51 / 115
第三章(上)
お小遣いをもらった!
しおりを挟む
前回のあらすじ、四天王のジジイを拾った。
何者も脅かす事の出来ない、安らぎの時間。一生のうちに三分の一もの時を過ごすベッドの上で、俺は目を覚ます。
意識はあっても、はっきりと体を起こし、活発に動くというにはまだ早い。そんな穏やかな時間を、俺は過ごしていた。
もぞもぞと足を動かし、寝返りのようものをうってみたり、枕の位置を微調整したりする。こういう何気ない時間っていうのが、人間にとっては必要なんだ。
だが、そんな時間もすぐに終わってしまう。
俺が原因ではない布が擦れる音が鳴り、同室人の存在を俺に意識づける。
ビクッと体が跳ね、布団を蹴飛ばして床に足を着け、もう片方のベッドを確認すると... 俺のベッドの反対側に、半目のリリーがのそのそと歩いてきてるのが伺える。
「お、おはよう、リリー」
「ふ、ふ、はああああぁぁ... おはようございます、もう起きているだなんて珍しいですね」
セ、セーフ... 二回も床に蹴飛ばされて起こされていたから体が危機感を覚えちまったぜ。
だが... すでに俺と目が合い、俺を認知し、俺と挨拶を交わしたリリーだが... なぜか不可解な行動に出る。
「あ、あれ?へっぽこ、もう起きていましたか」
右足を俺が寝ていたところに起き、足裏で空気を蹴るようにして動かし、何もない事を確認すると... 再度俺が起きてる事実を認識する。
「お、おう。俺はもう起きてるから起こさなくて... 」
「口をゆすいできますね... 着替えて朝食を食べたら出発しますよ」
と、言いたいことだけ言い、両腕を様々なおかしな形に伸ばしながら部屋を出る。
もしかして... めちゃくちゃ朝に弱い?
*********
「これを、全部で銀貨十枚です」
「え?」
俺がちょうど着替え終わった頃、リリーが寝巻きのままテーブルにつき、硬貨を何枚か置く。
か、金だ... 確か銀貨一枚で大体一万円位だから、十万円位か?まさかの小遣い!?
「... あなたの考えている事とは少し違います。実は四日後はスズの誕生日で、王都に帰ったらすぐにパーティーが開かれます。という訳で、あなたからも何か、適当にプレゼントを買ってください」
お、お姫様へのプレゼント?どんな物でも手に入りそうな地位の人に、何を渡せばいいのだろうか... 最初に思いつくのは宝石や装飾品の類いだが、スズはそういう物を身につけないみたいだし...
「まあ、何でも良いんです。異世界人のあなたが贈った物というだけで、物語好きのスズなら喜んでくれます。あと、余ったお金は好きに使って良いですよ」
あ、余った金は小遣いだと!?この世界に来てから二週間弱、自分で好きなように使える金など無かった俺に、金が舞い込んできただと!
「王都に戻ったら、街で何か合いそうな物を探すよ」
喋りながら銀貨に手を伸ばそうとするが... 俺の動きを止めるように、リリーが銀貨にいち早く手をかざす。
「何でも良い、とは言いました。ですが、それ相応の、適切な物をお願いしますよ?」
と念を押すと、リリーは自分の方に銀貨を手繰り寄せ、小さな麻袋の中にそれを詰める。
ちゃ、ちゃんとした物を買わなくては...
*********
タイランとメイ、それに少しやつれた未だに右手の無いジジイと、少し肌を潤わせたスズと食堂で合流し、とっとと朝食を平らげ、街から出る。
平坦で何もない道のりを、タイランが荷車を引く中、むさ苦しい老人は俺の隣でいびきを立てていた。が... ふとひょこっと起きたかと思うと、荷台を引っ張るタイランを見つめる。
すると何を思ったのか、ポケットからくしゃくしゃに丸めた紙を取り出し、タイランに向かって放る。
「ほい」
あ、命知らずだこのジジイ。
そしてその紙くずの気配を感じ取ったのか、はたまた勘からか、タイランが顔だけ振り向かせると、人差し指を掲げ、紙くずに触れる。
「何だあ今の?んん?」
おお、紙くずが消えた。タイランが指で触れた所から、チリになるようにふわっと消えていったぞ。燃えかすを触った時に、崩れ落ちるような感覚に近いかな?
「ほっほっほっ、しっかり自分の目で確認すると、とても面白い能力じゃのう」
その言葉を聞いたタイランは、ジジイを睨みつけたかと思うと... 負けじとポケットから何か小さな物を取り出し、指で弾く。
すると、ピンという音と共に何かが空気を切り裂き、俺の真横をそれが通り抜ける。
「ぐぎゃっ!」
「があはっはっはっ!お得意の振動操作はどうしたんだジジイ!」
見れば、荷台の足元に転がっていたのはベージュ色の可愛らしいボタンで...
ははーん、これを飛ばしたのか。それにしてもものすごい威力だこと。
「タイランお嬢様、程々にお願いします。痛みで気絶されていますので」
「ああ?散々攻撃してきたけどよ、やっぱり俺の能力の方が上みたいだな!」
な、なるほど、今のはボタンに運動エネルギー?を加えたらしい。素の力がどれほどか分からないから、なんとも言えないが。
そういえばエネルギーを加えるって言うが、具体的に何が出来るんだ?
「タイラン、エネルギーを加えるって言うなら、お湯を沸かしたりも出来るのか?後... なんかこう、電気みたいなこととか」
するとタイランはキョトンとした顔を浮かべ...
「へっぽこよお、湯を沸かすって事は俺がそれに触れてないといけないんだぜ。それをやろうしたら手が火傷しちまう。それに、電気もまだちゃんとイメージ出来ないしなあ」
まあ確かに触れてたら火傷するよな。
「電気が使えたとしても、方向を指定して雷を放出するくらいしか無さそうだしな。そんな事するくらいなら俺が殴ったほうが早いぜ」
それを突き詰めていくと能力全般いりませんよ。
後、エネルギーで出来るのは... 水力エネルギーとか風力エネルギーとかは聞いたことあるけど、あれってなんなんだろうか。発電するってのは知ってるけど、結局仕組みが分からないしな。
「あ、光とかはどうなんだ?ほら、太陽みたいに発光したりとかは... 」
「へっぽこよお、あれは熱いから発光してるんだぜ?熱い金属とかと同じ感じだ。そんな事したら体が溶けちまうよ」
異世界の能力のくせに、無駄に物理法則に沿ってるのが面倒だな... どうせ何かしら非科学的な事をしているんだろうから、そのくらい融通してくれても良さそうなものだが。
と、少し考えているとスズと目が合い、微笑みかけられる。
タイランの能力がどうだこうだと言うより、目の前のもっと大きな問題を解決せ
しなければなと、前世でテレビに流れていた、女の子の好きそうなものが頭に浮かぶ。
ーーーーーーーーー
フォロー、応援などしていただけると大変励みになります!
何者も脅かす事の出来ない、安らぎの時間。一生のうちに三分の一もの時を過ごすベッドの上で、俺は目を覚ます。
意識はあっても、はっきりと体を起こし、活発に動くというにはまだ早い。そんな穏やかな時間を、俺は過ごしていた。
もぞもぞと足を動かし、寝返りのようものをうってみたり、枕の位置を微調整したりする。こういう何気ない時間っていうのが、人間にとっては必要なんだ。
だが、そんな時間もすぐに終わってしまう。
俺が原因ではない布が擦れる音が鳴り、同室人の存在を俺に意識づける。
ビクッと体が跳ね、布団を蹴飛ばして床に足を着け、もう片方のベッドを確認すると... 俺のベッドの反対側に、半目のリリーがのそのそと歩いてきてるのが伺える。
「お、おはよう、リリー」
「ふ、ふ、はああああぁぁ... おはようございます、もう起きているだなんて珍しいですね」
セ、セーフ... 二回も床に蹴飛ばされて起こされていたから体が危機感を覚えちまったぜ。
だが... すでに俺と目が合い、俺を認知し、俺と挨拶を交わしたリリーだが... なぜか不可解な行動に出る。
「あ、あれ?へっぽこ、もう起きていましたか」
右足を俺が寝ていたところに起き、足裏で空気を蹴るようにして動かし、何もない事を確認すると... 再度俺が起きてる事実を認識する。
「お、おう。俺はもう起きてるから起こさなくて... 」
「口をゆすいできますね... 着替えて朝食を食べたら出発しますよ」
と、言いたいことだけ言い、両腕を様々なおかしな形に伸ばしながら部屋を出る。
もしかして... めちゃくちゃ朝に弱い?
*********
「これを、全部で銀貨十枚です」
「え?」
俺がちょうど着替え終わった頃、リリーが寝巻きのままテーブルにつき、硬貨を何枚か置く。
か、金だ... 確か銀貨一枚で大体一万円位だから、十万円位か?まさかの小遣い!?
「... あなたの考えている事とは少し違います。実は四日後はスズの誕生日で、王都に帰ったらすぐにパーティーが開かれます。という訳で、あなたからも何か、適当にプレゼントを買ってください」
お、お姫様へのプレゼント?どんな物でも手に入りそうな地位の人に、何を渡せばいいのだろうか... 最初に思いつくのは宝石や装飾品の類いだが、スズはそういう物を身につけないみたいだし...
「まあ、何でも良いんです。異世界人のあなたが贈った物というだけで、物語好きのスズなら喜んでくれます。あと、余ったお金は好きに使って良いですよ」
あ、余った金は小遣いだと!?この世界に来てから二週間弱、自分で好きなように使える金など無かった俺に、金が舞い込んできただと!
「王都に戻ったら、街で何か合いそうな物を探すよ」
喋りながら銀貨に手を伸ばそうとするが... 俺の動きを止めるように、リリーが銀貨にいち早く手をかざす。
「何でも良い、とは言いました。ですが、それ相応の、適切な物をお願いしますよ?」
と念を押すと、リリーは自分の方に銀貨を手繰り寄せ、小さな麻袋の中にそれを詰める。
ちゃ、ちゃんとした物を買わなくては...
*********
タイランとメイ、それに少しやつれた未だに右手の無いジジイと、少し肌を潤わせたスズと食堂で合流し、とっとと朝食を平らげ、街から出る。
平坦で何もない道のりを、タイランが荷車を引く中、むさ苦しい老人は俺の隣でいびきを立てていた。が... ふとひょこっと起きたかと思うと、荷台を引っ張るタイランを見つめる。
すると何を思ったのか、ポケットからくしゃくしゃに丸めた紙を取り出し、タイランに向かって放る。
「ほい」
あ、命知らずだこのジジイ。
そしてその紙くずの気配を感じ取ったのか、はたまた勘からか、タイランが顔だけ振り向かせると、人差し指を掲げ、紙くずに触れる。
「何だあ今の?んん?」
おお、紙くずが消えた。タイランが指で触れた所から、チリになるようにふわっと消えていったぞ。燃えかすを触った時に、崩れ落ちるような感覚に近いかな?
「ほっほっほっ、しっかり自分の目で確認すると、とても面白い能力じゃのう」
その言葉を聞いたタイランは、ジジイを睨みつけたかと思うと... 負けじとポケットから何か小さな物を取り出し、指で弾く。
すると、ピンという音と共に何かが空気を切り裂き、俺の真横をそれが通り抜ける。
「ぐぎゃっ!」
「があはっはっはっ!お得意の振動操作はどうしたんだジジイ!」
見れば、荷台の足元に転がっていたのはベージュ色の可愛らしいボタンで...
ははーん、これを飛ばしたのか。それにしてもものすごい威力だこと。
「タイランお嬢様、程々にお願いします。痛みで気絶されていますので」
「ああ?散々攻撃してきたけどよ、やっぱり俺の能力の方が上みたいだな!」
な、なるほど、今のはボタンに運動エネルギー?を加えたらしい。素の力がどれほどか分からないから、なんとも言えないが。
そういえばエネルギーを加えるって言うが、具体的に何が出来るんだ?
「タイラン、エネルギーを加えるって言うなら、お湯を沸かしたりも出来るのか?後... なんかこう、電気みたいなこととか」
するとタイランはキョトンとした顔を浮かべ...
「へっぽこよお、湯を沸かすって事は俺がそれに触れてないといけないんだぜ。それをやろうしたら手が火傷しちまう。それに、電気もまだちゃんとイメージ出来ないしなあ」
まあ確かに触れてたら火傷するよな。
「電気が使えたとしても、方向を指定して雷を放出するくらいしか無さそうだしな。そんな事するくらいなら俺が殴ったほうが早いぜ」
それを突き詰めていくと能力全般いりませんよ。
後、エネルギーで出来るのは... 水力エネルギーとか風力エネルギーとかは聞いたことあるけど、あれってなんなんだろうか。発電するってのは知ってるけど、結局仕組みが分からないしな。
「あ、光とかはどうなんだ?ほら、太陽みたいに発光したりとかは... 」
「へっぽこよお、あれは熱いから発光してるんだぜ?熱い金属とかと同じ感じだ。そんな事したら体が溶けちまうよ」
異世界の能力のくせに、無駄に物理法則に沿ってるのが面倒だな... どうせ何かしら非科学的な事をしているんだろうから、そのくらい融通してくれても良さそうなものだが。
と、少し考えているとスズと目が合い、微笑みかけられる。
タイランの能力がどうだこうだと言うより、目の前のもっと大きな問題を解決せ
しなければなと、前世でテレビに流れていた、女の子の好きそうなものが頭に浮かぶ。
ーーーーーーーーー
フォロー、応援などしていただけると大変励みになります!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる