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第一章 胎動編
壱ノ詩 ~喪失の詩~ ???
しおりを挟む目の前にある心電図モニターの波形をぼんやりと見ながら目の前で横たわる少女を眺めていた。
ピッ……ピッ……ピッ……
心電図モニターの波形と音が少女がまだ生きている事を教えてくれる。ゆっくりとこちらへと伸ばされる少女の手を両手の平で包む。
冷たい……氷を触るより尚も……
ふと包帯に覆われた少女の顔を見ると目の部分に、いつの間にか涙と血が混ざったものが滲んできている。
「(ザザッ…)!良かった気がついたんだね。そのまま死んじゃうと思った。」
「……お………え………ゃ……た……け……よ……さ……い………わい……よ……」
掠れ最早元の面影もない声で何かを呟く。
「(ザザッ…)どうしたの?」
「……わ…たし……し……の……か……な……」
「え?」
少女の口から信じられない事が聞こえる。
「わ……かる……んだ……私…もう……すぐ……死………ぬん…だっ……て」
「いつもの(ザザッ…)らしくないじゃん!大丈夫だからね……」
少女の口元が微かに緩むも、すぐに苦痛に歪み、両手に包まれた手が震える。
「(ザザッ…)!」
「明美……お願い……助け………て…………」
少女は最後の力を出し切ったかのように握る力が抜けトサッとベット上に落ちる。
近くから心停止を告げるアラームが響く。
何も考えられない。
顔に影を落とし立ち尽くす。
ふと何かが全身を駆け巡る。
感情の様だ。
怒り……?悲しみ……?憎悪……?
そのいずれかなのか、全てなのか、どれでもないのか、分からなかった。
少しすると扉が開かれ看護師や医者が入って来る。看護師の1人が肩に触れ、顔を覗き込んでくる。
そして顔色を青くし怖気付く。
再び何かが駆け巡る。
自分にはない自由さと、強さを持った憧れの「(ザザッ…)」だった……
自分はその(ザザッ…)がこんな死を迎えてしまったことに涙を流すことすら忘れて呆然としながら……
ある1つの決意をした。
それが破滅への片道切符だとはまだ知らずに……
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