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ライアンに腕を引っ張られるようにして、城下町の大通りを抜け正門から王宮に入る。
門番の兵士たちは私を見て少し不思議そうな顔をしながらも、止めることなくライアンに一礼した。
……婚約、することになったのよね……?
降ってわいたような話に頭がついて行かない。
……だけど。
ライアンから言われた言葉は思いのほか嬉しかった。
好き、って言ってたわよね? ――私が?
そうこうしているうちに、王宮内をずんずん進んで行くライアンはひと際豪華な扉の前で立ち止まった。扉の両側には武器を持った衛兵がいる。
「父上、母上、ライアンです。入ります」
そう言いながらライアンは扉を開けた。
赤い絨毯が敷かれた奥には豪華な椅子があって、王冠を乗せた男の人と女の人がいる。
……ルーべニアの国王様と王妃様……。
私は二人を認識して、背筋を伸ばした。
「ライアン! アリスさんが泣きながら王宮に戻って来たという話を今聞いていたところなのよ……、あなた、一体何を……」
ライアンを見て立ち上がった王妃様は私に気づいて、首を傾げた。
「そのお嬢さんは……」
「ローレンス公爵家の長女のソフィアです。俺と彼女を婚約させてください」
ライアンははっきりそう言うと、私に「な」と声をかけた。
「……は、はい。ソフィア=ローレンスと申します……」
服を正して挨拶をすると、ライアンのお父様とお母様は顔を見合わせた。
「ローレンス家の長女……は、病弱で屋敷にいるとか……昨日話していたが……」
「それは体裁を考えての嘘です。ソフィアはとても元気です」
ライアンは私の背中を叩いた。
ちょ、元気は元気だけど……そんな言い方?
私はライアンの背中を叩き返した。
「ソフィアは家出中でして……、偶然知り合いました」
「ずいぶん……親しいようね……」
王妃様は驚いたような顔をしている。
「はい。三月ほど、俺の修行に付き合ってもらい、一緒に暮らしていました」
「一緒に……?」
ちょっと、言い方……。
ああ、二人とも顔を見合わせてしまっているわ……。
「彼女には魔法の才能があるようなので、魔法研究所へ連れて行っていました。そこに、母上からの呼び出しがありましたので、今回戻って来たところです」
頭を押さえた国王様は「ローレンス公爵を呼んで来い」と部屋の横にいた人に命じた。
しばらくして、ばたばたと足音響かせて私のお父様とお母様が部屋に駆けこんで来る。
「――ソフィア――」
ライアンの隣に立つ私を見て、二人は口をぱくぱくさせた。
「どこに行ったかと思っていたら――、ルーべニアの王子殿下と知り合っていたのか――?」
「……お久しぶりです、お父様、お母様」
私はそれだけ言って、不意にライアンの手を握った。
……この人たちはここにいる私をどう思ってるのかしら。まがりなりにも心配していたのかしら。ライアンは無言で手のひらを握り返してくれる。
……不思議な安心感。
「ローレンス公爵家の娘で間違いないようだな……」
国王様はそう言って、王妃様と顔を見合わせた。
「――お前が自分から何かを私たちに頼んで来たのは初めてだな。婚約したいというのであれば、私としても歓迎したいが……ローレンス公爵殿はいかがか」
お父様とお母様は相変わらず口をぱくぱくさせている。
「いえ、しかし、それは、不出来な娘で……アリスの方が……」
もごもごと話すお父様に向かってライアンが強く言った。
「俺はソフィアが良いんです」
「……」
黙り込んだお父様とお母様は小さな声で呟いた。
「……ライアン様が……望まれるのであれば……」
――あっさり、婚約が成立してしまった。
門番の兵士たちは私を見て少し不思議そうな顔をしながらも、止めることなくライアンに一礼した。
……婚約、することになったのよね……?
降ってわいたような話に頭がついて行かない。
……だけど。
ライアンから言われた言葉は思いのほか嬉しかった。
好き、って言ってたわよね? ――私が?
そうこうしているうちに、王宮内をずんずん進んで行くライアンはひと際豪華な扉の前で立ち止まった。扉の両側には武器を持った衛兵がいる。
「父上、母上、ライアンです。入ります」
そう言いながらライアンは扉を開けた。
赤い絨毯が敷かれた奥には豪華な椅子があって、王冠を乗せた男の人と女の人がいる。
……ルーべニアの国王様と王妃様……。
私は二人を認識して、背筋を伸ばした。
「ライアン! アリスさんが泣きながら王宮に戻って来たという話を今聞いていたところなのよ……、あなた、一体何を……」
ライアンを見て立ち上がった王妃様は私に気づいて、首を傾げた。
「そのお嬢さんは……」
「ローレンス公爵家の長女のソフィアです。俺と彼女を婚約させてください」
ライアンははっきりそう言うと、私に「な」と声をかけた。
「……は、はい。ソフィア=ローレンスと申します……」
服を正して挨拶をすると、ライアンのお父様とお母様は顔を見合わせた。
「ローレンス家の長女……は、病弱で屋敷にいるとか……昨日話していたが……」
「それは体裁を考えての嘘です。ソフィアはとても元気です」
ライアンは私の背中を叩いた。
ちょ、元気は元気だけど……そんな言い方?
私はライアンの背中を叩き返した。
「ソフィアは家出中でして……、偶然知り合いました」
「ずいぶん……親しいようね……」
王妃様は驚いたような顔をしている。
「はい。三月ほど、俺の修行に付き合ってもらい、一緒に暮らしていました」
「一緒に……?」
ちょっと、言い方……。
ああ、二人とも顔を見合わせてしまっているわ……。
「彼女には魔法の才能があるようなので、魔法研究所へ連れて行っていました。そこに、母上からの呼び出しがありましたので、今回戻って来たところです」
頭を押さえた国王様は「ローレンス公爵を呼んで来い」と部屋の横にいた人に命じた。
しばらくして、ばたばたと足音響かせて私のお父様とお母様が部屋に駆けこんで来る。
「――ソフィア――」
ライアンの隣に立つ私を見て、二人は口をぱくぱくさせた。
「どこに行ったかと思っていたら――、ルーべニアの王子殿下と知り合っていたのか――?」
「……お久しぶりです、お父様、お母様」
私はそれだけ言って、不意にライアンの手を握った。
……この人たちはここにいる私をどう思ってるのかしら。まがりなりにも心配していたのかしら。ライアンは無言で手のひらを握り返してくれる。
……不思議な安心感。
「ローレンス公爵家の娘で間違いないようだな……」
国王様はそう言って、王妃様と顔を見合わせた。
「――お前が自分から何かを私たちに頼んで来たのは初めてだな。婚約したいというのであれば、私としても歓迎したいが……ローレンス公爵殿はいかがか」
お父様とお母様は相変わらず口をぱくぱくさせている。
「いえ、しかし、それは、不出来な娘で……アリスの方が……」
もごもごと話すお父様に向かってライアンが強く言った。
「俺はソフィアが良いんです」
「……」
黙り込んだお父様とお母様は小さな声で呟いた。
「……ライアン様が……望まれるのであれば……」
――あっさり、婚約が成立してしまった。
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