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第二章(下)
第2話
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前回のあらすじ、メイに剣を向けられる。
体が動かない中、メイに前世での女性ものの服について根掘り葉掘り聞かれ、今に至る。
彼女も姉妹もいなかったので、服のことなんて分かるはずもなく、質問への回答はほとんどが妄想と願望から来たものだ。
最終的にメイが引き出したのは、秋服のロングスカートに、ジャージとパーカーにウエディングドレスのみ。顔には出さないが、特に喜んでいるわけでもなさそうだったので、恐らく期待外れだったのだろう。
もうなにもネタがないとメイが理解した頃には日が暮れ、夜中に学校を歩くガイコツのように、体のあちこちから音を立てながら、一階の食堂へメイと共に向かう。
リリーとスズはどこへやら、タイランとアンはすでに窓側の席に座っていて、夕食を食べている。
「メイ遅いぞ!これもうすぐ食べ終わるから、何か肉料理を注文してきてくれ!」
「タイランお嬢様、口に食べ物が入っている最中はお話なさらないでください。この店は豚肉が自慢のようなので、豚肉で何か注文してまいります。勇者様も同じものでよろしいでしょうか」
俺が小さく頷くと、メイは軽くお辞儀をしてどこかへ行く。
「表に豚の絵が描いてあったし、この豚をこれから調理するっていうサインかな?」
こらこらアンよ、その発想は某コンビニエンスストアを敵に回すからおやめなさい。
周りを見渡すと、食堂がメインなのではと思うほど賑わっていて、酔っぱらい達の声がやかましい。
女性だけの席でよく周りに絡まれないな、と思うが、突如響いた酔っぱらい達の何重もの野次の方向を見ると、その考えを改めさせられる。
すでに絡まれていたらしい。
食堂の中心の立席には酔っぱらいが群がり、何かを観戦しているようだった。注目のテーブルには、屈強な男と白の丈の長い服を纏った女性が向かい合い、手を握りあっている。
字面だけ見ればロマンチックにも捉えられるが... 完全にスズが腕相撲勝負をふっかけられていますねはい。
「な、なあタイラン。あれってスズだろ... 止めなくていいのか?」
その問いに答えるように、立席のそばの男が合図をかけた途端、一瞬で腕がテーブルを叩く音が鳴り響く。
少しの間を開けると、野次が飛び交わされ、相手の屈強な男は周りの男達から、からかわれているのが伺える。
すげえ... スズが勝つんだ。
そして野次の中から俺こそはと挑戦者が現れ、再度試合開始の合図がされる。
「スズお姉ちゃんは、私の相手にはならないから、とか謙遜してたんだよ!あんなに強いのに、不思議だよね」
アンよ、恐らくだがそれは言葉通りの意味でスズは使っているぞ。私「の」相手にならないとは多分そういう意味だ。
ひとまずアンの向かい側に座ると、腕相撲会場になっている食堂の中心とは別の場所から叫び声が上がる。
タイランの肩ごしに叫び声の方向を見ると、これまた屈強な男が地面に四つん這いになり、床を叩いているのが伺える。
「はっはっはああ!そおうら見ましたか!フラッシュですよフラッシュ!銀貨3枚、今ここで払ってもらいましょうか!」
その男のそばのいすに立ち、テーブルに片足を乗せ、体を大きく使い、大声で高らかに笑っていたのは... 予想がついた人もいるだろうが、リリーだ。
あんにゃろ、能力使ってイカサマギャンブルしてやがるな。
「リリーお姉ちゃんってすごいよね、まるで人の心が読めるみたいに話すんだよ?やっぱり旅芸人の技?」
勘が鋭いなアンよ、旅芸人じゃないけど。
「アンよお、俺達は旅芸人じゃないんだぜ。後よお、ブロッコリーばっか避けってっと大きくなれねえぞ?」
「ふふふ、タイランお姉ちゃん、私もう死んでるよ?」
「細っけえことはいいんだよ、いいから食べな」
するとアンはフォークを手にそこそこ大きいブロッコリーを口に入れ... 咀嚼せずに飲み込む。
「おお、やれば出来るじゃねえか」
あのサイズは普通飲み込めないと聞いているんだが...
「ローストポークをお持ちしました。対応してくださった方に親指を立てられたのですが、タイランお嬢様、何かやらかされましたか?」
メイが持ってきた二皿をテーブルに置き、俺の横に座る。
うわ、結構分厚いな。食べ切れるか不安だ...
「はあ... さようですか」
なぜかメイがため息をついたので、不思議に思い顔を上げると、アンが窓の外を笑顔で指している。
そこにはなぜか屈強な男三人が、眠るようにぐったりと倒れていた。
「お、俺は悪くねえぞ!あいつらが悪いんだ、それに殺しちゃいねえ!」
と、乱暴に肉塊にフォークを突き刺し頬張るタイラン。再度ため息をつくメイ。
お前も暴れているんかい。
「いいえ、降りかかる火の粉をはらう事自体は問題ありません。喧嘩を売った男どもが悪いのです」
「だよな!なのにリリーは目立つ行動をとるなって言うんだよ!メイからも何か言ってやってくれよお!」
「それは私もリリー様に同意です。能力まで使われたのでしょう?むやみやたらに使ってはなりませんと何度も申し上げたではないですか」
少し悔しそうな顔を浮かべ、肉を頬張るタイラン。心なしか、少ししょんぼりしているような気がする。
ほう、一目で使ったと分かる能力ってなんだ?見たところ外傷は一切ないし、辺りに血の後も見られない。メイがどうやって判断したのかは気になる。
だが、今はそれよりも...
「あれあれれえぇ?そんなに賭けちゃうんですかあ?私のこの手札にそんなに賭けるだなんてえ、大した度胸ですねえ?」
にやにやしながら相手を挑発するリリーを見ると... お前がタイランに注意出来る立場か、と言いたくなる。
リリーの挑発の後、賭けポーカー会場がドッとやかましくなると、再びリリーの煽り声が聞こえてくる。
十分騒ぎが起きているような気もするが...
「ああそうだ。ええと... ちょっと待ってくれよ」
突然タイランが食事の手を止めたかと思うと、両こめかみに手を当て、目をつむって唸ったり、頭を捻ったりして考える素振りを見せる。
すると、一向に次の言葉が出てこないタイランを見兼ねたのか、アンが口を開く。
「リリーお姉ちゃんの宿の話?」
「そうそれだ!えーっと、リリーが宿の主人に聞いた話なんだが... なんか宿の話をしていたんだよな」
「リリーお姉ちゃんが宿の主人から聞いた話では、周辺の宿の名簿帳を探っている人がいるらしいよ」
タイランから有益な情報が出て来ていない。最初からアンに聞けば良かったと思うが... そんな事考えてたらメイに殺されるからここでやめておこう。
「そうですか... 恐らくリリー様も同じ推測をなさっていると思いますが、もしもその者が四天王に関わっているとしたら、勇者パーティーがどの宿に泊まっているか割り出す気なのでしょう」
あ、なるほど。この前みたいに町長の屋敷か、町の宿に泊まるしかないもんね。
「つい二日前からの出来事らしいから、私の村の地震の犯人と関係があるかもね」
「ん?アンの村の地震は人為的なものだったのか?」
「わあ、ローストポークも美味しそうだよね。さすが宿の名前を豚の宿、なんておかしなのにするだけあるよね」
タイランに突っ込まれたら何食わぬ顔で分かりやすく話を逸らしたが... よくよく考えてみたら、周辺に被害を出さずに大きめな村一つを滅ぼすほどの地震って、明らかに四天王が関わっているよな。
「... 四天王が関わっているとしたなら、肝心なのは名簿帳をどうやって探ったかですね。恐らく何件かの宿屋に侵入しているのでしょうが、それでも捕まらない方法です」
「メイお姉ちゃん、名簿を見るだけなら簡単だよ。お客さんとして名簿に書き込むふりさえすればいいんだから」
おう、ザッツシンプルな手口だな。監視カメラのある元の世界だと一瞬で捕まりそうだ。名簿を意図的に見るだけで犯罪になるのか分からないが。
「噂が広まっているという事は、名簿を見た後に逃走されたのですか?」
「リリーお姉ちゃんが言うには、その後に席を外して忽然と消えるらしいよ。犯人は小柄な女性らしいけれど、フードを被っていたから顔はよく見ていないらしいね」
おう、四天王候補は女性か。前回みたいに魔物を手下にしている四天王だったら、そいつが四天王じゃないかもしれないけれど...
「なあ、一つ疑問なんだが、普通の人間は魔物と人間を識別出来るのか?」
「勇者様は魔物を何度かご覧になったかと存じます。通常は体内から漏れ出る魂の濃度が可視化されるほどに濃いので、そこで見分けはつきます」
なるほど、その女性が魔物である可能性は低いと... じゃあそいつが四天王なんじゃね?
「なのでその女性は能力持ちの四天王か、アン様のように生前の未練が強い死霊の類い、または四天王に肩入れする人間といったところでしょうか」
うーん、意外に候補が多いな。この前のように人間まで関わってきたら、組織的なものが出来上がっていてもおかしくないし...
「あくまでその女性が四天王に関わっていたらの話です。単につまらない犯罪の可能性もあります」
出来る事と言えば、宿を張る事くらいか。面倒だな、いっそのこと勇者名乗って四天王の方から来てもらえれば楽なんだが...
「ありがとうございます、そこに置いていただけますか」
メイの前に食堂の人がトレーを運ぶ。白い陶磁器の器に一面に敷かれていたのはクリームソースとトロトロに溶けていたチーズで、所々がほんのり焦げている。チーズの下にはカーブ状の平べったいパスタ生地が敷いてあり、その更に下からはミートソースが覗いている。
ああいいな、俺も明日ラザニアにしよう...
「んぐ... まあひとまず、細かいことはリリーとメイが明日考えるって事でいいよな。なあメイ、ラザニア一口くれよ」
「タイランお嬢様、お行儀が悪いですよ」
伸びてきたスプーンに対応するように、トレーを素早く持ち上げるメイ。すると当然ながらタイランのスプーンは空ぶる。
「はああっはっはああ!私の方が一枚上手でしたねえ!手持ちは大丈夫ですかあ?」
「さあ!他にこのお嬢ちゃんを倒せる自信があるやつはいるかあ!」
仮に四天王が勇者パーティーの居場所を探っているとしよう。だが、ありのまま、ありのままの姿だけを見ると、誰がこの騒がしい集団を勇者パーティーだと思えるのだろうか...
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お客様、下のハートマークのボタンを押していただけますと幸いです。
体が動かない中、メイに前世での女性ものの服について根掘り葉掘り聞かれ、今に至る。
彼女も姉妹もいなかったので、服のことなんて分かるはずもなく、質問への回答はほとんどが妄想と願望から来たものだ。
最終的にメイが引き出したのは、秋服のロングスカートに、ジャージとパーカーにウエディングドレスのみ。顔には出さないが、特に喜んでいるわけでもなさそうだったので、恐らく期待外れだったのだろう。
もうなにもネタがないとメイが理解した頃には日が暮れ、夜中に学校を歩くガイコツのように、体のあちこちから音を立てながら、一階の食堂へメイと共に向かう。
リリーとスズはどこへやら、タイランとアンはすでに窓側の席に座っていて、夕食を食べている。
「メイ遅いぞ!これもうすぐ食べ終わるから、何か肉料理を注文してきてくれ!」
「タイランお嬢様、口に食べ物が入っている最中はお話なさらないでください。この店は豚肉が自慢のようなので、豚肉で何か注文してまいります。勇者様も同じものでよろしいでしょうか」
俺が小さく頷くと、メイは軽くお辞儀をしてどこかへ行く。
「表に豚の絵が描いてあったし、この豚をこれから調理するっていうサインかな?」
こらこらアンよ、その発想は某コンビニエンスストアを敵に回すからおやめなさい。
周りを見渡すと、食堂がメインなのではと思うほど賑わっていて、酔っぱらい達の声がやかましい。
女性だけの席でよく周りに絡まれないな、と思うが、突如響いた酔っぱらい達の何重もの野次の方向を見ると、その考えを改めさせられる。
すでに絡まれていたらしい。
食堂の中心の立席には酔っぱらいが群がり、何かを観戦しているようだった。注目のテーブルには、屈強な男と白の丈の長い服を纏った女性が向かい合い、手を握りあっている。
字面だけ見ればロマンチックにも捉えられるが... 完全にスズが腕相撲勝負をふっかけられていますねはい。
「な、なあタイラン。あれってスズだろ... 止めなくていいのか?」
その問いに答えるように、立席のそばの男が合図をかけた途端、一瞬で腕がテーブルを叩く音が鳴り響く。
少しの間を開けると、野次が飛び交わされ、相手の屈強な男は周りの男達から、からかわれているのが伺える。
すげえ... スズが勝つんだ。
そして野次の中から俺こそはと挑戦者が現れ、再度試合開始の合図がされる。
「スズお姉ちゃんは、私の相手にはならないから、とか謙遜してたんだよ!あんなに強いのに、不思議だよね」
アンよ、恐らくだがそれは言葉通りの意味でスズは使っているぞ。私「の」相手にならないとは多分そういう意味だ。
ひとまずアンの向かい側に座ると、腕相撲会場になっている食堂の中心とは別の場所から叫び声が上がる。
タイランの肩ごしに叫び声の方向を見ると、これまた屈強な男が地面に四つん這いになり、床を叩いているのが伺える。
「はっはっはああ!そおうら見ましたか!フラッシュですよフラッシュ!銀貨3枚、今ここで払ってもらいましょうか!」
その男のそばのいすに立ち、テーブルに片足を乗せ、体を大きく使い、大声で高らかに笑っていたのは... 予想がついた人もいるだろうが、リリーだ。
あんにゃろ、能力使ってイカサマギャンブルしてやがるな。
「リリーお姉ちゃんってすごいよね、まるで人の心が読めるみたいに話すんだよ?やっぱり旅芸人の技?」
勘が鋭いなアンよ、旅芸人じゃないけど。
「アンよお、俺達は旅芸人じゃないんだぜ。後よお、ブロッコリーばっか避けってっと大きくなれねえぞ?」
「ふふふ、タイランお姉ちゃん、私もう死んでるよ?」
「細っけえことはいいんだよ、いいから食べな」
するとアンはフォークを手にそこそこ大きいブロッコリーを口に入れ... 咀嚼せずに飲み込む。
「おお、やれば出来るじゃねえか」
あのサイズは普通飲み込めないと聞いているんだが...
「ローストポークをお持ちしました。対応してくださった方に親指を立てられたのですが、タイランお嬢様、何かやらかされましたか?」
メイが持ってきた二皿をテーブルに置き、俺の横に座る。
うわ、結構分厚いな。食べ切れるか不安だ...
「はあ... さようですか」
なぜかメイがため息をついたので、不思議に思い顔を上げると、アンが窓の外を笑顔で指している。
そこにはなぜか屈強な男三人が、眠るようにぐったりと倒れていた。
「お、俺は悪くねえぞ!あいつらが悪いんだ、それに殺しちゃいねえ!」
と、乱暴に肉塊にフォークを突き刺し頬張るタイラン。再度ため息をつくメイ。
お前も暴れているんかい。
「いいえ、降りかかる火の粉をはらう事自体は問題ありません。喧嘩を売った男どもが悪いのです」
「だよな!なのにリリーは目立つ行動をとるなって言うんだよ!メイからも何か言ってやってくれよお!」
「それは私もリリー様に同意です。能力まで使われたのでしょう?むやみやたらに使ってはなりませんと何度も申し上げたではないですか」
少し悔しそうな顔を浮かべ、肉を頬張るタイラン。心なしか、少ししょんぼりしているような気がする。
ほう、一目で使ったと分かる能力ってなんだ?見たところ外傷は一切ないし、辺りに血の後も見られない。メイがどうやって判断したのかは気になる。
だが、今はそれよりも...
「あれあれれえぇ?そんなに賭けちゃうんですかあ?私のこの手札にそんなに賭けるだなんてえ、大した度胸ですねえ?」
にやにやしながら相手を挑発するリリーを見ると... お前がタイランに注意出来る立場か、と言いたくなる。
リリーの挑発の後、賭けポーカー会場がドッとやかましくなると、再びリリーの煽り声が聞こえてくる。
十分騒ぎが起きているような気もするが...
「ああそうだ。ええと... ちょっと待ってくれよ」
突然タイランが食事の手を止めたかと思うと、両こめかみに手を当て、目をつむって唸ったり、頭を捻ったりして考える素振りを見せる。
すると、一向に次の言葉が出てこないタイランを見兼ねたのか、アンが口を開く。
「リリーお姉ちゃんの宿の話?」
「そうそれだ!えーっと、リリーが宿の主人に聞いた話なんだが... なんか宿の話をしていたんだよな」
「リリーお姉ちゃんが宿の主人から聞いた話では、周辺の宿の名簿帳を探っている人がいるらしいよ」
タイランから有益な情報が出て来ていない。最初からアンに聞けば良かったと思うが... そんな事考えてたらメイに殺されるからここでやめておこう。
「そうですか... 恐らくリリー様も同じ推測をなさっていると思いますが、もしもその者が四天王に関わっているとしたら、勇者パーティーがどの宿に泊まっているか割り出す気なのでしょう」
あ、なるほど。この前みたいに町長の屋敷か、町の宿に泊まるしかないもんね。
「つい二日前からの出来事らしいから、私の村の地震の犯人と関係があるかもね」
「ん?アンの村の地震は人為的なものだったのか?」
「わあ、ローストポークも美味しそうだよね。さすが宿の名前を豚の宿、なんておかしなのにするだけあるよね」
タイランに突っ込まれたら何食わぬ顔で分かりやすく話を逸らしたが... よくよく考えてみたら、周辺に被害を出さずに大きめな村一つを滅ぼすほどの地震って、明らかに四天王が関わっているよな。
「... 四天王が関わっているとしたなら、肝心なのは名簿帳をどうやって探ったかですね。恐らく何件かの宿屋に侵入しているのでしょうが、それでも捕まらない方法です」
「メイお姉ちゃん、名簿を見るだけなら簡単だよ。お客さんとして名簿に書き込むふりさえすればいいんだから」
おう、ザッツシンプルな手口だな。監視カメラのある元の世界だと一瞬で捕まりそうだ。名簿を意図的に見るだけで犯罪になるのか分からないが。
「噂が広まっているという事は、名簿を見た後に逃走されたのですか?」
「リリーお姉ちゃんが言うには、その後に席を外して忽然と消えるらしいよ。犯人は小柄な女性らしいけれど、フードを被っていたから顔はよく見ていないらしいね」
おう、四天王候補は女性か。前回みたいに魔物を手下にしている四天王だったら、そいつが四天王じゃないかもしれないけれど...
「なあ、一つ疑問なんだが、普通の人間は魔物と人間を識別出来るのか?」
「勇者様は魔物を何度かご覧になったかと存じます。通常は体内から漏れ出る魂の濃度が可視化されるほどに濃いので、そこで見分けはつきます」
なるほど、その女性が魔物である可能性は低いと... じゃあそいつが四天王なんじゃね?
「なのでその女性は能力持ちの四天王か、アン様のように生前の未練が強い死霊の類い、または四天王に肩入れする人間といったところでしょうか」
うーん、意外に候補が多いな。この前のように人間まで関わってきたら、組織的なものが出来上がっていてもおかしくないし...
「あくまでその女性が四天王に関わっていたらの話です。単につまらない犯罪の可能性もあります」
出来る事と言えば、宿を張る事くらいか。面倒だな、いっそのこと勇者名乗って四天王の方から来てもらえれば楽なんだが...
「ありがとうございます、そこに置いていただけますか」
メイの前に食堂の人がトレーを運ぶ。白い陶磁器の器に一面に敷かれていたのはクリームソースとトロトロに溶けていたチーズで、所々がほんのり焦げている。チーズの下にはカーブ状の平べったいパスタ生地が敷いてあり、その更に下からはミートソースが覗いている。
ああいいな、俺も明日ラザニアにしよう...
「んぐ... まあひとまず、細かいことはリリーとメイが明日考えるって事でいいよな。なあメイ、ラザニア一口くれよ」
「タイランお嬢様、お行儀が悪いですよ」
伸びてきたスプーンに対応するように、トレーを素早く持ち上げるメイ。すると当然ながらタイランのスプーンは空ぶる。
「はああっはっはああ!私の方が一枚上手でしたねえ!手持ちは大丈夫ですかあ?」
「さあ!他にこのお嬢ちゃんを倒せる自信があるやつはいるかあ!」
仮に四天王が勇者パーティーの居場所を探っているとしよう。だが、ありのまま、ありのままの姿だけを見ると、誰がこの騒がしい集団を勇者パーティーだと思えるのだろうか...
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