誕生日に捨てられた記憶喪失の伯爵令嬢は、辺境を守る騎士に拾われて最高の幸せを手に入れる

八重

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第二部 婚約者~妃教育編~

第21話 新たな生活の幕開け

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 フルーリー伯爵当主の代替わりから一か月後、リーズとニコラはいつものように朝食のスープとバケットを食べていた。

「おや、これはベリーかい?」
「そうなの、セリアおばあちゃんから畑の一角を借りて植えてたのが育ったの! 色づきもいいし売ってもよかったんだけど、やっぱりニコラに最初に食べてもらいたくて」
「──っ! 全く俺を乗せるのがうまいんだから」
「別に乗せてなんか……!」
「じゃあ、いただこうかな」

 そう言ってベリーを皿から一つ手に取ると、そのままリーズに差し出す。
 どうして自分に差し出されたのかわからず首をかしげていると、その答えとでもいうかのようにニコラを口を開ける。

「食べさせて」
「えっ!!!」

 思わぬ要求を受けてリーズは顔を赤らめて口をパクパクさせる。
 君が口を開けてどうするのさ、と笑いながら自分でベリーをとろうとした。
 しかし、その手をリーズが止めると、意を決したようにふうと息を吐いて、彼の口に無理矢理入れる。

「──っ!!」
「…………どう? 美味しい?」

 ニコラはリーズの意外な行動に虚を突かれ、そのまま手で顔を覆いながら逸らす。
 もぐもぐと口を動かしながらちらりとリーズに視線を向けると、彼女はテーブルに身を乗り出す勢いで反応を伺っている。
 どうやら相当味の感想が気になるらしい。

 果汁が多く瑞々しい朝採れのベリーは、ほのかな酸味に加えて甘みが後からぶわっと広がる。
 ニコラはじっくりとそれを味わった後で、ようやく口を開いた。

「ふふ、美味しいよ。すごく」
「ほんと?! よかった~」

 安心したように満面の笑みを浮かべると、リーズも一口食べる。

「美味しいっ!!」
「でしょ。一年目からうまくできたね」
「ふふ、教えてくれたセリアおばあちゃんにもお礼言わないと」


 春の陽気が気持ちよく、窓を開けると朝の風が心地よい。
 雪の降るこの地方の寒さが嘘のように、暖かくて過ごしやすい。

 想いを伝え合って以降、二人は甘い新婚生活を送っていた。


 朝食を終えて食器の片づけをしていたリーズに、ニコラが話しかける。

「リーズ、食器の片付けありがとう。終わったら少し話があるんだけど、いいかな?」
「え? 大丈夫だけど、ちょっと待ってね」

 手元にあった最後の皿を洗い終えると、手を拭いてエプロンを脱ぎながらテーブルに座る。

「どうしたの?」
「実は王都から要請が一つあったんだ」
「お仕事?」

 フルーリー伯爵の一件後、キュラディア村に事後処理のために残っていたニコラだったが先日国王よりある命令が下った。

「父上から連絡があった。事後処理の確認は王国側も済んだって。それで……」
「それで?」
「正式に王宮へ戻ることが決定した」
「……え?」

 それはニコラがこの村を去るということ。

(もしかして、このまま会えないってことは……)

 リーズの考えていることがわかったのか、ニコラは安心させるように手を握りながら慎重に伝える。

「そこで一つお願いがあるんだ」
「……私にできることなら」

 ニコラはリーズの目を真っ直ぐに見つめて言った。

「リーズに未来の王妃として一緒に来てもらいたいんだ」

 二人の新たな生活がこうして始まろうとしていた──
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