、美和は、他に奥様がいてもお嫁に行きたい、と。ですが、生まれた彰吾は、母親の家紋である我が家――鈴原の【疾風】は継いだのですが、【超越家紋】は発現しなかったのです」
「それで養子に……?」
「いいえ」と砂羽は首を振った。
「【超越家紋】を発現しなくても、通常は菊門家の子として養育されるのですが……あの子の母親は……、美和は、正妻の奥様と【超越家紋】を継いで生まれたそのお子さんを、嫉妬心から、家紋の力で傷つけてしまったのです」
苦しそうな表情でうつむいた。
「嫁いだ旦那様――当主の正蔵さんに惚れ込んでしまっていたのでしょうね。彰吾が【超越家紋】を継いでいないと知った旦那様は、美和のことも、彰吾のことも訪ねることがなくなってしまったそうなので、美和も辛い思いをしたのだと思います。――だからと言って、人を傷つけて良い理由にはなりませんが」
「その、正妻の方とお子さんは……」
「命に別状はなかったのですが、怪我を負ってしまって――本来なら、警察沙汰になってもおかしくはなかったのですが、揉め事を公にしたくなかった両家の間で、美和と彰吾は菊門家から出て遠方へ行く、ということで合意しました。彰吾はまだ一つにもなっていなかったので覚えていないと思いますが」
家紋の力を使って人を傷つけることは重罪に当たる。
家紋の力を持たない者よりも強力な力を持ってるからこそ、妖に対抗できる者として家紋を持つ家柄は華族として重要な地位を持ってきた。
その力を悪用することは、その地位の面目を汚すことになるととらえられているため、家紋の力を使った傷害や殺人は罪が重くなる。
そのため家紋の力を使って人を傷つけてしまった場合は、公にせずに内内に処理することも多い。
「それで……彰吾さんのお母さま――美和さんは?」
母親と一緒に家を出て、実家に戻ったということではないのだろうか。
姿の見えない彼女はどこに?
「――彰吾は、顔がね、正蔵さんによく似ているんです。特に、目元が」
砂羽は言葉を濁した。
「それで、美和は……彰吾の『顔を見たくない』と。一人で家を出て行くから、彰吾は私たちが育ててくれ、と言って聞かなかったのです。自分がお腹を痛めて生んだ子だというのに」
綾子は言葉を失ってしまった。
赤子のうちに母親に『顔を見たくない』と言われて、去られるのはどんな気持ちなのだろう。
「――そう言われたことを、彰吾さんは知ってるんですか……?」
「私たちは言ったことはないのですが……口さがない人たちが噂しているのを聞いてしまったようです」
「そうですか……」と綾子は呟いた。
彰吾の様子から、彼がそんな事情をかかえているとは露ともわからなかった。
彼の元を去った母親は、今どこで何をしているのだろう。
「美和さんは今……」
「美和は遠方で再婚し、彰吾は私たちが養子として引き取りました。美和は、今の嫁ぎ先で、家族を持って暮らしています。彰吾にも父親の違う弟と妹が1人ずつ……。彰吾に負い目があるのでしょうね。家を出て以来、手紙を出しても返事もなくて。私もずっと会っていないのよ」
砂羽は悲し気に視線を落とした。
「……」
今、彼女は幸せなのだろうか。
それは良いことなのかもしれないが……。
(彰吾くんの気持ちは……どうなるのかしら)
うつむいてしまった綾子の肩に砂羽は手を置いた。
「あの子は、あの2年前の中央公園での事件まで、何をするにも無気力だったんです」
「無気力?」
綾子の印象では彰吾は何をするにも溌剌としていて、『無気力』という言葉は不似合いだった。
「勉強も運動も友達付き合いもソツなくこなす子だったのですが、何にも本気を出さないというか……、とりあえずで、その場をやり過ごしているというか、そんな感じだったんです。高校で進路を選ぶ時にも……将来何をしたいかと聞いても『官僚になったら良いと先生に言われたから』とだけ言って、帝大に進んで。自分から『何かをしたい』と言ったことがなかったんです」
砂羽は学生服姿の彰吾の写真を見つめて、それから綾子を見た。
「それが、中央公園の事件の後は、人が変わったように熱心に『防衛隊』に入ると言い出して――最初は敵わなかった主人を圧倒するほどの家紋の力を身につけて戻ってきたときは、驚きました。――私も主人も、彰吾がそこまでやりきることなど、できないと思っていましたから」
「綾子さん」と目を見て、呼びかける。
「あなたがあの子の原動力だったんです。寮に入ってしまって顔を合わせるのはたまにでしたが、防衛隊に入ってからのあの子の表情は、家にいた時とは全然違って、いつも楽しそうでした。『憧れの人の近くで、家紋の力で街を守る仕事ができて嬉しい』と事あるごとに言っていましたよ」
「『憧れの人』ですか……」
綾子は「自分はそんな」と言いかけて口を閉じた。
そういうことを自分に対して言うのはやめようと決めたことを思い出した。
(――素直に相手の言葉を受け取ろう)
そう思いなおし『憧れの人』という言葉を真正面から受け止めると、とても恥ずかしい気持ちになってきて、両手で顔を押さえた。砂羽は「ふふふ」と微笑む。
そんな砂羽を見て、綾子はほっと安心した。
(良かった……彰吾くんには、きちんと大事に思ってくれている人が近くにいたんだわ)
「――私こそ、彰吾くんの言葉に救われたんです」
『隊長の姿を見て、こういう風になりたいって思ったんです』
『――綾子さんのせいじゃ、ないですよ』
『あなたは悪くない』
彰吾のかけてくれた言葉を一つずつ思い出しながら、綾子は呟いた。
自分のことを丸ごと肯定してくれた言葉のおかげで、長く下を向いて俯いていた顔を前に向けられた気がする。
砂羽は綾子を見つめると、微笑んだ。
「綾子さん、彰吾のことをよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げて、それから食卓へと戻った。
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