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序章
壱話 【村】
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岩山をくり抜いて作られた薄暗く狭い部屋……
天井近くに開けられた穴から見える空……
そして木で組まれた格子から見える生い茂った草木と僅かに見える遠い山……
それが私が知る世界の全てだった。
いや……もう少しだけ私はこの世界を知っている……
私の最も古い記憶は私含めた村人全員がボロ布を着て今にも餓死しそうなほど痩せ細っていた。農業も不作続きだったのだろう。
食事と言えばほぼ水に等しいスープに野菜くず、いやそれはまだあるだけマシ……それすら無い日には生え揃わぬ乳歯で草花を食べ、木の根を歯茎から血を滲ませながら齧り、齢3歳にして土まみれになりながら虫や小動物を捕まえてそのまま齧った。
不味い、喉の奥から酸っぱい物が上がってくる。でも食べないと死んでしまう。
私は幼いながら本能的に「死」を感じていた。
私の髪は白かった。肌も他の人と比べて少し蒼白だった。
村でも同じ子供達、いや大人達にさえ化け物と呼ばれ石を投げられた。両親もそれを見ても何も言わなかった。いや言えなかったのかもしれない。遠くから冷たい目で私を見ている事が多かった。
しかしそんな私に転機……いや更なる絶望が訪れた。
齢4歳……山が色とりどりに染まる秋の頃、私の居た村に旅の僧侶が現れた。傷だらけで手製の小さな籠に栗や山菜を入れ戻ってきた私を僧侶は一目見て仏様の使いと崇めた。言葉を知らない私は僧侶が言う言葉は理解できなかったが何故か無意識に一筋の涙が頬を伝った。
僧侶は村で数日過ごし、その間に私に語学と仏教について、村の外の世界について教えてくれた。僧侶が村を出る日、僧侶は私を連れて行くと申し、村人の反対を押し切り私の手を引いて村を出た。
村を出て数十分、両側が切り立った壁に挟まれた細い道、いや元々存在した巨岩が割れてその境目が道となったのだろう。大人子供が横並びにギリギリ通れる道幅。
中間地点あたりでパラパラと小石が降ってくる。上を眺めた私の視界には黒い影が壁の上からせり出してくる。程なくしてその影は落下、僧侶の頭に直撃しゴパンッという音を響かせ、まるでスイカを地面に叩きつけたかのように割れる。
落ちてきた岩に頭を割られた、僧侶は少しの間、手足をピクピクと痙攣させやがて動かなくなる。
その光景を見て私はまたか……と思った。
以前にも私を村から連れ出そうとした若者がここで頭を割られ死んだ。
僧侶の遺体を見ても特に何も感じなかった。既に私の心は壊れていたのだろう。
私は遅れて走ってきた村人に手を引かれ村に連れ戻された。
そして元々罪人を閉じ止める為に作られた洞窟に連れて来られた。洞窟の入口には以前なかった簡易的な祭壇が作られており、何かを祀る風躰だった。
私は手を引かれ洞窟の奥へ進む。
奥には木で組まれた格子があり、私をその中に入れると木製の閂がはめられる。
大人達は去り際一言
「弥勒様我々をお救下さい。」
それが私……いや朕の二千年を超える宿業の始まりでした。
天井近くに開けられた穴から見える空……
そして木で組まれた格子から見える生い茂った草木と僅かに見える遠い山……
それが私が知る世界の全てだった。
いや……もう少しだけ私はこの世界を知っている……
私の最も古い記憶は私含めた村人全員がボロ布を着て今にも餓死しそうなほど痩せ細っていた。農業も不作続きだったのだろう。
食事と言えばほぼ水に等しいスープに野菜くず、いやそれはまだあるだけマシ……それすら無い日には生え揃わぬ乳歯で草花を食べ、木の根を歯茎から血を滲ませながら齧り、齢3歳にして土まみれになりながら虫や小動物を捕まえてそのまま齧った。
不味い、喉の奥から酸っぱい物が上がってくる。でも食べないと死んでしまう。
私は幼いながら本能的に「死」を感じていた。
私の髪は白かった。肌も他の人と比べて少し蒼白だった。
村でも同じ子供達、いや大人達にさえ化け物と呼ばれ石を投げられた。両親もそれを見ても何も言わなかった。いや言えなかったのかもしれない。遠くから冷たい目で私を見ている事が多かった。
しかしそんな私に転機……いや更なる絶望が訪れた。
齢4歳……山が色とりどりに染まる秋の頃、私の居た村に旅の僧侶が現れた。傷だらけで手製の小さな籠に栗や山菜を入れ戻ってきた私を僧侶は一目見て仏様の使いと崇めた。言葉を知らない私は僧侶が言う言葉は理解できなかったが何故か無意識に一筋の涙が頬を伝った。
僧侶は村で数日過ごし、その間に私に語学と仏教について、村の外の世界について教えてくれた。僧侶が村を出る日、僧侶は私を連れて行くと申し、村人の反対を押し切り私の手を引いて村を出た。
村を出て数十分、両側が切り立った壁に挟まれた細い道、いや元々存在した巨岩が割れてその境目が道となったのだろう。大人子供が横並びにギリギリ通れる道幅。
中間地点あたりでパラパラと小石が降ってくる。上を眺めた私の視界には黒い影が壁の上からせり出してくる。程なくしてその影は落下、僧侶の頭に直撃しゴパンッという音を響かせ、まるでスイカを地面に叩きつけたかのように割れる。
落ちてきた岩に頭を割られた、僧侶は少しの間、手足をピクピクと痙攣させやがて動かなくなる。
その光景を見て私はまたか……と思った。
以前にも私を村から連れ出そうとした若者がここで頭を割られ死んだ。
僧侶の遺体を見ても特に何も感じなかった。既に私の心は壊れていたのだろう。
私は遅れて走ってきた村人に手を引かれ村に連れ戻された。
そして元々罪人を閉じ止める為に作られた洞窟に連れて来られた。洞窟の入口には以前なかった簡易的な祭壇が作られており、何かを祀る風躰だった。
私は手を引かれ洞窟の奥へ進む。
奥には木で組まれた格子があり、私をその中に入れると木製の閂がはめられる。
大人達は去り際一言
「弥勒様我々をお救下さい。」
それが私……いや朕の二千年を超える宿業の始まりでした。
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