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meishino

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30 たまには妬かせたい

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 帝都に着くと、まずはホテルに荷物を置き、それからルミネラ城へ訪れた。


 目的は、ヴァルガとチェイスと具体的な作戦を立てる為だ。……とは言っても、セクターがどのような場所なのか分からないので、現地を見て判断するしかない。


 ヴァルガの執務室のモニターに、ジェーンがタッチペンで話し合いの概要を書いてから、要約をした。


「セクターへの入り口は、帝国研究所にあります。その何処にあるかはまだ判明しておりませんが、マテオのデータカードの情報によると、魔力放出区域と指定してあります。彼らが探してその場所には無かったようですが、もう一度探してみても良いかもしれません。」


「うん、そうだね」


 今日は貴公子のような格好のチェイスが壁に寄りかかり、腕を組みながらモニターを見て、言った。


「情報はダミーだったとは言え、その場所を指定したのは何か理由がありそうだ。細かく捜索すれば、手がかりがあるかもしれない。」


 机に座っているのはヴァルガだ。


「ならばその周辺を重点的に探そう。セレスティウムがセクターにあれば情報を入手し、量産が出来る。それには帝国研究所とソーライ研究所に協力をしてもらう。セレスティウム自体が見つかったらそれをルーペルトに持たせて、ベルンハルトに届けてもらう。問題はヴァレンタイン教官だ。彼女が生きていたなんてな……。」


「うん、」私は頷いた。「私も驚いたよ。彼女は私に特許を譲ると言っていたけど、どうなんだろう、罠のようにも思える。」


「兎に角、行ってみるしかない。」


 ルーがソファから立ち上がって、皆に言った。


「ベルンハルト様も徐々に全身が黒いヒビに覆われてきている、絶対にセレスティウムを見つける。本当は今からでも行きたい。でも、週末の方がいいんだろ?」


 それにはジェーンが答えた。


「はい。週末でしたら帝国研究所の職員の数が少ない。彼らがセレスティウムのことを嗅ぎ付いて、余計な埃払いをする羽目になるのは、避けたい。乗り込むのなら、明日と明後日です。この二日間に、なんとしてもセクターR1に乗り込みましょう。」


 皆が一斉に頷いた。チェイスが挙手をした。


「そうそう、当時は僕とジェーン、それからリンとケイトの待機組は、このヴァルガ騎士団長の執務室でオペレーターをする。セクターにロックがかかっていても、僕とジェーンが力になる。システム系で何か助けて欲しい時は、遠慮なく通信してくれ。」


「それはありがたい。」クラースさんが言った。「ジェーンにチェイスか、頼もしいな。システムについてはジェーン達に任せるとして、あとは現地がどうなっているかだな。地下通路だから、もしかしたら地下にセクターがあるのかもしれない。あまり地下深すぎると、瘴気があるかもしれないから、それなりの装備が必要だな。」


 ヴァルガが立ち上がった。


「なら明日は、騎士の装備を貸そう。一応防具と、それから念のため、戦闘用のマスクだ。剣も必要なら貸すが……おまえらには必要ないか。はは。」


 皆の間に笑いが広がった。確かにそれぞれ、自分の武器を持っている。私だって、ジェーンに光の大剣を解除してもらった。


 これで何かあったら……ヴァルガ達を守れる。何だかんだ言って、私はやはり、守りたい気持ちで力を発揮できる人間なのだ。


「よし!」チェイスが手をパンと叩いた。「じゃあ明日の朝七時に、突入班は帝国研究所に、オペレート班はこの執務室に集合ってことで良いね?」


「ああ!」「承知」「構いません」と、皆が一斉に答えた。謎の多いセクターだけど、皆で突入するのなら怖くない。


「やるぞクラース!」「俺が見つけるのだ先だがな!」「何!?」と、やりあっている彼らを見て、私は自然と笑顔になった。


 会議はそれで終わり、私達はその後、ヴァルガから騎士の装備を受け取り、ホテルへと向かうことになった。


 あとは明日を迎えるだけだ。私は受け取ったばかりの、新品の兜を眺めた。これはルミネラ皇帝の時と同じデザインだった。一般兵の兜で、懐かしかった。重みだって、懐かしい。


 それらを簡易的なナップサックに入れて背負い、吹き抜けの階段を、ジェーンの後について降りていると、手すりに違和感を感じた。見れば手すりが欠けていた。


 あの時の戦いで、銃弾がここに当たったのだろう。階段下は、チェイスが血塗れで倒れていた場所だ。その場所を、こうして平和な気分で歩けると思うと、私は全てに感謝した。


「キルディア、ちょっと良いかな?」


 私は振り返った。すると階段上の壁横からチェイスが顔を覗かせていた。私は歩みを止めて、皆のことを見た。誰もこちらに気付いておらず、ワイワイ話しながら、クラースさんを先頭に、城の外へと歩いて行っている。


 ジェーンとリンは二人とも城内は初めてだから、観光に来たというテンションで盛り上がっていた……。


 まあ良いか、私は階段をまた上がって、チェイスへと近づいた。彼は少し頬が赤くて、照れた様子で前髪をかき上げているが、彼の背後には真顔の護衛が二人居る。ユークの港で見たのと、同じ騎士だった。私はチェイスに聞いた。


「どうしたの?……でしょうか?」


 危ない危ない、ついタメ口になりそうだった。


「あ、ああ!良いんだ、そんな良いから、砕けた話し方をしてよ……ちょっとさ、ほら、ホテルで寝るまで、まだ時間があるでしょ?だから城の中を散歩しない?」


 私はチラッと階段下を見た。ビクッとしてしまった。リンと先に外に向かったと思っていたけど、不満顔のジェーンが腕を組んで、私のことをじっと見つめて立っていたのだ……。


 チェイスは壁際にいるので、彼からだと私が誰と話しているのかは見えないはずだけど……。私はひきつり笑いをしながら、チェイスに答えた。


「あーでも、久々の帝都だから、ちょっとジェーンと歩こうと思っていたの。ホテルの中にも売店とかあるし、お土産のマグネットでも買おうと思ってて……。」


「ええ?マグネット?それならすぐに買えるでしょ?僕と歩こう?ジェーンは君を放って、リンと観光気分で歩いて行っちゃったでしょ?キルディアが可哀想だ。」


 それは先程までの話だ。現在彼は、階段を一段一段ゆっくりと登ってきている。私は慌てて、チェイスに言った。


「いやいや、まだここにいるよ?だからまた今度……あっ!」


「いいから!来てよ!護衛兵、あとは宜しく!」


「はっ!」


 なんとチェイスが私の腕を引いて、走り出した。振り解くこともできるが、チェイスが掴んでいるのは私のナイトアームの方だったので、あまり無理に抵抗すると彼が怪我しそうで、迷った。


 振り返るとジェーンが「キルディア!」と叫びながら、チェイスの護衛兵に両脇を抱えられていた。


 何だか、私がお姫様でジェーンが盗賊で、二人は恋に落ちたけど、世間が許さなくて……みたいな想像をしているうちに、角を曲がり、チェイスはバタバタと階段を上がり始めた。


 何処まで連れて行こうというのか?私は度々「離して」と言ったが、「嫌だ。済まないが、ここでこの手を離したら、もう二度と無理な気がするんだ」と、返された。


 まあ話がしたいだけなんだろうと、私は取り敢えず付いて行った。ジェーンだって気を引きたくてリンとわざと仲良くする。私だって、そうしてみたい。


 彼にも嫉妬してほしい。そんな幼稚な考えで、私はチェイスについて行った。


 皇室の前まで着くと、ドアの両サイドに騎士が不動で立っていた。チェイスはゼエゼエと呼吸を繰り返していて、私は彼を見守った。


 ウォッフォンが震えた。ジェーンからの着信だった。私がそれに出ようとすると、チェイスがまた私の腕を掴んで、皇室の中へと入った。


 ネビリスの時とは違い、豪華な銅像や煌びやかな装飾は無く、観葉植物と本棚の部屋だった。壁には様々な賞状や、何かの設計図、それから大きな植物の絵画が飾られていた。


 そのフレームが金だったのは、彼が皇帝だからなのだろうけど、それ以外は、皇室とは思えないほどに、質素だった。私は微笑んだ。


「本当に素敵な人が皇帝なのだと思った。チェイスがこの城にいる限り、民は幸福感を胸に生活をすることが出来る。」


「そ、そうかな。」チェイスは前屈みで膝に手をついて、呼吸を整えている。「っはぁ……キルディアに褒められたのだから、僕は自信を持つよ。ふふ。」


 じゃあそう言うことで、と部屋を出ようとすると、チェイスが「あああああ!」と威嚇するように叫んできた。出るなと言う意味なのだろうけど、もっと他にやりようは無かったのか……。


 その叫び声で心配したのか、ドアが少し開いて、ドアの前に立っていた騎士が顔を覗かせた。チェイスはドアまで行くと「いいか?もう二度と、何があってもドアを開けるな。」と怖いセリフを騎士に放ってから、ドアを閉めた。


 素敵な皇帝と称すのは時期早々だったかもしれない……。やっぱり無理矢理、手を振り払うべきだったかな……。私はちょっと後悔した。


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