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第47話 知りたい気持ち

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 「やってやったぜ!」

 筋肉質の男が声を上げる。
 男の周りには、同じくガハハと笑っている者たちがいた。

「こりゃ相当な物資だな!」
「売れる物もけっこうあるぜ?」
「ああ、長らく待った機会があったなあ!」

 彼らは、ガレアの仲間たち。
 これから共に街を造っていくはずだった者たちだ。

「にしても、ガレアあいつもバカだよなあ」
「ほんと、ほんと」
「探索者なんか人をだましてなんぼよ」

 しかし、この様子からも分かる通り、彼らはガレアを裏切った。
 というより、最初から裏切るつもりだったようにも感じられる。

 そして──

「……っ」

 そんな男達を、物陰からのぞいている少女がいた。
 コートで身を隠してはいるが、チラリと見える中の格好は派手そうだ。
 レリアの旧友、チェリーである。

 どうやら彼女と男達は仲間ではないらしい。

「……ふぅぅ」
 
 チェリーは静かに、だが頻繫ひんぱんに呼吸を整えている。
 慣れない追跡に緊張しているようだ。

(こんなの私の領分じゃないのよ……!) 

 隠密に関して、チェリーは素人同然だ。
 ここまでやり過ごせているのは、共に何度か探索をしていた者を見ていたからだ。

(こんな感じだったわよね、レリア……)

 レリアは、チェリーにとっても唯一の存在だった。
 その理由は──彼女の生きるすべにある。

 チェリーには心から信頼できる仲間がいない。
 その容姿を以て男を誘い、囲われ、みつがれたところで逃げる。
 これが彼女のやり方だ。

 そんなチェリーが、唯一本心を打ち明けたことあるのがレリアだ。
 チェリーは目的のため・・・・、なんとしても最下層に行かなければならない。
 彼女は、目的のためならば手段を選ばないレリアに、どこか親近感を抱いていたのだ。

(あなたは、変わってしまったみたいだけどね)

 だが、昨日の路地裏でことを思い出し、チェリーはぐっと拳を握る。

 まさか断られるとは思っていなかった。
 その上、レリアに“真の仲間”と呼べる者ができていたなんて信じられなかったのだ。

 しかし、レリアは表情は間違いなく本心だった。
 自分にすら浮かべることのなかったその顔を見て、チェリーは多少なりともショックを受けていた。

(あなたの誰も信用していないところにあこがれていたのに……)

 だからこそ、チェリーは盗みを働かなかった・・・・・・

 レリアは何を思って、どうやって信頼できる仲間を得たのか。
 それをどうしても知りたくなったのだ。

 そうして計画を止め、ダンジョンに戻る選択を取ろうとしていた。
 そこで見てしまったのが、男達の犯行というわけだ。

(レリアは私がやったと思ってるのかな。思ってるよね)

 最後に言葉を交わした時、レリアは自分のことを見ていなかった。
 愛想をつかれて別れたと、チェリーは思っていたのだ。

 それでも、一応痕跡こんせきを残しておいた。
 かつて二人で作った“SOS”の印を。

(気づいてくれたら嬉しいな)

 ──しかし、チェリーは考え事をしすぎた。

「おい」
「……ッ!」

 後ろから近づいてくる男に気づかなかったのだ。
 体格の差もあり、そのまま男にひょいっと持ち上げられてしまう。

「ちょっ! 放してよ!」
「見られたからにはタダじゃ済ませられねえなあ」

 逃げることに関しては長けているチェリーだが、戦闘面では攻略組に遠く及ばない。
 必死に抵抗するチェリーだが、やはり敵うはずもなく。

「おい、なんか顔が良い女に覗かれてたぜ」
「まじかよ、そりゃ口止めしないとな」
「ついでにやっちまうか」

 犯行をはたらいたばかりの男達は、完全にハイになってしまっている。
 その下種げすな顔は、何を考えているか容易に想像がついた。

「ふざけんな! このっ!」
「おー、非力だね。嬢ちゃん」
「くっ……!」

 ただでさえ敵わない上、相手は大男が複数人。
 チェリーは歯を食いしばりながらも、後悔の念を抱いていた。

(これが今までの罰だっていうのね……)

 一番最初に人を騙したのはいつだったか。
 それすら思い出せないほど、チェリーはこのスタイルで生きてきた。
 ならばもう諦めるしかないか──と考えた時。

「やっぱ、アンタじゃなかったか」
「……!」

 後方から聞き馴染みのある声が聞こえる。

「ほんと、ケンカは弱いわよね」
「レリア……!?」

 そこには、愛想をつかれたと思っていたレリアがいた。
 チェリーが残した痕跡はしっかりと伝わっていたのだ。

 レリアがいるということは、他にも人がいる。

「こいつらね」
「見つけたよ」
「わふぅ」
「ぼぉ」

 リザ、エアル、ラフィ、フレイ、そして──

「返してもらうぞ、お前達」
「「「「……!」」」

 静かに怒ったガレアだ。
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