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欠陥品
欠陥品 3
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「ASD、アスペルガー症候群みたいなモノなんですが。人の感情が分からないとか、こだわりが強いだとか、忘れ物をしやすい、順序が組み立てられないだとかです」
そうなのかと松雪は思うが、どうにもそれが死にたい理由になる事が分からなかった。
「あの、失礼ですが、説明ちゃんと出来ている気がするんですけど……」
「はい、たくさん痛い目を見て身に付けたテクニックです。それでどうにか生きているんですが、もう限界です」
松雪は水晶玉に手をやる。すると、幼少期の小田の光景が見えてくる。
「小さい頃は、割と賢い子だと言われてました。自慢ではありませんが。大人の言うことをよく聞く、聞き分けのいい子だと」
そうだと思い出して小田は続けた。
「後は、何でも大人に確認して、了解を得ないと不安で仕方ない子供でした」
小学校だろうか、教室と、何故か小田だと分かる子供が居る。
「思えば、おかしかったのはこの頃からですね、僕は興味のない事は本当に何も覚えられませんでした。運動会の紅組か白組かさえ忘れていました」
そこまでなのかと、松雪は思う。小さい子供とはいえ、それぐらいは分かりそうなものだと。
「そして、発達障害の特性なのですが、整理整頓が出来ない、忘れ物をする。で先生から嫌われていました」
「そうなんですか……」
松雪はそう言ったものの、整理整頓や忘れ物など気を付ければいいだけではと思った。
「僕の机だけ『台風が来たみたいだ』ってよく言われてましたよ」
力なく小田は笑う。それは気の毒に思えたが。
「それと、チック症ってのがあって。例えば僕の場合は喉をならす、目をぎゅっと瞑る、口を尖らせて左側に引っ張るってのが多かったですね」
チック症、松雪は聞いたことがあったが、今の説明を聞いて、それもしなければ良いとしか思えなかった。なので聞いてみる。
「あの、小田さん。それをしないようにするって出来ないんですか?」
小田は少しもムッとせずに回答をくれた。
「確かにしないように気を張ればできます。ですが、僕達みたいな発達障害者にとってそれは、例えるならばまばたきを、目を閉じたり開いたりを意識してやるぐらい難しいのです」
「まばたきを……、ですか」
そう言われると理解できなくもない気がする。まばたきを自分でコントロールするとしたら相当疲れるだろう。
「チックをしないようにすると、それだけに意識が取られて、他の事が出来なくなるんです」
そこまでの事なのかと、松雪は驚くが、小田が大げさに言っているようには感じられない。
「このチックは親にも注意されました。僕をこんな風に産んだ親にっ!!」
初めて小田が怒りを顕にして松雪はドキリとする。
「あ、すみません。僕にとって親は世界一憎い存在で……」
「えっと、親御さんと何かあったんですか?」
「何かと言うよりは」
そこまで小田が言いかけた瞬間、松雪の中にも感情が流れた。水晶玉のせいだ。
憎しみと怒りと、あとはやるせなさだ。
「親が!! 親が僕をこんな体に、こんな頭に産まなかったら!!」
吐き出すように、絞り出すように小田は言った。それを見て松雪はどうして良いかわからずオロオロとしていた。
「すみません、すみません……」
涙を堪えて謝る小田。
「いえ、大丈夫です……。お話の続き聞かせて頂けませんか?」
「はい、僕は小学校中学年ぐらいからイジメに会いました。空気が読めないとか、挙動不審だとか言われて……」
それと付け加えて小田は続ける。
そうなのかと松雪は思うが、どうにもそれが死にたい理由になる事が分からなかった。
「あの、失礼ですが、説明ちゃんと出来ている気がするんですけど……」
「はい、たくさん痛い目を見て身に付けたテクニックです。それでどうにか生きているんですが、もう限界です」
松雪は水晶玉に手をやる。すると、幼少期の小田の光景が見えてくる。
「小さい頃は、割と賢い子だと言われてました。自慢ではありませんが。大人の言うことをよく聞く、聞き分けのいい子だと」
そうだと思い出して小田は続けた。
「後は、何でも大人に確認して、了解を得ないと不安で仕方ない子供でした」
小学校だろうか、教室と、何故か小田だと分かる子供が居る。
「思えば、おかしかったのはこの頃からですね、僕は興味のない事は本当に何も覚えられませんでした。運動会の紅組か白組かさえ忘れていました」
そこまでなのかと、松雪は思う。小さい子供とはいえ、それぐらいは分かりそうなものだと。
「そして、発達障害の特性なのですが、整理整頓が出来ない、忘れ物をする。で先生から嫌われていました」
「そうなんですか……」
松雪はそう言ったものの、整理整頓や忘れ物など気を付ければいいだけではと思った。
「僕の机だけ『台風が来たみたいだ』ってよく言われてましたよ」
力なく小田は笑う。それは気の毒に思えたが。
「それと、チック症ってのがあって。例えば僕の場合は喉をならす、目をぎゅっと瞑る、口を尖らせて左側に引っ張るってのが多かったですね」
チック症、松雪は聞いたことがあったが、今の説明を聞いて、それもしなければ良いとしか思えなかった。なので聞いてみる。
「あの、小田さん。それをしないようにするって出来ないんですか?」
小田は少しもムッとせずに回答をくれた。
「確かにしないように気を張ればできます。ですが、僕達みたいな発達障害者にとってそれは、例えるならばまばたきを、目を閉じたり開いたりを意識してやるぐらい難しいのです」
「まばたきを……、ですか」
そう言われると理解できなくもない気がする。まばたきを自分でコントロールするとしたら相当疲れるだろう。
「チックをしないようにすると、それだけに意識が取られて、他の事が出来なくなるんです」
そこまでの事なのかと、松雪は驚くが、小田が大げさに言っているようには感じられない。
「このチックは親にも注意されました。僕をこんな風に産んだ親にっ!!」
初めて小田が怒りを顕にして松雪はドキリとする。
「あ、すみません。僕にとって親は世界一憎い存在で……」
「えっと、親御さんと何かあったんですか?」
「何かと言うよりは」
そこまで小田が言いかけた瞬間、松雪の中にも感情が流れた。水晶玉のせいだ。
憎しみと怒りと、あとはやるせなさだ。
「親が!! 親が僕をこんな体に、こんな頭に産まなかったら!!」
吐き出すように、絞り出すように小田は言った。それを見て松雪はどうして良いかわからずオロオロとしていた。
「すみません、すみません……」
涙を堪えて謝る小田。
「いえ、大丈夫です……。お話の続き聞かせて頂けませんか?」
「はい、僕は小学校中学年ぐらいからイジメに会いました。空気が読めないとか、挙動不審だとか言われて……」
それと付け加えて小田は続ける。
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