別の形で会い直した宿敵が結婚を迫って来たんだが

まっど↑きみはる

文字の大きさ
275 / 288
決断

過ち

しおりを挟む
「原因は……、その……、私なんです」

 初めに口を開いたのは女魔剣士のデルタだ。

 その言葉を、ルサークは慌てて遮る。

「違う!! 俺が勝手にやった事だ!!」

 そして、深呼吸してから勇者たちに事情を打ち明け始めた。

「その、俺とデルタ、あと数人で冒険者のパーティを組んでいたんです」

 そこまではよくある話だ。皆が黙ってルサークの言葉を聞く。

「ある日、デルタの体調がおかしいと思ったら、不治の病にかかっておりまして」

「デルタが動けない。うつる病気じゃないのに、病気がうつると言って色々な理由を付け、パーティメンバーは去っていきました」

 苦々にがにがしそうに記憶を呼び出して語るルサーク。

「デルタの病気を治すには莫大な金を出して手に入る秘薬しかありませんでした。症状を緩和させる薬は買えたのですが、薬屋はそれでは治らないと……」

 皆が真剣にルサークの言葉に耳を傾けている。彼もまた、前を向いて続きを話す。

「金を貯めようにも、俺が十年働いて買えるぐらいの代物で、そんな金を貸してくれる人もおらず、このままではデルタの命が尽きてしまう」

「そこで……。偶然にも秘薬を持つ商人の護衛をする依頼がありました。俺は許されないと知りながらも、どさくさに紛れて秘薬を盗み、デルタに……」

 事の経緯を聞いたマルクエン達。最初に言葉を返したのはラミッタだった。

「なるほど、そりゃ重罪ね。立場を利用して盗みを働き、ギルドの信用をおとしめて。確かに何処か遠くの地へ逃げるほかないわね」

 ラミッタの言葉にルサークはうなずく。

「ギルドは落とし前を付けるために血眼になって俺達を探している事でしょう」

 そこでルサークは突如地面に座り、土下座する。

「お願いです!! 勇者様!! 今回の事は全て俺の独断で、俺に罪があります!! デルタは……、デルタだけは助けて下さい!!」

「ルサークやめて!! 元はと言えば私のせいで!!!」

 沈黙。静かに過ぎる時が、ルサークには永遠の様に感じられた。

 マルクエンがそんな彼に向かい、話し始める。

「顔をあげて下さい。ルサークさん。あなたのしたことは、ギルドを騙し、一般市民を騙し、到底許される事じゃない」

 厳しい言葉にレモーヌは何か言いたげだったが、声は出ずにいた。

「勇者として見過ごすわけにはいかない。いかないが。一人の人間として、言うならば……」

 そこでルサークは顔を上げる。マルクエンは彼の目をじっと見て言う。

「その選択。とても好感が持てます」

 ルサークは目から涙がこぼれた。デルタ以外の人間に初めて己の過ちを打ち明け、一人の人間としてならばと肯定された。

「私も、罪は償ってもらうけど、口添えぐらいはしてあげてもいいわ」

 ラミッタは髪の毛先をくるくるいじりながらそう言う。

「マルクエン様!!! ラミッタ様!!!」

 レモーヌもふぅーっと息を吐いてから言葉を出す。

「いけない事かもしれないっスけど、でも、やっぱ優しいんスね」

 気付けば、ルサークは声を出して泣いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

処理中です...