122 / 130
第二部
区切り sideセラフィーナ
しおりを挟むセラフィーナはフェリシアとの会話を終え、教室に戻った。
転生前に読んだ一冊の物語のヒーロー。どの本のヒーローが一番好きかと話題になったので、デュークだと答えるくらい好ましい男性主人公。
――解放された、……そう、期待してもいいかもしれない。
フェリシアと仲睦まじい姿は、そう実感できるピースの一つ。
あの頃は周囲の環境に疲れていたのもあり、弁が立ち華麗に立ち回る人物より、実直不器用でまっすぐなデュークの活躍に心が軽やかになった。
だから、前回の回帰でベリンダがあの女であることを知った時は、眩暈と同時に言い知れぬ怒りが湧き上がったが、手を下すまでもなくベリンダは自滅した。
あの女の性格なら当然と言えば当然で、物語が展開されていくなか、デュークの深く沈んだ後悔を見て、彼の幸せも願ってはいた。
過保護気味でかなり重い感じに仕上がってはいるが、どちらも幸せそうなのでよかった。
「イレイン様、危ないですよ」
「ありがとう」
目の前では、躓きそうになったイレイン様をかばうようにザカリーが手を差し出し、しばらく二人は手を取り合い見つめ合う。
「あっ、すみません」
「いえ……」
わたわたと手を離し、二人は頬をうっすらと染めて照れくさそうに視線を下にやった。
先日、イレイン様はザカリーに告白した。セラフィーナたちが失踪している間、ずっと寄り添い声をかけ続けてくれたらしい。
ザカリー自身も身内が心配なのに、温かい言葉をかけてくれたザカリーに惚れ直し、イレイン様は気持ちを押さえられなくなったようだ。
ザカリーもイレイン様に好意を抱いているが、国家間の様々なしがらみがあるためまずは大人たちの判断を仰ぐとのことだった。
だが、イレイン様を他国に渡したくない陛下たちは自国で領地と爵位を分け与えるつもりであるし、ザカリーが婿になることを承知するならば、身分や能力的には問題ないだろう。
セラフィーナとしても、イレイン様が幸せなら、そして国にいるのなら、セラフィーナ自身も他国の王子と婚約解消し自由となった身なのでこれからも会える。
イレイン様の親友という位置で、これからも見守っていけるのが望みだ。
初々しい二人を促し帰宅の途につきやっと一人になったセラフィーナは、自分に割り当てられた部屋に戻るとそっと息をついた。
「長かった……。でも、やっとここまできたわ」
セラフィーナは窓辺に立ち、空を見上げた。
◇ ◇ ◇
セラフィーナに転生する前は、セナという名の女子高校生だった。
恋人や友人と周囲は常に人がおり賑やかで、順風満帆であったセナにも悩みがあった。悩み、とするには多大なストレスを感じるほど神経に支障をきたしていた。
互いに恋人ができたと一時期は祖父母と暮らしたこともあるほど、両親は自分本位な人たちだった。
世間の目と経済的な繋がりから離婚しなかっただけで、結局互いに恋人に振られ、また一緒に住むようになった。
セナは両親の緩衝材であり、セナが良い子である限り、自慢の娘として両親は繋がっていられるといったなんとも歪な関係。
それでも、大人に見捨てられたら生きていけないことは理解し、それらは受け入れた。
再度やり直すためと引っ越すことになったが、引っ越し先の高級マンションの隣人はとても変わっていた。
なぜこのような家族がと思ったが、親の遺産相続かなんかだそうで、だらんと伸びきった服でサンダルをひっかけて出ていく父親と、常に何かしら怒鳴るような声を上げる母親は、姿を見るたびに不快だった。
彼らは明らかに姉妹の扱いに差をつけ対応しており、ストレスを発散する先である姉を苛め抜いていた。
その上、その姉がセナと同じ歳でろくに風呂にも入れていないのかいつも匂う。明らかにその家族はそのマンションで浮いていた。
何かあるたびに謝り癖がついた同級生は、あの環境では仕方がないと思う反面、謝るわりにちっとも悪いと思っていない態度が鼻についた。
しかも、なぜかセナのことを親友だと勘違いし、付きまといだす始末。それとなく突き放しても気づかない。その鈍感さに腹が立つが、表立って悪く言えない。
その家族、同級生のリンとの出会いがセナの人生に影を落とした。
132
あなたにおすすめの小説
大好きだけどお別れしましょう〈完結〉
ヘルベ
恋愛
釣った魚に餌をやらない人が居るけど、あたしの恋人はまさにそれ。
いや、相手からしてみたら釣り糸を垂らしてもいないのに食らいついて来た魚なのだから、対して思い入れもないのも当たり前なのか。
騎士カイルのファンの一人でしかなかったあたしが、ライバルを蹴散らし晴れて恋人になれたものの、会話は盛り上がらず、記念日を祝ってくれる気配もない。デートもあたしから誘わないとできない。しかも三回に一回は断られる始末。
全部が全部こっち主導の一方通行の関係。
恋人の甘い雰囲気どころか友達以下のような関係に疲れたあたしは、思わず「別れましょう」と口に出してしまい……。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!
さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」
「はい、愛しています」
「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」
「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」
「え……?」
「さようなら、どうかお元気で」
愛しているから身を引きます。
*全22話【執筆済み】です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/09/12
※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください!
2021/09/20
義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~
marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」
「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」
私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。
暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。
彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。
それなのに……。
やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。
※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。
※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる