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かじかんで赤くなった両手にハーッと息を吹きかけ、完成作を眺める。美しく白い完璧な球体が二つ、葉っぱで出来た大きな口に、小石で出来たつぶらな小さな二つの瞳、またまた葉っぱで出来たおじいさんのような眉、最後に細目の二本の枝で出来た両手が自分の誕生に万歳をしているよう。天敵である太陽にぴかぴかと照らされ、そのきれいな体を自慢しているみたいだった。

「雪だるま出来たし、俺先に帰るな」

「俺はその辺散歩してから帰るよ、じゃあな」

大小様々なサイズの石ころを抱えた友人はごろごろと地べたに小石を落とし、帰路についた。

ビューっと吹く風を気にせず公園へと歩みを進める。途中で、終わりの見えない雪かきに明け暮れるおじさんからなぜか話かけられたり、雪玉を投げつけられたりしたが、公園に来たのは間違いではなかった。一面に広がる銀世界は絶景だ、早朝ということもあり、まだ誰も足を踏み入れてない公園に入るのはとても気持ちがいい。

ざくざく、と積もった雪を踏みつけ、歩きながら、普段とは一味違う景観を堪能する。同じ場所なのにこんなにも景色が違う。腕を目いっぱい広げたかのように勇ましい池のそばの木も、冬になると葉を一枚もつけずにしおらしくなって冬を越そうとする。

丈夫だろうか?池の表面が凍っているのだ。ほんの少し濁っていたこの池では魚が泳いでいたが、魚は無事なのだろうか?

そばに落ちていた長めの木の枝を拾い上げ、その凍った池をつつく。もしも丈夫であれば、そのうえでスケートできるかも、などとくだらないことを考えながら、くだらない好奇心である。

勢いよくつついた氷は思ったよりも簡単にパキっと割れ、拍子抜けだった。その代わりに落とした枝が下に落ち、かすかにミシっという音が響く、聞いたこともない、聞いてはいけないような、そんな音だった。鳥肌が一層激しく立ち、ゆっくりと視線を氷の表面にやると、黒い毛のようなもの何百本で表面のすぐ下まで浮かび上がっているのが見えた。普段は濁っていて底の方まで見えないはずの池が、今日だけははっきりと、餌に群がる鯉の姿が見えた。
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