聖女ルート(♂)は召喚された!

濃子

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聖女への道(ルート)編

第28話 ミント王女とその一味

「なんだよ」
 そんなに驚くことあるか?
「王女殿下とその一味です!」
「ーーなんだよ、どっかの海賊か?」
「いえ……、王女殿下とその御学友の令嬢達です。ソラリス教の祭典でも騒がしくて行儀がなってない方々ですよ」
 ひとの良さそうな坊っちゃん神官が、ここまで嫌悪を顕にするなんてなーー、ミントちゃん、おまえよっぽど空気読めねえんだな。

「どっかから聞きつけて、ひやかしにきたのかもな」
「そうでしょうねーー。うわぁ、ベルダスコン公爵我儘令嬢に、パルピィン公爵騒音令嬢、ベルリッツン侯爵横暴令嬢、アンリエッタン侯爵気分屋令嬢ーー、勢揃いしてますよ……」
「カロリン、おまえ超おもしろいな」
 それは公式なのかが気になるところだぜ?

「いま、クライス司教が行きましたね」
「じゃあまかせておこう」
「はい……、何をしにきたのでしょう……」
 不安気に眉を寄せるカロリンの心配はわかる。ーーそれもきっと杞憂では終わらないんだろうし……。 


 ーー確実、嫌がらせ目的だろうな。

 

 









 大広場にいるひと達の視線を釘付けにしながら、その一味はおれの前に現れた。うん、こんなエンカウントは想定外だったな……。

「聖女様、ごきげんうるわしゅうございますーー」
 小娘にしては優雅なお辞儀だ、王女だと思うとちょっと仕草が雑だけど。
「これはこれは王女殿下……、このような場所でお目にかかれましたこと、恐悦至極に存じます」

 ほれ、このお辞儀の角度、イイ感じだろ?こちとらうちのじいちゃんの仕事関係で、結構きつめに仕込まれてるんでね、おれできる子なんですよ~~~。

「ッ!」
 すぐに睨むな。まったく気品ある王女様が、おれの親父より瞬間湯沸かし器とはな。
「んで、今日はどうしたんだ?」
 もうめんどうだから、通常運転ね。何が悲しくて、パーピー王女のごきげんなんか取らなきゃなんないんだか。

 タメ口のおれに、まわりのご令嬢って連中がヒソヒソと話をしている。100%、悪口だな。

「ーーおほんっ。聖女様がガラクタを売っていると聞きまして……、失礼ながらそんなに金子に困っていらっしゃるとは……。わたくし達、是非ともご協力させていただきたいと思いましたのーー」
 にこにこと笑ってるけど、愛想笑いじゃない、バカにする笑いだ。ミントの笑いにつられて令嬢達もオホホッって笑ってるけど、それは何か?ゴリラの真似か?


「お願いしますわ~」 
 ミントが後ろにいるお供のひと達へ声をかけると、そのひと達は困ったような表情で大きな箱を運んできた。どんな顔をすればいいのか、わからない、って感じだよ。

「ーーありがとう」
 って、箱の側に行こうとしたおれの前に、イワンとカロリンが守るように立った。ーー意外に、こういうときは盾になってくれるんだな……。

「うふふっ、どうぞお役に立ててくださいませ」
「……」
 はいはい、何をくださったんですかね?

「カロリン、箱を開けてくれるか?」
「……はい」
 イワンに促されると、しぶしぶといった様子のカロリンが、箱の蓋を開けた。

「……………ぶ、ぶえっくしょんっ!」

 ーーまたか……。

「へっくしゅっ」 
 手で鼻を押さえたカロリンに、イワンがハンカチを渡す。なんだおまえ、後輩には優しいんだな。
「……ず、ずみません」
「聖女様……、これはぬいぐるみのようですよ」
「ぬいぐるみ?」

 ーーほ~ん、どんなやつだ?安定のテディベアとかか?

 箱の中をのぞいたおれは、もわっとする埃と古い臭いに口を閉ざした。ヤバい、これはおれも食らうやつだな。でも、箱の中にぎゅうぎゅうに詰められていたぬいぐるみは、さすがご令嬢の持ち物、完成度の高いテディベアとか、フランス人形みたいな物とか、高価そうなものばかりだ。

「ーーいいじゃん」
 古くてモケモケな部分もあるけど、キレイにすりゃまだ遊んでくれる子もいるだろう。
「助かるよ」
「………ほほっ、こんなもので喜ぶとはーー、さすがは田舎の方ですわね……」
 
 ちょいちょい気になるんだけど、なんでおれ田舎の出身になってんだろ?トーキョー育ちのおれと比べりゃ、こいつらのほうが完全に田舎者だと思いますけどーー。

「ーーわぁ、お人形がいっぱい……」
「かわいいっ!」
 小さな女の子達が箱の中をのぞいて、はしゃいだ声をあげた。うんうん、人形がひとつでどうしよう、って感じだったもんね、増えてよかったよ。

「これ、買えるの?」
「あーー、ちょっと待ってねーー」
 と、自浄聖魔法を使おうと思ったおれの耳にけたたましい笑い声が響いた。

「オッホホホ!ーーこんなものを欲しがるなんてッ!平民の方は大変ですわね~~~」
「……」

 クスクスッ、うふふふーーー。


「あいつは……?」
「パルピィン公爵騒音令嬢ユリーナ様です……」
 カロリンと小声でやり取りをする。うん、ミント、おまえダチガチャ大失敗だな。こんなのといたら、そりゃ性格も歪むわ。いや、おまえの性格が悪いから類友で、そんなのしか寄ってこないのか?

「あなた達もお可哀想に……、新品の人形も買えない親の元に生まれてしまってーー。そんな親、捨てたほうがよろしいのでは?」
 ーーこれがベルリッツン侯爵横暴令嬢シフォン様です。
 ーーふうん。

 カロリン、親切に教えてくれるのはありがたいけど、おれ、別に知りたくないぜ……。

「子供が欲しい物を買ってもらえないなんてーー……、ひどい親ですわよね。わたくしなら、悲しみのあまり涙がとまらないでしょう……」
 ーーアンリエッタン侯爵気分屋令嬢エミラ様です。
 ーーふうん。死ぬほどどうでもいいな。

「わたくしなら、こんなもの恥ずかしくてもてませんわーー」
 ミントが大げさなリアクションでぬいぐるみを指差したんだけど、おまえは自分の物に愛着はないのか?テディベアが泣いてるぞ。

「仕方がありませんわよ、不用品にあんな風に集っていらっしゃるんですものーー。わたくし達とは違いますわ」
 おい、ナス。おまえそんな性格じゃ絶対にアレクには好かれないぜ?絶対になーー。

 ほほほっ、と笑うご令嬢達を見て、大広場にいる母親達が恥ずかしそうに俯いた。
「……」
 そうだな、よかったな……。おまえらの親はなんでも買い与えてくれる上流な親でーー。はいはい、言いたいことをいってスッキリしたら、さっさと帰ってくれないかね?


「ーーお兄様の婚約者が、こんな浅ましい真似をする方だなんて」
 ありえませんわーーと睨まれた後、別の令嬢がボソリと言った。



「泥棒猫がーー……」
 




 ……誰が言ったのかはわからない。

 けど、全員がおれのことを憎しみを込めた目で見てるってことは、まあ、友情には厚いんだろうな。

「……ふうん、泥棒猫ねえ」
「あら、気に入りまして?」
「ーーひとつ聞くけどさ、この国って何歳から結婚できるんだ?」
「え?」
 意表をついたのか、ご令嬢達の笑いがおさまった。
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