「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない

橋本彩里(Ayari)

文字の大きさ
21 / 23

ご褒美③

しおりを挟む
 
 その後、男を治安部隊に預け、もろもろの手続きをする際に、今回やたらと私にこだわったのはイーサンの親戚に唆されたからとのことだった。
 彼らは自分たちが金もなく苦労しているのに伯爵家にうまく取り入ってのうのうと過ごしているイーサンに腹が立ち、イーサンが目に入れても痛くないほど大事にしている伯爵令嬢、つまり私を手込めにすれば溜飲が下がるといった理由で自分たちも借金している商家に情報を売り込んだらしい。
 とことん腐った親戚である。

 完全に縁が切れたこと、彼らも爵位があるから増長するのだと、彼らの罪を暴き返還に踏み切ったと言っていた。
 あと、後にわだかまりが残らないように借金の返済はしたが、そもそも商家の男が無用な圧力をかけて借金を背負うことになったようで、そのうち取り戻すことになる手はずだという。そもそも逃げた男が返済すべきで、その男が見つかるのも時間の問題だろうとのこと。
 だから、ミラは何も気にすることなく安心してくれていいと言われた。

 事情聴取の間、イーサンは私のそばをべったりと離れず、しまいには治安部隊の人に呆れられさっさと帰れと追い出されるほどで、そんな怒濤の展開を迎え私たちは屋敷に帰り今イーサンの部屋にいた。
 帰宅した私たちを見た両親はほっと息をつき、それから私の腰を手を添えて一向に離れる気配のないイーサンに「くれぐれもミラの気持ちを無視するような行動は控えるように」とだけ言って、イーサンと私が部屋にこもることを許した。

 あっという間のことで、現実感が追いつかないままベッドに押し倒され逃げないようにのしかかられ、自分よりも大きな身体のイーサンを見上げる。
 ひやりとしたシーツの感触と、上から放たれる熱気にぞくぞくしそれが吐息とともに現れる。頭の芯は冴えているのに周囲がほわほわと熱に浮かされていく。

「イーサン……」

 ここまで来ると、私もさすがにどんな状況なのか気づく。そして、イーサンの気持ちも。
 曇りのない瞳は情念の炎で揺れ、口元に浮かぶ酷薄な笑みが獲物を狙う獣のようだ。

「ミラというご褒美ちょうだい」
「ご褒美……」

 そう言えば、そういう話だったと思い出す。
 日常に刻まれた私たちの約束を忘れていたわけではなかったけれど、いろいろありすぎてあちこちに思考が飛んでいく。

「僕はずっとミラしか見えない。ミラしかいらない。ミラの全てが欲しい。だから、僕の幸せを願うならほかの男のことなんて考えてはダメだよ」

 かけ過ぎないように体重を乗せ動きを封じられ、逃げ道をなくすように両手を拘束される。
 大きな手は指を回すだけで簡単に私の腕の動きを封じた。その上、足を挟まれ下半身を擦り付けるように押しつけられる。

「あっ」

 直接的な行動に思わず声が出た。
 反応してしまうことが恥ずかしくて、私の反応ににっと笑むイーサンの姿にどくんと鼓動が高鳴る。

 ――これは誰だ?

 こんな雄くさいイーサンを私は知らない。
 べったりくっつかれていたけれどそれは常に上半身のみで、熱を帯びた双眸とともにひどく扇情的な行動もイーサンの気持ちの表れのようで顔が茹で上がる。

「ミラがいるから僕は頑張れるし毎日が楽しい。ミラがいない日常に幸せなんてないから。たとえ、ミラが僕の幸せのためだとしても離れようなんて考えること自体僕には耐えられない」
「……一緒に居すぎて愛情をはき違えている可能性は?」

 率直で情熱的な告白に胸が疼く。
 それでもあまりにも長く近くにいすぎたため、それを疑わずにはいられない。
 私自身がずっとそう思ってきて、そして明確にイーサンへの気持ちを自覚し認めたのも先ほどで今までの考えが抜けきれない。

「それこそ今更だよ。もうとっくに僕はミラを女性として好きなのに? その上でミラがほかの男を見ないようにずっとべったりくっついて寄せ付けないようにしてきたのに? それでも僕のこの思いが刷り込みだとでも言うの?」
「…………」

 あまりにも堂々と語られ、不安を抱いていたこと自体がおかしいような気がしてくる。
 見つめる眼差しは熱を含んでいるけれど、窺い甘える姿は私の知るイーサンでもあって、この双眸に見つめられると無条件でイーサンのことを受け入れたくなる。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

逆ハーレムの構成員になった後最終的に選ばれなかった男と結婚したら、人生薔薇色になりました。

下菊みこと
恋愛
逆ハーレム構成員のその後に寄り添う女性のお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。 7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。 ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。 ※よくある話で設定はゆるいです。 誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。

前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!

お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。 ……。 …………。 「レオくぅーん!いま会いに行きます!」

【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

処理中です...