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婚約と俺様王子
姉妹で王宮へ②
しおりを挟むそう思いながらも好奇心もあり、私はぴたりと固まったまま吸い寄せられるように姉たちを見てしまう。
オズワルドが姉に触れていた手を動かし、そっと握り込んだ。
「ヴィア。これから王宮のバラ園にご案内しましょう。殿下から承諾いただいたので、ぜひ」
「それは非常に素晴らしいお誘いですが、今日は用事があるからここに呼び出されたのでは?」
「ええ。そうですよ」
姉の言葉にそうだったと私は心の中で頷いていると、当たり前のように頷きにっこり微笑むオズワルド。
しかし、それ以上口を開こうとしない。
んっ? それだけ? と私は思わず、人の話に「えっ?」と声を出してしまった。
すると、とん、と横にいるアンドリューに腕をぶつけられる。
黙っとけと言いたいのだろうかとアンドリューを見ると、実に楽しそうに口の端を上げこちらを見ていた。
がっつりと碧色の瞳と視線が絡まって、こういうときはその美しい色に魅入るというよりは落ちつかない気分になる。
私はんんっと瞬きをし、何か忘れているようなと首を傾げた。すると、同時にアンドリューも真似するように小首を傾げてきた。
ん? と私はさらに首を傾げたところで「お仕置き決定だな」だと宣言されたことを思い出す。
アンドリューの脅し文句に対処しきれないと姉に助けを求めようとして、あまりの空気に一瞬そのことを忘れていた。
「あっ! ……いえ、なんでもありません」
私は慌ててごまかすように笑った。ううっ、そわそわする。
その私の様子を眺めていた敏いアンドリューは、実に楽しそうに眉を跳ね上げる。
「はぁー。この一瞬で忘れるなんて、ティアは本当にめでたいな。まあ、そういうところも面白いとは思うが、な。まあ、あとでな」
ふっ、と笑いやれやれとばかりに言われ、私は思わず申し訳ないという気持ちになりかけたが、あとでなという言葉に我に返る。
「あとで!?」
「そう。あとで」
にっと笑うアンドリューに、完全にやらかしてしまったことを痛感した。
しおしおと項垂れ、撤回の言葉がないだろうかとちらりとアンドリューを見てみるが、これまたにこにこ爽やかに微笑まれるだけである。
姉はというと、姉は姉でオズワルドの熱いアプローチの対応に大変そうだ。
今日は学園の休日、久しぶりに姉妹水入らずで過ごそうと思っていたところに、予定を知っている男性陣に通信魔道具で王宮に一緒に来るようにと一報が入りやってきたのだ。
姉妹揃ってとは珍しいし、これはもしかして伯爵領の話ではないかと推測を立てながら二人でやって来たのだが、オズワルドの会話を聞いているとどうもそんな感じではなさそうだ。
「……えっと、用事というのはそういうことでしょうか」
「はい。ぜひ、許可もいただけたのでデートをしたいと。そうそうある機会でもありませんから」
同じように考えたのであろうシルヴィアが戸惑いながら声にした。
ちょっと困ったように眉を下げる姉は、麗しい。絶対、結婚してから艶っぽさ増したと思う。
「お仕事のほうはどうなのでしょう? とてもお忙しいとおうかがいしていたのですが」
「心配くださっているのですね。今日は仕事を押しつ、……終わらせてきましたので、ゆっくりヴィアと過ごせます」
今、押し付けてきたって言おうとした? と私がオズワルドを見ると、その視線に気づいた彼が、男性ながら婉然という言葉が似合う笑みを浮かべた。
「日ごろからサボっている方をようやく捕まえましたのでね。今頃、感涙しながら喜んでこなしているでしょう。いい薬です」
すぅっと理知的な紫色の瞳を細めて語る姿は、人形のように整いすぎた美貌と相まって、本来の彼はクールビューティ、氷の貴公子と呼ばれていることを思い出す。
姉と一緒のときにオズワルドと会うことがほとんどなので、何を考えているのかわからないと言われる双眸は大抵とろけている。
だからか、こういった面を見ると、怒らせたら極寒の寒さの地に放り出されるような気持ちになるなど、氷と言われるだけの人であることがわかる。
オズワルドが言うと、妖しさ増し。美貌に浮かべる笑みがなんとも想像力を掻き立てる。
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