納金は守るべく

心猫飴

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夜会の日

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とうとう王太子主催の夜会が開かれる時がやってきた。

時間は昼頃に始まり、夜更け当たりに終わるらしい。

マノリアは部屋から抜け出し、こっそりと物陰に隠れ夜会へ出発する馬車を確認した。

馬車はこれまた豪華で、カルシュブァ家の家紋が刻まれたものだった。


「あぁ、やっと王太子様を見れるのね!!」


豪華過ぎるドレスにギラギラ光る宝石の飾り、目元が濃すぎる化粧をした女は、まるで幼い少女のように騒ぎだした。


それを見た小太りの男はやんわりと宥める。


「シェリア、落ち着くんだ。折角の美人が崩れるぞ?」


それを聞いた女はまたキャイキャイと騒ぎ出した。


(……美人?あれが?)

(目元が濃すぎる…)

(そもそもそのドレス、私の稼いだお金で買ったんだから、もうちょっとセンス良いものを買ってよ……)


ため息を付きたいマノリアはイラつきをぐっと抑えた。

こんな馬鹿馬鹿しい事で怒って計画を無下にしたくない。

マノリアはそう考え、その場を後にした。





「今日もあのガキの食事持っていないとダメなの~?」

「分かるわ~、面倒よね」



戻ってきた自室とも言えない物置部屋で、マノリアはひっそりと身を隠していた。

しかし、ここから出るために薄い布一枚では心許ない。ボロボロだが、しっかりと上着を羽織り、金銭をいれるためのバッグを肩に掛けた。


準備を終えたマノリアは扉を確認する。

いつも通り、食事を持ってくるあのメイド二人が部屋を確認した時が魔法の掛け時。不意を狙ってあの魔法を打つ。


ガチャッ



………扉が開かれた


「……、あれ?」

「どうしたのよ」


「あいつがいな……い」



ひらり……



「え?」

「……なんでもないわ、気の所為だったみたい」

「そう?……ま、いいわ、早く行きましょ」

「そうね、早くこんな煙たい場所から出たいわ」


横を通り過ぎたマノリアを気にする事はなく、二人のメイドはまた世間話をしながら帰っていった。


(これで良し)


マノリアは不審がる訳でもないメイド二人を見届けた後、金庫がある部屋の近くへ行った。

マノリアの部屋から遠いが、物音を建てずにこっそりと近付き、こっそりと遠目で見る。


金庫がある部屋は特に魔法が掛かっている訳でもなく開いた扉からは部屋の光が漏れていた。


「……………よし、しっかり金はあるな」


ここにはこの金庫を守る男が居る。その金庫番は常に金庫を守るべく近くに居るはずなのだが………

金庫番をしている男は金庫内のお金を確認をした後、面倒くさそうにこの部屋から出ていった。

サボりの為だろう。手には煙草が握られていた。


それを確認したマノリアは男とすれ違うように部屋へ入った。

勿論魔法を掛けることを忘れずに。


部屋に入ったマノリアはさっそく金庫に手を伸ばした。

この金庫はダイヤル式で、あっさりと金庫の扉を開く。

中に入っている金銭を確認した後、マノリアはそのお金をバッグヘ詰め込んだ。


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