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第一部 出会い編
第19話 もう袋のネズミ
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ある日、フランソワーズとビルと一緒に遊んでいたリーズはニコラに呼び止められる。
「リーズ!」
「ニコラ、どうしたの?」
馬から降りたニコラはリーズを抱きかかえて再び騎乗する。
その様子はまさに騎士そのもので、リーズは顔を赤くしてドタバタした。
ビルはその様子を見てひゅーひゅーと声をあげて、隣にいるフランソワーズに制止されている。
「降ろしてっ!」
「どうして」
「恥ずかしいから」
「大丈夫、みんな見てもリーズのことを可愛いって思って見てるだけだから」
「もうっ! そんなわけないでしょ」
そんなことを言っていると、ごめん時間ないから飛ばすねと呟いたニコラを馬に指示を与えて走り出す。
「きゃっ!」
「しっかり俺に掴まってて」
「え、どこに行くの?!」
「ないしょ!」
リーズとニコラを乗せた馬はまっすぐ森を抜けていく。
初めて受ける風とあまりの速さにリーズはニコラにしがみついた。
「ふふ、君が抱き着いてくれるなら、今度また馬で出かけようかな」
「結構怖いわよ!」
次第に森を抜けて市街地が見え始めると、リーズの見覚えのある場所に出てきた。
「これって……」
「そう、見覚えあるでしょ」
ニコラには記憶が戻ったことを話していた。
自分が育った街、見覚えのある道、全ては懐かしく思える。
そしてフルーリー伯爵邸の前に着くと、ニコラは馬を降りてリーズに向かって手を広げる。
「さあ、飛び込んできて大丈夫だよ」
「本当?」
「うん、必ず受け止めるから」
「わかった」
リーズは思い切ってニコラの胸に飛び込むと、がっしりとした身体に抱き留められる。
そして目の前にある家に目を向けた。
「ここ……」
「そう、君の昔の家だよ」
そう言ってニコラはリーズの手を引くと、そのまま玄関のドアをコンコンと叩く。
少しの後、そっと扉が開き、待っていたかのようにブレスが顔を見せた。
「お兄様っ!!」
「リーズっ!! ようやく会えたね、元気にしてたかい? ニコラにいじめられてなかったかい?」
「おい、俺が悪いやつみたいじゃないか」
「現にお前は信用ならない」
「あのな……」
リーズは兄に久々にあった嬉しさでいっぱいになったが、先程の言葉を聞いてまさか自分がニコラに恋をしているなんて言えなかった。
(ニコラにもまだ言えてない……好きって。でも、私の好きって受け入れられるのかな)
そんな風に考えていたリーズの横でまだ口論は続いている。
「ブレス、言ったはずだ、リーズは僕の『妻』なんだ。気安く触らないでほしいね」
「勝手に奪っておいて何を言うんだ!」
(そういえば、ニコラとお兄様って知り合いなの?)
こほんとニコラは咳ばらいをすると、本題に入り始めた。
二人とも真面目な顔つきに変わり、そしてブレスは何か覚悟を決めたように一つ頷くと、ニコラに告げる。
「我が父、フルーリー伯爵は廊下の突き当りの部屋にいる。頼む」
その声かけを聞くとニコラを右手を挙げて何か合図をした。
すると、伯爵邸のまわりから何十人もの騎士兵たちが現れ、一気に玄関から中になだれ込む。
「え?」
リーズは訳が分からず、ニコラのほうを見つめる。
すると、ニコラは優しく微笑んだ後に声をかけた。
「さあ、俺たちも行こうか」
「……?」
リーズは状況を理解できないまま、ニコラとブレスについて伯爵の部屋へと向かった──
「父上っ!!」
「ブレス、お前の仕業か、これはなんのつもりだ!」
「フルーリー伯爵、あなたは辺境の地に多額の税を国の指示なしにかけ、領民を苦しめていますね?」
「なっ?!」
「父上、ここに証拠の納税書と各書類がございます。それに国にワインの原料であるブドウの数年の不作を隠し、品質を悪化させて出荷したことは国益を損なう結果です」
ブレスは持っていた書類の束を伯爵に見せると、伯爵は目を見開き驚く。
そして、きりきりと歯をくいしばり、恨むようにブレスに向かって吠えた。
「ブレスーーー!!!!! お前、裏切りおったな?!」
「裏切ったのではありません、最初からあなたの配下になどなっておりません。私はこの騎士、ニコラと協力してあなたの不正を暴くために密かに交流していた」
(あ、もしかして先日の森の人影って、お兄様だったの?)
ニコラはブレスに続いて言葉を紡ぐ。
「また、ここにいるフルーリー伯爵令嬢であるリーズ嬢をあなたは辺境の地、それも獣が出る危険な森に捨てましたね?」
「ふん」
「この国で自分の子を捨てることがどのような罪に問われるかご存じですね?」
この国では身内を捨てる、というのは殺人罪にも値する行為と位置付けられており、重罪であった。
税関連の罪に加えてその罪も犯したとなれば、一生牢から外には出られないであろう。
責め立てるニコラに対して、伯爵は余裕の表情を浮かべて笑う。
「はっ! ふふ、お前ごときに何ができる! 騎士ではわしは裁けまいっ!!」
高らかに笑いながら書類をびりびりとちぎって捨てる。
これで証拠も何もないと言わんばかりに……。
「そうですか、あくまで改心しないのですね」
「改心? ふざけるな、不正はともかくなんでこんな自分の娘でないやつを育てねばならない」
「え…………?」
自分を指さしながら吐かれた言葉に何も言い返せず、言われた言葉も理解できない。
(私が、本当の娘じゃない……?)
「お前は知らんだろうが、死んだ母さんの連れ子なんだよ、お前は」
「連れ子……?」
「父上っ! リーズには言わない約束です!」
「知らんっ! お前はほんと邪魔だったんだ。聖女だからとお前の母さんを娶ったのに、すぐに力尽きて聖女としての回復力を失った」
(聖女……? 回復力……まさか私の傷が治るのって……)
「話はそれだけですか?」
「あ?」
「話はそれだけかと言っている」
リーズは自分の出自に驚き言葉も出なかったが、隣にふと冷たい気配を感じて振り向く。
そこには怒髪天を衝く勢いで怒り、拳を握り締めて凄むニコラの姿があった。
「──っ!!」
その目と迫力に圧倒されて先程まで勢いのあった伯爵も、思わず恐怖心を覚えて本能的に怯える。
「私の妻を捨てた挙句、侮辱するとはな」
「はっ! だからお前に何が……っ!!」
すると、部屋にいら騎士兵たちが全員その場に跪き、ニコラのほうに身体を向ける。
その異様な光景に何が起こるのかと、伯爵は怯えて後ずさった。
ニコラは胸元のポケットからバッチを取り出すと、それを騎士服につけた。
「なっ!!!」
それを見て伯爵も驚いて尻餅をつく。
「知らなければよいものを……。私は第一王子ニコラ・ヴィオネだ」
ニコラは堂々とその場で正体を明かす。
「第一、王子だと?」
「ええ、辺境の地へはあなたの不正を暴くために行っておりました。王都からは離れて身分を隠していたのでわからなかったでしょうね」
「まさか、このことは国王も……」
「ええ、全てご存じですよ。ブレスの協力のおかげで早くことが進みました」
(第一王子……様? ニコラが?)
リーズは今まで過ごしてきた優しいニコラと別人のような気がして、呆然としてしまう。
そんな彼女の心境を知ってか知らずか、終わりにしましょうと呟いて宣言した。
「あなたに王命を授けます。フルーリー伯爵、貴殿には当主の座から退いていただき、ここにいるブレス殿を次代のフルーリー伯爵とする! そして、子を捨てた罪は王都の獄にて償っていただきます」
「いやだああああーーーーーー!!!!!」
こうして、フルーリー伯爵は当主の座から降り、獄で処分を待つ身となった──
「リーズ!」
「ニコラ、どうしたの?」
馬から降りたニコラはリーズを抱きかかえて再び騎乗する。
その様子はまさに騎士そのもので、リーズは顔を赤くしてドタバタした。
ビルはその様子を見てひゅーひゅーと声をあげて、隣にいるフランソワーズに制止されている。
「降ろしてっ!」
「どうして」
「恥ずかしいから」
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「ないしょ!」
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初めて受ける風とあまりの速さにリーズはニコラにしがみついた。
「ふふ、君が抱き着いてくれるなら、今度また馬で出かけようかな」
「結構怖いわよ!」
次第に森を抜けて市街地が見え始めると、リーズの見覚えのある場所に出てきた。
「これって……」
「そう、見覚えあるでしょ」
ニコラには記憶が戻ったことを話していた。
自分が育った街、見覚えのある道、全ては懐かしく思える。
そしてフルーリー伯爵邸の前に着くと、ニコラは馬を降りてリーズに向かって手を広げる。
「さあ、飛び込んできて大丈夫だよ」
「本当?」
「うん、必ず受け止めるから」
「わかった」
リーズは思い切ってニコラの胸に飛び込むと、がっしりとした身体に抱き留められる。
そして目の前にある家に目を向けた。
「ここ……」
「そう、君の昔の家だよ」
そう言ってニコラはリーズの手を引くと、そのまま玄関のドアをコンコンと叩く。
少しの後、そっと扉が開き、待っていたかのようにブレスが顔を見せた。
「お兄様っ!!」
「リーズっ!! ようやく会えたね、元気にしてたかい? ニコラにいじめられてなかったかい?」
「おい、俺が悪いやつみたいじゃないか」
「現にお前は信用ならない」
「あのな……」
リーズは兄に久々にあった嬉しさでいっぱいになったが、先程の言葉を聞いてまさか自分がニコラに恋をしているなんて言えなかった。
(ニコラにもまだ言えてない……好きって。でも、私の好きって受け入れられるのかな)
そんな風に考えていたリーズの横でまだ口論は続いている。
「ブレス、言ったはずだ、リーズは僕の『妻』なんだ。気安く触らないでほしいね」
「勝手に奪っておいて何を言うんだ!」
(そういえば、ニコラとお兄様って知り合いなの?)
こほんとニコラは咳ばらいをすると、本題に入り始めた。
二人とも真面目な顔つきに変わり、そしてブレスは何か覚悟を決めたように一つ頷くと、ニコラに告げる。
「我が父、フルーリー伯爵は廊下の突き当りの部屋にいる。頼む」
その声かけを聞くとニコラを右手を挙げて何か合図をした。
すると、伯爵邸のまわりから何十人もの騎士兵たちが現れ、一気に玄関から中になだれ込む。
「え?」
リーズは訳が分からず、ニコラのほうを見つめる。
すると、ニコラは優しく微笑んだ後に声をかけた。
「さあ、俺たちも行こうか」
「……?」
リーズは状況を理解できないまま、ニコラとブレスについて伯爵の部屋へと向かった──
「父上っ!!」
「ブレス、お前の仕業か、これはなんのつもりだ!」
「フルーリー伯爵、あなたは辺境の地に多額の税を国の指示なしにかけ、領民を苦しめていますね?」
「なっ?!」
「父上、ここに証拠の納税書と各書類がございます。それに国にワインの原料であるブドウの数年の不作を隠し、品質を悪化させて出荷したことは国益を損なう結果です」
ブレスは持っていた書類の束を伯爵に見せると、伯爵は目を見開き驚く。
そして、きりきりと歯をくいしばり、恨むようにブレスに向かって吠えた。
「ブレスーーー!!!!! お前、裏切りおったな?!」
「裏切ったのではありません、最初からあなたの配下になどなっておりません。私はこの騎士、ニコラと協力してあなたの不正を暴くために密かに交流していた」
(あ、もしかして先日の森の人影って、お兄様だったの?)
ニコラはブレスに続いて言葉を紡ぐ。
「また、ここにいるフルーリー伯爵令嬢であるリーズ嬢をあなたは辺境の地、それも獣が出る危険な森に捨てましたね?」
「ふん」
「この国で自分の子を捨てることがどのような罪に問われるかご存じですね?」
この国では身内を捨てる、というのは殺人罪にも値する行為と位置付けられており、重罪であった。
税関連の罪に加えてその罪も犯したとなれば、一生牢から外には出られないであろう。
責め立てるニコラに対して、伯爵は余裕の表情を浮かべて笑う。
「はっ! ふふ、お前ごときに何ができる! 騎士ではわしは裁けまいっ!!」
高らかに笑いながら書類をびりびりとちぎって捨てる。
これで証拠も何もないと言わんばかりに……。
「そうですか、あくまで改心しないのですね」
「改心? ふざけるな、不正はともかくなんでこんな自分の娘でないやつを育てねばならない」
「え…………?」
自分を指さしながら吐かれた言葉に何も言い返せず、言われた言葉も理解できない。
(私が、本当の娘じゃない……?)
「お前は知らんだろうが、死んだ母さんの連れ子なんだよ、お前は」
「連れ子……?」
「父上っ! リーズには言わない約束です!」
「知らんっ! お前はほんと邪魔だったんだ。聖女だからとお前の母さんを娶ったのに、すぐに力尽きて聖女としての回復力を失った」
(聖女……? 回復力……まさか私の傷が治るのって……)
「話はそれだけですか?」
「あ?」
「話はそれだけかと言っている」
リーズは自分の出自に驚き言葉も出なかったが、隣にふと冷たい気配を感じて振り向く。
そこには怒髪天を衝く勢いで怒り、拳を握り締めて凄むニコラの姿があった。
「──っ!!」
その目と迫力に圧倒されて先程まで勢いのあった伯爵も、思わず恐怖心を覚えて本能的に怯える。
「私の妻を捨てた挙句、侮辱するとはな」
「はっ! だからお前に何が……っ!!」
すると、部屋にいら騎士兵たちが全員その場に跪き、ニコラのほうに身体を向ける。
その異様な光景に何が起こるのかと、伯爵は怯えて後ずさった。
ニコラは胸元のポケットからバッチを取り出すと、それを騎士服につけた。
「なっ!!!」
それを見て伯爵も驚いて尻餅をつく。
「知らなければよいものを……。私は第一王子ニコラ・ヴィオネだ」
ニコラは堂々とその場で正体を明かす。
「第一、王子だと?」
「ええ、辺境の地へはあなたの不正を暴くために行っておりました。王都からは離れて身分を隠していたのでわからなかったでしょうね」
「まさか、このことは国王も……」
「ええ、全てご存じですよ。ブレスの協力のおかげで早くことが進みました」
(第一王子……様? ニコラが?)
リーズは今まで過ごしてきた優しいニコラと別人のような気がして、呆然としてしまう。
そんな彼女の心境を知ってか知らずか、終わりにしましょうと呟いて宣言した。
「あなたに王命を授けます。フルーリー伯爵、貴殿には当主の座から退いていただき、ここにいるブレス殿を次代のフルーリー伯爵とする! そして、子を捨てた罪は王都の獄にて償っていただきます」
「いやだああああーーーーーー!!!!!」
こうして、フルーリー伯爵は当主の座から降り、獄で処分を待つ身となった──
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