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第四章(中)
町で一息つこう!
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もしも普通に散歩をしていれば、気持ちの良い潮の風だったであろうものを感じる。
空はかっと晴れていて、こちらももしも普通に散歩をしていたら、あの太陽のように明るい気分になっていただろう。
もしも目を開けていれば、遠くの方には石造りの町並みが見えていただろう。斜面の多い町のようで、色々な大きさの建物が不揃いに並んでいるようだ。
カモメだかウミネコだかが空を舞っており、元気な鳴き声も聞こえて来る。そして他にも聞こえて来るのは、荷台の車輪が地面を転がる音と...
「うおおおおおっっ!!!目が痛くなってきたぜえええぇぇ!!!もう開けられねええ!」
「タイランっ!止まって...!止まってください!あなた含め誰一人目を開けられません!!!」
荷台は高速道路を行く車の速度で走っており、風よけも何も無ければこうなるのは必然... 海に近づいたことで風が少し強くなったのか?
「風で聞こえねえ!!何を言ってるんだリリー!」
「止まるんです!休憩です!速度を落としてください!」
「ああん!?なんて言っているのか聞こえねえよ!」
「チッ... 」
仕方なく目を瞑り、リリーとタイランの怒鳴り声のような声でされているやり取りを聞いて
いると... 真隣、リリーの方から舌打ちの音が聞こえ... 更にナイフを抜き取る音が聞こえる。
「だから足を止めろと!ここからは速度を落として走れと!言っているんですよっっ!!」
「ぐっ!!!あああああぁぁぁぁっっ!!」
うっすらと目を開けると、背中にナイフを刺さったまま走るタイランの姿が...
「リ、リリー...!ナイフを刺す前に口で話せと... いつも言ってるだろうがあああっっ!」
ブチ切れたタイランは、どうやってか速度を落とさず真上に飛び上がり、まるで器械体操の選手のようにハンドルを軸に下半身を回転させ、リリーに蹴りをかます...
「え、ちょ... くっ... !」
目を瞑っていたリリーは、予測していなかったのか蹴りを喰らってしまったようだ。
タ、タイランの蹴り!?リリーは無事なのか!?
「リリーーぃぃっ!?」
うっすらと目を開けると、顔の前で両腕を交差させ、蹴りの直撃を防いだリリーが映る。だが蹴りの衝撃は殺しきれなかったようで... 頭から後方に吹き飛び、荷台から投げ出される。
当然リリーは置いていかれる。
「タイランお嬢様、荷台をお止めになってください」
「あん!メイもなんて言ってるんだよ!?」
再び地面に足をつけ、走り続けるタイラン。メイに声をかけられても立ち止まらない。
ヤバいこのタイラン... 早くなんとかしないと...
「メイさん、少し場所を開けてくれませんか?」
見かねたスズが、メイと入れ替わるようにタイランの後ろを取ると...
おもむろに頭を掴んだ!
そして片手でタイランの体ごと頭を持ち上げ、タイランの耳に自身の口を持っていく。
「お?お、おおおおっ!?なんだあ?スズか?」
「タイランさん、止まってください」
「おう、良いぜ!」
スズが頭から手を放すと、タイランは両足でブレーキをかけるように着地する。すると徐々にスピードは落ちていき... 荷台は停止する。
「ス、スズ!リリーが荷台から落とされて... 」
「あ?リリーなら放っておいても大丈夫だろ」
「ひ、ひとまずタイランさんの背中のナイフの刺し傷を治しますね... 」
え... あの速度の荷台から落ちても大丈夫なのか?
「なめ... 私を... なめないでくださいへっぽこ... あの程度で私が振り落とされるとでも?私がカズと同レベルだとでも言いたいのですか... 」
「悪いなリリー!でも俺もナイフを刺されたからおあいこ様だぜ!」
荷台の後方からリリーが顔をちょこんと出す。
どうやってか、荷台の後ろの方にしがみついていたのか...
「おあいこではないです。止まれと言ったら止まってください」
「あん?聞こえなかったんだから、しょうがねえじゃねえか」
「聞こえなかったら止まればいいんですよ」
するとタイランは手をポンと叩き、口を丸くする。
「なるほどな!うん、そうだそうだ。ならそう言ってくれれば良かったじゃねえかよ」
… リリーの表情は変わらないが、おおよそ何を考えているのか想像はつく。
「... もう良いです。スズ、そっちが終わったら私の腕を見てくれませんか?さっきから右腕の痛みが引きません」
「は、はい。こっちももう終わりますから」
… なんというか、もうこういうものだと思う事にしよう。
町の方から吹いてくる風が気持ちいいな。
**********
あれから何事もなく昼過ぎに東の町につき... 海からそこそこ離れた、街の中心部分の所に宿を取る。
「っはああああああぁぁぁぁ... 」
その宿の一室にて。リリーはベッドに身を投げ出し、どでかいため息をついていた。
「あの脳筋のせいで疲れました。少し休憩したら脳筋とメイを置いて三人で出かけますよ」
「えっと、自傷した暴行事件の加害者を探すんだっけ?あてはあるのか?」
「はい、暴行の事件自体の情報は簡単に見つかりました。加害者が自傷としたという情報は新聞には乗っていませんでしたが」
なるほど、自傷がどのレベルなのかは分からないけれど、病院的な所にいるのかな?
「そういえば、罪人の扱いってどうなってるんだ?牢獄があったりとかか?」
「罪の重さによりますね。牢獄はありますが、罪が重ければ死刑にもなります。今回は罰金で話がついているようなので、男が入っている病院に行きます」
傷害で罰金?現代だと懲役になるのかな?いや慰謝料的な話も聞くし... いやもう考えないでおこう。
「そういえば病院の近くで綺麗な海が見れるそうです。後でついでに寄りましょうか」
「海かあ、他の三つの町では綺麗な景色が見れなかったから、少し楽しみだな」
「あとついでにもう一つ。忘れているかもしれませんが、ここの四天王を倒した後で魔王を倒しに海を渡ります。王都には戻らないのでそのつもりで」
ああそうか、魔王もいるんだったな。気を引き締めていかないと...
「ところでリリー、俺の能力のことなんだが... 」
「この件が片付いたら船を探さないとですね、一応馬鹿から金はせしめたので心配はないですが」
「ああ、それで俺の能力のことなんだが...」
「あと数分したらスズを連れて出かけましょう」
これは... はぐらかされている。確実に、絶対にはぐらかされている。
昨日もそうだったが... まさか俺がいなくてもパーティーが回ることに気づかれたか?
… いや、それは俺も分かりきっていることだが。
「... じゃあリリーが初めて能力を使った時の事を聞いてもいいか?」
「能力を初めて使った時の事お?」
するとリリーは組んだ両腕の上に頭を乗せ、仰向けに寝転がり、目を瞑る。
少し経つと目を開け、こちらに向き直り...
「いや、皆なんの前触れも無く発動しましたよ。なんか出来てました」
… もう俺の能力は発動しないのでは?
空はかっと晴れていて、こちらももしも普通に散歩をしていたら、あの太陽のように明るい気分になっていただろう。
もしも目を開けていれば、遠くの方には石造りの町並みが見えていただろう。斜面の多い町のようで、色々な大きさの建物が不揃いに並んでいるようだ。
カモメだかウミネコだかが空を舞っており、元気な鳴き声も聞こえて来る。そして他にも聞こえて来るのは、荷台の車輪が地面を転がる音と...
「うおおおおおっっ!!!目が痛くなってきたぜえええぇぇ!!!もう開けられねええ!」
「タイランっ!止まって...!止まってください!あなた含め誰一人目を開けられません!!!」
荷台は高速道路を行く車の速度で走っており、風よけも何も無ければこうなるのは必然... 海に近づいたことで風が少し強くなったのか?
「風で聞こえねえ!!何を言ってるんだリリー!」
「止まるんです!休憩です!速度を落としてください!」
「ああん!?なんて言っているのか聞こえねえよ!」
「チッ... 」
仕方なく目を瞑り、リリーとタイランの怒鳴り声のような声でされているやり取りを聞いて
いると... 真隣、リリーの方から舌打ちの音が聞こえ... 更にナイフを抜き取る音が聞こえる。
「だから足を止めろと!ここからは速度を落として走れと!言っているんですよっっ!!」
「ぐっ!!!あああああぁぁぁぁっっ!!」
うっすらと目を開けると、背中にナイフを刺さったまま走るタイランの姿が...
「リ、リリー...!ナイフを刺す前に口で話せと... いつも言ってるだろうがあああっっ!」
ブチ切れたタイランは、どうやってか速度を落とさず真上に飛び上がり、まるで器械体操の選手のようにハンドルを軸に下半身を回転させ、リリーに蹴りをかます...
「え、ちょ... くっ... !」
目を瞑っていたリリーは、予測していなかったのか蹴りを喰らってしまったようだ。
タ、タイランの蹴り!?リリーは無事なのか!?
「リリーーぃぃっ!?」
うっすらと目を開けると、顔の前で両腕を交差させ、蹴りの直撃を防いだリリーが映る。だが蹴りの衝撃は殺しきれなかったようで... 頭から後方に吹き飛び、荷台から投げ出される。
当然リリーは置いていかれる。
「タイランお嬢様、荷台をお止めになってください」
「あん!メイもなんて言ってるんだよ!?」
再び地面に足をつけ、走り続けるタイラン。メイに声をかけられても立ち止まらない。
ヤバいこのタイラン... 早くなんとかしないと...
「メイさん、少し場所を開けてくれませんか?」
見かねたスズが、メイと入れ替わるようにタイランの後ろを取ると...
おもむろに頭を掴んだ!
そして片手でタイランの体ごと頭を持ち上げ、タイランの耳に自身の口を持っていく。
「お?お、おおおおっ!?なんだあ?スズか?」
「タイランさん、止まってください」
「おう、良いぜ!」
スズが頭から手を放すと、タイランは両足でブレーキをかけるように着地する。すると徐々にスピードは落ちていき... 荷台は停止する。
「ス、スズ!リリーが荷台から落とされて... 」
「あ?リリーなら放っておいても大丈夫だろ」
「ひ、ひとまずタイランさんの背中のナイフの刺し傷を治しますね... 」
え... あの速度の荷台から落ちても大丈夫なのか?
「なめ... 私を... なめないでくださいへっぽこ... あの程度で私が振り落とされるとでも?私がカズと同レベルだとでも言いたいのですか... 」
「悪いなリリー!でも俺もナイフを刺されたからおあいこ様だぜ!」
荷台の後方からリリーが顔をちょこんと出す。
どうやってか、荷台の後ろの方にしがみついていたのか...
「おあいこではないです。止まれと言ったら止まってください」
「あん?聞こえなかったんだから、しょうがねえじゃねえか」
「聞こえなかったら止まればいいんですよ」
するとタイランは手をポンと叩き、口を丸くする。
「なるほどな!うん、そうだそうだ。ならそう言ってくれれば良かったじゃねえかよ」
… リリーの表情は変わらないが、おおよそ何を考えているのか想像はつく。
「... もう良いです。スズ、そっちが終わったら私の腕を見てくれませんか?さっきから右腕の痛みが引きません」
「は、はい。こっちももう終わりますから」
… なんというか、もうこういうものだと思う事にしよう。
町の方から吹いてくる風が気持ちいいな。
**********
あれから何事もなく昼過ぎに東の町につき... 海からそこそこ離れた、街の中心部分の所に宿を取る。
「っはああああああぁぁぁぁ... 」
その宿の一室にて。リリーはベッドに身を投げ出し、どでかいため息をついていた。
「あの脳筋のせいで疲れました。少し休憩したら脳筋とメイを置いて三人で出かけますよ」
「えっと、自傷した暴行事件の加害者を探すんだっけ?あてはあるのか?」
「はい、暴行の事件自体の情報は簡単に見つかりました。加害者が自傷としたという情報は新聞には乗っていませんでしたが」
なるほど、自傷がどのレベルなのかは分からないけれど、病院的な所にいるのかな?
「そういえば、罪人の扱いってどうなってるんだ?牢獄があったりとかか?」
「罪の重さによりますね。牢獄はありますが、罪が重ければ死刑にもなります。今回は罰金で話がついているようなので、男が入っている病院に行きます」
傷害で罰金?現代だと懲役になるのかな?いや慰謝料的な話も聞くし... いやもう考えないでおこう。
「そういえば病院の近くで綺麗な海が見れるそうです。後でついでに寄りましょうか」
「海かあ、他の三つの町では綺麗な景色が見れなかったから、少し楽しみだな」
「あとついでにもう一つ。忘れているかもしれませんが、ここの四天王を倒した後で魔王を倒しに海を渡ります。王都には戻らないのでそのつもりで」
ああそうか、魔王もいるんだったな。気を引き締めていかないと...
「ところでリリー、俺の能力のことなんだが... 」
「この件が片付いたら船を探さないとですね、一応馬鹿から金はせしめたので心配はないですが」
「ああ、それで俺の能力のことなんだが...」
「あと数分したらスズを連れて出かけましょう」
これは... はぐらかされている。確実に、絶対にはぐらかされている。
昨日もそうだったが... まさか俺がいなくてもパーティーが回ることに気づかれたか?
… いや、それは俺も分かりきっていることだが。
「... じゃあリリーが初めて能力を使った時の事を聞いてもいいか?」
「能力を初めて使った時の事お?」
するとリリーは組んだ両腕の上に頭を乗せ、仰向けに寝転がり、目を瞑る。
少し経つと目を開け、こちらに向き直り...
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