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11.(ネイサン視点)
しおりを挟むモニカの体調は大丈夫だろうか。
後ろ髪を引かれる思いで彼女の屋敷を後にした僕は王宮に戻った。
そうすると……、
「ネイサン様、お父上が――国王様がお呼びです」
真剣な顔で僕の付き人が言った。
父上からの話?
訝しく思いながら、父のいる玉座の間へ向かう。
「ネイサン! 学園からの報告を聞いたぞ!! ルイーズとの婚約破棄を学園で勝手に宣言するとは……何を考えているのだ!!!」
部屋に入るなり、玉座から立ち上がった父上は僕に怒鳴りつけた。
僕も負けずに怒鳴り返す。
「父上! ルイーズは、僕の愛するモニカを虐めるような女です! 婚約など破棄して当然ではないですか!!」
父上はつかつかと僕に近づいてきて、肩を揺さぶった。
「本当にどうしてしまったんだ、ネイサン……。学園で身分差なく親しくするのは一向に構わないが……、親しくしていたルイーズに手のひらを返したように、モニカとかいう商人の娘に傾倒するとは……」
かっと頭に血が昇ってしまった。
父上までモニカを貶めるようなことを言うなんて……!!
「父上! モニカこそ僕の愛する人です! それに僕はルイーズと親しくしてなんか……」
ふと、頭の中に忘れていた記憶が蘇るように浮かんできた。
学園の庭園の端、青空の下薔薇の温室で椅子に座って二人で本を読む。
普段は明るくて天気が良い日に読書などしたくないけれど……、彼女と一緒に過ごすようになって初めて、そういう静かな時間の良さに気づいた。
彼女は……モニカじゃなくて……。
「ネイサン? わしの話を聞いているのか、ネイサン!」
父上に身体を揺さぶられて、僕ははっと意識を取り戻した。
頭が痛い。何だ今の気持ちは……。
「しかもルイーズにモニカのドレスを破ったと詰め寄り、彼女を階段から落とそうとしたそうじゃないか! アスティアのリアム王子殿が助けてくれたようだが……、その事件の目撃者の証言も曖昧だと言うし……、確認もせずにルイーズを責めたのか、お前は!!」
「……その事件については、後日また目撃者を集めて確認します……」
僕は頭を押さえてうずくまった。
「……ちょっと、今は……、自室に戻ります……」
僕はそのまま頭を抱えて部屋に戻った。
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