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最終話 私の名前はキャロル

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 トラウド国王はその後、第三者委員会の取り調べによってルーディアム国の植民地化のみならず、私腹を肥やしていたことも明らかになった。
 さらに様々な国の令嬢に手を出しては訴えられており、その賠償金だけで私財を優に超す勢いになっていた。
 そして、トラウド国は国王の失脚によって一時期国の存亡の危機に陥ったが、意外な形で存続しようとしていた。

「ルーディアム国とトラウド国の合併?!」
「ええ、フィル王子から申し出があったのよ、新しい国を作らないかって」
「それは……ルーディアム国がなくなるってこと?」
「名称はね。でも街も国民も守れる。それに、彼から新しい別の申し出もあってね」
「え?」

 ノエルはもう男としての格好を捨ててひらひらのドレスに身を包んでいるが、リオはまだ王子としての格好を続けていた。
 そんなリオは母ノエルから衝撃的事実を告げられる。

「フィル王子から『リオ姫との婚約を認めてほしい』ってきたのよ」
「へ……?!」
「もうそんな仲になってただなんて~!! もうママ知らなかったわ~……なんて、ちょっと嘘よ。フィル王子からは以前からずっと手紙をもらっててね」
「手紙?」

 もうリオの頭の中は新情報でこんがらがっていた。

「トラウド国王がフィル王子にリオを誘惑するように告げてる、それからルーディアム国を乗っ取ろうとしているって」
「え? 知っていたの?!」
「まさかあの場であんな大胆にされると思っていなかったから、自分のわきの甘さに心底腹が立ったわ」
「それに誘惑って」

 その言葉を聞くと、そっとノエルはリオのもとに近寄って両手を握って言った。

「フィル王子はなんて手紙に書いてたと思う?」
「なんでしょう」
「さあ~? ママは知らな~い♪ そこからは自分で聞いてきなさい!!」

 そう言ってノエルはそのまま部屋の外へリオを押しやると、侍女にリオをトラウド国へと連れて行くよう指示した。



◇◆◇



「フィル王子の部屋の前に着いたけど、自分で確認してこいって、もうママったら……わっ!」

 独り言の途中でリオは腕を引かれたと思うと、そのまま部屋に引き込まれる。
 そしてある日の時のように壁に手をついて逃げられなくされると、銀色の髪が美しく光サファイアブルーの瞳がリオを捕らえた。

「フィル王子っ!」
「遅いっ!」

 そう言ってフィルはリオの髪をなでるとゆっくりと口をつける。

「フィル王子っ!?」
「どうだ? 俺の妻になる覚悟はできたか?」
「え、その……急に言われても」
「ずいぶん時間はあったはずだぞ」
「でも私は王子で……」
「ノエル国王から聞いてないか? 合併するから俺が時期国王、そしてリオが時期王妃だ」
「え?!」

 まさか国王まで決まっているとは思わず、目を見開くリオ。

「俺はお前がこの宮殿に最初に来たときから好きだった。あの時からずっと、ずっとお前だけを好きだった。俺の妻になってほしい」

(そんな前からずっと私を見てくれてたの?)

 リオは俯くと次第に顔を赤くしてぼそりと口にする。

「……ロル」
「え?」
「キャロル。私の本当の名前。キャロルって言うの」
「キャロル……お前らしい綺麗な名だ」
「これからもっと呼んでくれる?」
「もちろん」
「わがまま言っちゃうけどいい?」
「ああ、全部受け止める」
「私を一番好きでいてくれる?」
「ああ、死ぬまで愛すよ」

 リオはその言葉に一筋の涙を流しながら、思い切ってフィルの唇に自らの唇を押し当てた。

「──っ!」

「私もフィルが大好き。ずっと一緒に生きていきたい!」

 二人はもう一度お互いの名を呼び、唇を寄せて抱きしめ合った──




【Fin】
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