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第33話 魔族の思惑
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「状況を整理しよう」
古のドラゴンを見送り、僕たちは腰を下ろした。
色々と事が起きたので、一度まとめようと思う。
「まずはこの子、子どもドラゴンくん」
「ぎゃうっ!」
「この子は僕が面倒を見たいんだ」
「ああ、彼もそれを望んでいるだろう」
シルリアは同意するようにうなずいてくれた。
ただ、疑問はあったみたいで。
「“テイム”はできないのか?」
「うん。僕のギフトはスライム限定なんだ」
「そうなのか……聞いたことないギフトだな」
だけど、それでも良いと思っている。
「一度主従関係を結べば、この子は元に戻れないかもしれない。この子は将来ボスになる存在だし、それは良くないかも」
「ふむ。一理あるな」
「僕の仕事は、あくまで立派になるまで面倒を見ることだけだ」
「ぎゃう?」
イマイチ話を理解していなさそうな子どもドラゴンくん。
ならば、ここは僕なりの関係を示しておこうと思う。
「だから僕たちは“友達”だよ」
「ぎゃうー!」
「ははっ、かわいいなあ!」
“友達”には満足したようで、子どもドラゴンくんは抱き着いてくる。
もう少し成長したら押しつぶされそうだな。
でも、呼ぶにはちょっと名前が長いな。
「じゃあ今日から君は、“ドラン”だ!」
「ぎゃらん?」
「ははっ、そうそう!」
「ぎゃらんーっ!」
ドラゴンと呼ぶには、まだ子どもで心許ない。
いつか立派なドラゴンになれるよう願いを込めて、ドランだ。
「……か、かわいい」
ちなみに、シルリアはちらちらとドランを見ていた。
撫でさせてあげた。
そして、次に気になることだ。
「あとは魔族の存在だね」
「ああ。一度撤退したのなら、次は確実に数を増やしてくるだろう。それより魔族の狙いはなんなんだ?」
首を傾げるシルリアに、僕は憶測を話す。
「狙いは多分──“王都の乗っ取り”だ」
「なんだと!?」
「確証はないけど、そう考えれば辻褄が合う」
僕は、王都に来てからの出来事を話した。
まず、エリン様を衰弱死させようと執事に紛れていた、魔族のオクト。
彼の狙いは、エリン様ともう一つ。
『転移門』の設置だったと判明した。
転移門とは、魔族が遠方から行き来できる門のこと。
魔族は、結界やら門やら特有の魔法を複数持つらしい。
長老スライムさんの知識だ。
なぜそう言い切れるかというと、実際に目にしたからだ。
セレティアと王都巡りをして、ギルドに行くまでの数日間。
ヒルナーデ邸、また王都のいくつかの場所で、僕は転移門を発見していた。
「王都にそんな危険なものが! 今すぐに──」
「あ、もう全部壊したから心配しなくていいよ」
「……わかった。もうツッコまんぞ」
すんっと元の姿勢に戻ったシルリアは、続けてたずねてくる。
「ならば、エリン公爵夫人を狙ったのもそれが関係していると?」
「うん。セキュリティ上、話せないけど……」
エリン様は、とある仕掛けをもった指輪をしていた。
仕掛けとは、エリン様が死んだ時に、ヒルナーデ邸の全ての魔力回路が遮断されるというもの。
そうなれば、おそらく転移門も発動しない。
だからこそ、魔族のオクトは徐々に衰弱させて機を狙っていたんだ。
衰弱する裏で準備を進め、侵入と死を同時に行うために。
オクトが「魔族が動き始めた」と言っていたのは、この事だろう。
つまり、エリン様から続く一連の騒動は、全て繋がっていたんだ。
「そこはアケアを信頼しよう。ならば、魔族はいつ来るのだろうか」
「あの時、エリン様の命はあと二週間だと言っていた。そこから逆算すると……」
僕はシルリアにはっきりと伝えた。
「魔族の本襲撃はちょうど三日後」
「三日後だと!」
「王都の転移門は全て壊したから、場所はエスガルド森林のどこかだ」
「……!」
すると、決意した表情でシルリアは立ち上がった。
「すぐにギルドに掛け合おう。アケアの推測を今調査の結果として報告し、冒険者たちに緊急依頼を出す」
「それが良いと思う!」
「そして──」
シルリアはすっと手を出した。
「アケア、本当にありがとう。キミがいなければ襲撃に気づくこともできなかった」
「うん。でもまだ終わっていないよ」
「アケア、キミという奴は……!」
「もちろん」
シルリアとしては、ここまでで十分な働きだったのかも。
だけど、ここまできて終わりとは言わない。
「最後まで手伝うよ」
「……! ありがとう!」
「大げさだよ。僕もエスガルドには感謝しているから」
ここで出会った人たちは守ってみせたいんだ。
「では、帰るぞ」
「うん!」
「ぎゃう!」
こうして、僕たちは本襲撃に備えるべく王都へ帰還するのだった。
★
<三人称視点>
「号外! 号外ー!」
その日、王都のギルドから緊急依頼が要請された。
シルリアとアケアの調査により、魔族の襲撃が迫っていると。
ギルドは人々へ避難を呼びかけ、冒険者には協力を募った。
すると、危険な依頼にもかかわらず、かなりの人数が集まったのだ。
「俺はやるぞ!」
「王都は見捨てねえ!」
「ここが好きだからよお!」
力のある冒険者たちは、次々に名乗りを上げる。
報酬が弾むとはいえ、危険を顧みない姿は立派だ。
その光景に、アケアは目を見開いていた。
「すごい、みんなが団結してる……」
「ああ、みなこの王都を守りたいのだ」
そうして、エスガルド森林を覆う本作戦が立てられることになる。
また、緊急依頼は隣の国にまで届いていた。
ここはフォーロス侯爵家。
アケアが養子として迎え入れられていた家である。
「マルムよ」
「んだよ、親父」
アケアを追い出した父と、その実子マルムだ。
マルムは“祝福の儀”にて【剣聖】を授かっている。
気だるそうに答えるマルムに、父は進言した。
「隣国エスガルドにて緊急依頼が発令された。お前も参加しろ」
「はあ? なんだそりゃ」
「ここで名を上げれば、多大な恩を売ることができる。結果的に我がフォーロス家のさらなる発展につながるのだ」
「それ、俺に何の得があんだよ」
言う事を聞かないマルムに、父は仕方なく譲歩する。
「ならば働きの応じて褒美をくれてやる。領地の一部経営はお前に任せよう」
「ほお、なるほど」
ニヤリとしたマルムはようやく立ち上がった。
自身の愛剣を右手に。
「ついに俺の出番ってか」
こうして、アケアとマルムが交わることになる。
古のドラゴンを見送り、僕たちは腰を下ろした。
色々と事が起きたので、一度まとめようと思う。
「まずはこの子、子どもドラゴンくん」
「ぎゃうっ!」
「この子は僕が面倒を見たいんだ」
「ああ、彼もそれを望んでいるだろう」
シルリアは同意するようにうなずいてくれた。
ただ、疑問はあったみたいで。
「“テイム”はできないのか?」
「うん。僕のギフトはスライム限定なんだ」
「そうなのか……聞いたことないギフトだな」
だけど、それでも良いと思っている。
「一度主従関係を結べば、この子は元に戻れないかもしれない。この子は将来ボスになる存在だし、それは良くないかも」
「ふむ。一理あるな」
「僕の仕事は、あくまで立派になるまで面倒を見ることだけだ」
「ぎゃう?」
イマイチ話を理解していなさそうな子どもドラゴンくん。
ならば、ここは僕なりの関係を示しておこうと思う。
「だから僕たちは“友達”だよ」
「ぎゃうー!」
「ははっ、かわいいなあ!」
“友達”には満足したようで、子どもドラゴンくんは抱き着いてくる。
もう少し成長したら押しつぶされそうだな。
でも、呼ぶにはちょっと名前が長いな。
「じゃあ今日から君は、“ドラン”だ!」
「ぎゃらん?」
「ははっ、そうそう!」
「ぎゃらんーっ!」
ドラゴンと呼ぶには、まだ子どもで心許ない。
いつか立派なドラゴンになれるよう願いを込めて、ドランだ。
「……か、かわいい」
ちなみに、シルリアはちらちらとドランを見ていた。
撫でさせてあげた。
そして、次に気になることだ。
「あとは魔族の存在だね」
「ああ。一度撤退したのなら、次は確実に数を増やしてくるだろう。それより魔族の狙いはなんなんだ?」
首を傾げるシルリアに、僕は憶測を話す。
「狙いは多分──“王都の乗っ取り”だ」
「なんだと!?」
「確証はないけど、そう考えれば辻褄が合う」
僕は、王都に来てからの出来事を話した。
まず、エリン様を衰弱死させようと執事に紛れていた、魔族のオクト。
彼の狙いは、エリン様ともう一つ。
『転移門』の設置だったと判明した。
転移門とは、魔族が遠方から行き来できる門のこと。
魔族は、結界やら門やら特有の魔法を複数持つらしい。
長老スライムさんの知識だ。
なぜそう言い切れるかというと、実際に目にしたからだ。
セレティアと王都巡りをして、ギルドに行くまでの数日間。
ヒルナーデ邸、また王都のいくつかの場所で、僕は転移門を発見していた。
「王都にそんな危険なものが! 今すぐに──」
「あ、もう全部壊したから心配しなくていいよ」
「……わかった。もうツッコまんぞ」
すんっと元の姿勢に戻ったシルリアは、続けてたずねてくる。
「ならば、エリン公爵夫人を狙ったのもそれが関係していると?」
「うん。セキュリティ上、話せないけど……」
エリン様は、とある仕掛けをもった指輪をしていた。
仕掛けとは、エリン様が死んだ時に、ヒルナーデ邸の全ての魔力回路が遮断されるというもの。
そうなれば、おそらく転移門も発動しない。
だからこそ、魔族のオクトは徐々に衰弱させて機を狙っていたんだ。
衰弱する裏で準備を進め、侵入と死を同時に行うために。
オクトが「魔族が動き始めた」と言っていたのは、この事だろう。
つまり、エリン様から続く一連の騒動は、全て繋がっていたんだ。
「そこはアケアを信頼しよう。ならば、魔族はいつ来るのだろうか」
「あの時、エリン様の命はあと二週間だと言っていた。そこから逆算すると……」
僕はシルリアにはっきりと伝えた。
「魔族の本襲撃はちょうど三日後」
「三日後だと!」
「王都の転移門は全て壊したから、場所はエスガルド森林のどこかだ」
「……!」
すると、決意した表情でシルリアは立ち上がった。
「すぐにギルドに掛け合おう。アケアの推測を今調査の結果として報告し、冒険者たちに緊急依頼を出す」
「それが良いと思う!」
「そして──」
シルリアはすっと手を出した。
「アケア、本当にありがとう。キミがいなければ襲撃に気づくこともできなかった」
「うん。でもまだ終わっていないよ」
「アケア、キミという奴は……!」
「もちろん」
シルリアとしては、ここまでで十分な働きだったのかも。
だけど、ここまできて終わりとは言わない。
「最後まで手伝うよ」
「……! ありがとう!」
「大げさだよ。僕もエスガルドには感謝しているから」
ここで出会った人たちは守ってみせたいんだ。
「では、帰るぞ」
「うん!」
「ぎゃう!」
こうして、僕たちは本襲撃に備えるべく王都へ帰還するのだった。
★
<三人称視点>
「号外! 号外ー!」
その日、王都のギルドから緊急依頼が要請された。
シルリアとアケアの調査により、魔族の襲撃が迫っていると。
ギルドは人々へ避難を呼びかけ、冒険者には協力を募った。
すると、危険な依頼にもかかわらず、かなりの人数が集まったのだ。
「俺はやるぞ!」
「王都は見捨てねえ!」
「ここが好きだからよお!」
力のある冒険者たちは、次々に名乗りを上げる。
報酬が弾むとはいえ、危険を顧みない姿は立派だ。
その光景に、アケアは目を見開いていた。
「すごい、みんなが団結してる……」
「ああ、みなこの王都を守りたいのだ」
そうして、エスガルド森林を覆う本作戦が立てられることになる。
また、緊急依頼は隣の国にまで届いていた。
ここはフォーロス侯爵家。
アケアが養子として迎え入れられていた家である。
「マルムよ」
「んだよ、親父」
アケアを追い出した父と、その実子マルムだ。
マルムは“祝福の儀”にて【剣聖】を授かっている。
気だるそうに答えるマルムに、父は進言した。
「隣国エスガルドにて緊急依頼が発令された。お前も参加しろ」
「はあ? なんだそりゃ」
「ここで名を上げれば、多大な恩を売ることができる。結果的に我がフォーロス家のさらなる発展につながるのだ」
「それ、俺に何の得があんだよ」
言う事を聞かないマルムに、父は仕方なく譲歩する。
「ならば働きの応じて褒美をくれてやる。領地の一部経営はお前に任せよう」
「ほお、なるほど」
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