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第一部 出会い編

第17話 再会と共闘

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「リーズ姉ちゃんっ! これでいいか?」

 そう言いながら頭上に青々しく輝く葉をビルは掲げる。

「ええ、それでいいわ! それを10個くらい見つけられると嬉しいんだけど」
「10個っ?! 一個探すのに30分くらいかかったぞ!」
「一個見つけたらその近くにたぶんあるから」

 そんな会話をしながら二人は山菜採りをしている。
 リーズも黙々と木の実を拾っては、ビルをちらっと見て様子を伺う。

(ふふ、最初は嫌だって言ってたけど、結局手伝ってくれるんだから)

 土にまみれるのは嫌だとか、虫が出てくるからとか文句をいくつか言ってキャシーに頼まれた山菜採りをしぶっていたビルだったが、結局は楽しんでやっていた。

(優しいのよね、ビルは)

 おそらくは自分一人だと大変だからと、気を利かせたのだろう。
 そんなところが彼の優しさである。
 口は悪いが結局は手を差し伸べるようなそんな彼だった。

 そろそろ日も暮れて来る頃だから戻ろうか、とリーズはビルに声をかけたが返事がない。
 おかしいと思って、後ろを振り返ると先程までそこにいたビルはいなくなっていた。

「ビル?」

 辺りを見回しても一向に彼の姿が見当たらない。


「ビルー??!」

 数分あたりの森の中を探したが、彼は返事をすることもない。

(まずいわね、日が暮れる……!)

 さすがに森の中は街灯一つないため、このままだと探すのに困難になるどころか危険が高い。

「ビルー!!」
「よお、姉ちゃん。探し物はこれか?」
「え?」

 かけられた声に振り向くと、そこにはこのあたりでは見かけない質素でところどころ破れた服を着ている男二人と、その男のうちの一人の腕の中にはビルがいた。

「ビル!!」
「俺たちと出会ったのが運のつきだな」

 そう言いながら、ナイフをリーズのほうに向けてきて脅す。

「どういうつもり?」
「おっと、おとなしくきてもらおうか。こいつの命を救いたいだろ?」

 もう一人の男がビルの顔のあたりにナイフを突きつける。
 ビルは気を失っており、リーズの声かけに返事をしない──

(たぶんこのあたりの服装じゃないし、おそらくこの二人組はニコラが数日前に話してた人さらい……)

「どうした? おとなしくついて来る決心がついたか?」
「……わかったわ。でもビルを絶対に傷つけないで、それからビルは解放して、もちろん森の入口まで連れて行って」
「ほお、自分を犠牲にしてこいつを守ろうってか? 泣けるね~」

 ビルの服を掴んでいた男は腕を離してリーズのほうにビルを投げつける。

「──っ! ビル……!」

 なんとかビルを受け止めたリーズはぎゅっと彼を抱きしめる。

「さあ、約束だぜ。おとなしくこっちきな!」
「きゃっ!」

 リーズは男に引き寄せられると、そのまま腕を掴まれて抵抗できなくなる。

「話が違うじゃないっ! ビルを森の入り口まで……」
「うるせえ! 自分の状況がわかってねえようだな」

 少し痛い目にあわせてやる、と男が言いながら刃物をリーズに向ける。

「──っ!!」

 もうだめかもしれない、そう思ったリーズだったがいつまで待っても何の衝撃も訪れない。

「……?」

 リーズはそっと閉じていた目を開くと、そこには見知った狼がいた。

「シロっ!」
「(たくっ! こんな輩に絡まれるとは、お祓いでもしてきたほうがいいぞ)」
「なっ! 兄貴ーっ!!」

 シロはその大きな肉球でリーズに襲い掛かろうとした男を踏みつけて動けなくしていた。
 男はその衝撃で気を失い、もう一人の男はシロの姿におびえてガタガタを震えている。

「ま、魔獣……?」
「(ふん、手を出した相手が悪かったな。ほら、騎士様が駆け付けたぞ)」

 リーズを捕らえていた男の首筋に剣が突きつけられた。

「離してもらおうか、私の妻を」
「──っ!!」
「ニコラ……」

 リーズの視線の先には剣を男に向けながら、睨みと怒りの声を出したニコラがいた。
 男がリーズを解放すると、ニコラはリーズを優しく片腕で抱きかかえる。

「君を怖い目に合わせた奴らに最大級の恐怖を与えるから待ってて」

 そう言ってニコラは、平常心を失いナイフを向けてきた男と交戦する。

「シロ、そちらの男は押さえつけたままにしておけよ」
「(私に命令するとはいいご身分だな)」

 シロが一人の男を押さえつけて動かなくしている間に、ニコラがもう一人の男と戦う。
 ナイフをくるくると回しながらニコラに素早く切りかかる。

「俺がナイフさばきで負けるわけねえだろぉ!!!」
「ふん、誰にものを言っている」


 ──勝敗はすぐに着いた。
 王国でも凄腕の剣技を持つニコラに敵うわけもなく、男はすぐさま捕縛された。

「リーズを守るのが俺の役目。命を懸けて」

 ニコラは男たちを捕縛した後、いつもの優しい微笑みでリーズの元に向かった──
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