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…………  



結果はまぁ、分かってはいたけれども主人公の圧勝だった。
戦闘内容を話すまでもない。
相手が雑魚だった、というのもあるけれど、やはり戦いに手慣れている感じがする。
できれば敵に回したく無いな……。

「大丈夫?怪我はない?」

大剣をしまい、主人公が戻ってくる。

優しいし、なんなんだコイツ。
イケメンかよ、あ、イケメンか。
主人公を推すファンの気持ちが少し分かった。
……それでも私はシルヴェちゃんを推すけども。

「おーい?」

「……はっ!だ、大丈夫です。ありがとうございます」

慌ててぺこりと頭を下げる。

「ここは危ないからね。安全なところまでお兄さんが送ってあげるよ」

少ししゃがんで笑う主人公。
カッコいいがちょっと待て、気が動転していてさっきまで気づかなかったけど私は、メイはそこまで幼くないぞ。

「気持ちはありがたいんですが……子供扱いはやめてください!」

「え、でも君まだ小さ……」

言いかけた主人公をキッと睨みつける。

「私は(確か設定では)16歳!(この世界では)れっきとした大人、です!」

「……え?!マジか……」

「失礼です!謝ってください!」

私は頬を膨らました。
主人公に殺されるかもしれないため、今後の為にも媚を売っておくべきか、少し悩んだが、辞めた。

今のメイの身長は145センチに届くかどうか、といった感じでかなり小柄である。

成人したばかりだし、間違えられても仕方がないのだが、前世でも小柄な私にとって身長はコンプレックスであり、譲れない。

「……すまない」

「気をつけてくださいね」

「ああ……」

主人公がしゅん、と下を向く。
いやー、イケメンはどんな姿でも絵になる……って違う違う。
私は何をしてたんだっけ、落ち着け。

……そうだ、シルヴェちゃん最推しを探してたんだ。

この状態で鉢合わせしてしまうとマズイ気がする。
安全なところまで送るとか言ってたけど、どう断ろうかな。
成人しているから一人で大丈夫ってことには……

「だが女性一人で避難するには危険すぎる。護衛をさせてくれないか」

デスヨネー!
イケメンに優しくされると嬉しいけれど、その優しさはいらないんだよな。
ならば。

「……あの、私実は人を探してまして……」

「なら、一緒に探すよ。特徴を教えてくれる?」

だから優しすぎるってば!
どんだけお人好しなんだよ。
いや……ゲーム内ではサブクエストとかいって村人の犬の散歩や迷子探し、お使い等々やる主人公だったからこれが普通なのか。

「えーっと、えーっと、でもしゅじ……は他にもやることがあるのでは」

「ここで会ったのも何かの縁だし、他のことは俺の仲間が代わりにやってくれるさ。目の前にいる人が困っているのに助けないで、何が勇者だ」

ごめんなさい、あなたのその気遣いのせいで目の前にいる私、困ってます。
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