珈琲喫茶

心猫飴

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コーヒーの夢

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柊木東はとてものんびり屋だった。

友人にはよく呑気過ぎるとからかわれ、彼女からは刺激が足りないとフラレた。

彼はゴリラのような握力とガタイの良さから「まさしくゴリラ」 まさゴリさんと呼ばれた。

しかし彼にも穏やかな愛があった。

いざそれを伝える時に照れて無表情になる悪癖がなければ完璧だった。


そんなまさゴリさんこと東はある日衝撃的な出会いを果たすことになる。

そう、それはまさしくプロが入れた至高のコーヒーだった。

東は普段の穏やさなどふっとばしてプロに詰め寄った。
「こんな美味しいコーヒーはどうやって作っているのか」


プロはコーヒーの入れ方を教えた。そしてこう答えたのだ。
「あとはコーヒーを極める愛情さえあればそれを極めるのみ……!」

東は感動した。
地球を破って裏世界に到達しかねない程に。

そして東はネット知識や実物を見漁った。そしてそれを実際に経験するのみ。

しかし、そこで東は一度挫折を味わう。

「お金がッ!!足りない……!!」

東は学生である。だから圧倒的にお金が足りなかった。
それから東はいつの日か本場へゆくことを夢見てバイトに明け暮れた。


けれど……、やはり無理は祟るものか。


東は不思議な世界に居る夢を見ることになるのだ。
何度も何度も。

お陰で寝た気がしない東だった。


それから東はその夢に対して対策をねった。

1つ目
しっかり休息を取る。
……寝不足が解消されたが夢は見た。

2つ目
逆に寝ないでいる。
……寝不足になって電車で寝落ちした。もっと酷い夢を見た。

3つ目
スピリチュアルなものに頼ってみる。
……無意味だった。無駄使いをしたと母に叱られた。


…………。
すべてダメだった。

東は机の上に肘を置き、その手のひらを重ねた所に頭を置いた。

彼はちょっとブチギレかけていた。それから絶望の狭間にいた。

これがただの夢だったら東は気にしていなかった。

けれどその夢は悪質で、東の目の前をコーヒーが溢れて行くのだ。
憧れのコーヒー淹れをして、それを飲もうとした瞬間に。

初めてこの夢を見た東は大変ショックを受け、初めてバイト欠席の連絡をした。
冷や汗をかき、夜になる頃にようやく意識が戻ったほどである。

そうして東は考えた。
授業を受けている最中にも。


そしてとうとう最終手段を取ることにした。


それは誰もが思いつくようなこと。
そう、その夢について思い出す、もしくはその夢の中で探索してみることを。

不思議と東はこのことについて出来なくは無いと思っていた。

直感だが、何度もこの夢を見た東が言うのだ、間違いないだろう。

けれど東はコーヒーの魅力に、そしてコーヒーが消えてゆく恐怖に耐えきれるのだろうか。

これぞまさしく「神のみぞ知る」ことだろう……。

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