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10.朝
しおりを挟むぐーっという音で目を覚ました。それが自分のお腹の音だと気づいて起き上がる。
そう、昨日は……。
私はテントを見回した。酒場で声をかけてもらって馬車に乗ったら、その人たちに襲われて、魔法使いに助けてもらったんだわ。
助けてくれたライアンは風の吹き出す魔法陣のところで、昨日干したお肉を眺めていた。
「起きたか」
私に気づいたライアンはコップに水を入れて渡してくれた。
それを飲んで、目を完全に覚ます。
「――こんな感じになっているが、これで問題ないか?」
私も魔法陣の近くに寄ってみる。
風ががんがん当たるからか、お肉はいい感じに乾いていた。
「うん。いいと思うわ。――あとは、燻せば……」
「どうする?」
「木を砕いてチップを作れれば一番いいけれど、後は周りを覆う感じで……」
私はテント中央の焚火周りに積まれた焚き木を手に取って匂いを嗅いだ。
あ、これ、香りの強い、よくグレゴリーが燻製に使ってた木だわ。
「この木が良いと思う」
「砕けばいいんだな」
ライアンは頷くと、また杖を手に取って地面に何か描き始めた。
その上に木を置くと、下から鋭い風みたいなのが吹き出して木を細かいチップ状に砕いた。
「本当、便利ねー……」
覗き込もうとすると、ライアンは慌てたように私の肩を掴む。
「危ないから手を入れるなよ!」
下から風が噴き出して、寝起きでくしゃっとなっていた前髪が1本飛んだ。
「……」
危ないわね……。
びっくりして尻餅をついて目をぱちぱちしていると、またぐーっとお腹が鳴る。
「どれくらい燻すんだ?」
「――お昼くらいまでは時間をかけたいわね」
ライアンは立ち上がると、床に丸めてあったローブを羽織った。
「俺は外のあいつらをふもとの村に連れて行くが、あんたはどうする? 村からルーべニアまでの馬車は出ていると思うが……、できれば……もう少し調理のやり方を教えて欲しいが……」
やり方を教えて欲しい、と言われて悪い気はしなかった。
私が誰かに何かを教えるなんて、初めてだわ。
「助けてもらったお礼だもの。ここで火を見ているわ」
そう答えると、ライアンは「助かる」と頷いて、付け加えた。
「村で何か食べ物を買えれば買ってくる」
よ……良かった……何か食べれる……。
思わずその場で飛び跳ねてしまった。
「戻るのは夕方くらいになるかもしれない。テントの周りには、魔物除けの魔法陣を描いてあるから、そこから出ないでくれ」
ライアンはくすりと笑ってから、そう言い残してテントを出て行った。
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