誕生日に捨てられた記憶喪失の伯爵令嬢は、辺境を守る騎士に拾われて最高の幸せを手に入れる

八重

文字の大きさ
4 / 23
第一部 出会い編

第4話 娘のいなくなった邸宅~SIDEフルーリー伯爵家~

しおりを挟む
「どういうことですか、父上っ!!」
「どうもこうもない、さっきも言ったとおりだ」
「あの辺境の地の森に女の子一人置いて来るなんてどうかしてます!!」
「もし帰りたかったら歩いてでも帰って来るだろう」

 彼には辺境の森から自宅まで戻れない距離であることを知っており、自分の父親をひどく軽蔑する。

「あそこからどれだけ距離があると思っているのですか!」
「うるさいっ! お前は黙ってわしの言うことを聞けばいいんだ!」
「……」

 彼──リーズの兄であるブレスはあまりにも横暴に自分の妹を捨てた父に抗議していた。
 だが、運が悪いことにブレスが父の所業に気づいたのは、リーズが捨てられた二日後だった。
 仕事で遠征していた関係で気づくのが遅くなってしまったのだ。

 ブレスはなんとか父親に抗おうと頭の中で考えを巡らせるも、父親であるフルーリー伯爵の権力は強く、言い崩すことはできない。
 ここで話していても埒が明かないどころか、無駄に時間を消費してしまうと考えたブレスは身体を動かすことに決めた。

「私がリーズを探しに行きます!」
「ふん、勝手にしろ」

 そう言ってブレスは辺境の地へと馬車を走らせていた。



◇◆◇



 馬車の中でブレスはポケットからネックレスを取り出すと、それをじっと見つめた。

「リーズ……」

 そのネックレスはリーズが昔、母親の形見として大事にしていたものだった。
 だが、先月に階段で足を滑らせて頭を打ってからは記憶を失ってしまい、そのネックレスが母親の形見であることはおろか、母親のことも忘れてしまっているようだった。
 馬車が辺境の地へと向かう最中、ブレスは幼い頃リーズが生まれたときのことを思い出した──


『ブレス、あなたは今日からお兄ちゃんよ。この子を守るの』
『守る?』
『ええ、この子にはいつか私のネックレスをあげたいなって思ってるけど、かわりにあなたにはこれをあげる』

 そう言って母親は優しく微笑みながらブレスに指輪を一つあげた。

『指輪?』
『これはきっとあなたと、そしてここにいるリーズを守ってくれるわ。二人はいつも一緒に助け合って生きていくのよ』


 ブレスは再びネックレスに視線を落としたあと、自分の手に嵌めている指輪を見つめる。
 幼い時に母親にはめてもらったときよりきつくなった指輪は、日の光が入り込み、それは虹色のような不思議な輝きを放っている。

「母上、リーズは必ず私が守ります」

 指輪のはまった手、そしてその手に握り締められたネックレスを祈るように額につける。


「どうか無事でいてくれ、リーズ」


 馬車は急いで辺境の森へと向かっていった──
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』

みこと。
恋愛
「あなたと子を作るつもりはない」 皇帝シュテファンに嫁いだエリザは、初夜に夫から宣言されて首をかしげる。 (これは"愛することのない"の亜種?) 前世を思い出したばかりの彼女は、ここが小説『冷酷皇帝の最愛妃』の中だと気づき、冷静に状況を分析していた。 エリザの役どころは、公爵家が皇帝に押し付けた花嫁で、彼の恋路の邪魔をするモブ皇妃。小説のシュテファンは、最終的には運命の恋人アンネと結ばれる。 それは確かに、子どもが出来たら困るだろう。 速やかな"円満離婚"を前提にシュテファンと契約を結んだエリザだったが、とあるキッカケで彼の子を身ごもることになってしまい──? シュテファンとの契約違反におののき、思わず逃走したエリザに「やっと見つけた」と追いすがる夫。 どうやら彼はエリザ一筋だったらしく。あれ? あなたの恋人アンネはどうしたの? ※小説家になろう様でも掲載しています ※表紙イラスト:あさぎかな先生にコラージュアートをいただきました ※毎朝7時に更新していく予定です→2月15日からはランダム更新となります。ご了承ください

乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ

弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は今夜を持って破棄させて貰おう!』  学園卒業祝いの夜会の場に、凛と響いた王太子殿下の一声。  その瞬間、私は全てを思い出した。  私が前世ではただの手芸とゲームが好きなインドア派女子大生だったこと。そして、ゲーム世界に転生して尚も趣味は変わらず、ライバルキャラですらないモブになってしまっていたことを。  幼い頃に一度出会ったきりの初恋の彼と学園で再会出来たらなぁ、なんて淡い期待を抱いて通っていたのに、道理で卒業式までなんにも起きなかったわけだ。  ーーなんて、ひとり納得していたら。  何故だが私が悪役令嬢の断罪イベントの目撃者として名指しされ、一気に渦中の人物に!?  更に、王太子以外の男性陣は皆様悪役令嬢に骨抜き。なので自然と私には、彼女の潔白に繋がる証言が求められる。  しかしながら、私は肝心の事件の日の記憶が訳あって曖昧だったので、致し方なく記憶を呼び覚ます治療を受けさせられる羽目に。  タイムリミットは1年間。  その1年間の私への護衛につけられたのは、悪役令嬢に心奪われた初恋の彼でした。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

処理中です...