15 / 22
第15話 呪いをかけてなんていません。
「団長はー」
おれの声のトーンが落ちた。
「恋人のおれを、そんな扱いするんだー」
何だか悲しくなって、おれは泣いてしまった。
「イツキー」
団長が近づいてきた。
「来んなよ。どうせ目から水が出てるとか言うんでしょ?団長のバカたれ!」
おれは顔をあげて涙をふこうとした。
くそっ!
………えっ?
おれの涙を団長が指で払った。ペロリと舐めて一言。
「しょっぱい水だな」
ほひゃゃゃゃゃーーー!!!
何ですか、その不意打ちぃぃぃ!
「ちょっと何ですか!そんなのイケメンだから許されるんですよ!」
ぷんぷん怒るおれに団長は言った。
「泣かれるのは、嫌だからな」
ーー毎日泣いてやろう。
「団長~。彼女達に団長を紹介してもいいですか?」
「それはかまわないが、イツキはそんなにはっきりとユニコーンの言葉がわかるのか?」
「おれ血が混じっているみたいです」
「え?」
「彼女達が教えてくれましたーー。みんな、紹介するぜ、おれの恋人のクロウド団長だ」
『ーー悪くはないと思うんだけど……』
『王子はどうするの?』
「いやいや。会ったこともないから、どうもしないよ」
『会いに行きなさいよ。村の果てにお城があるわ』
「果て、って」
ユニコーンの果てはおれが思う果てではないだろう。
「いいの!おれは団長と付き合ってるんだから!」
そうきっぱり言い切ったおれの耳に、ユニコーンの泣き声が聞こえた。
「ヒヒヒーン」
見るとデネブが、泣いていた。涙って出るんだ。
「デネブ……。まっ、そういう事だから」
おれの言葉を聞いてデネブが団長を睨んだ。
「どうしたんだ、デネブ?」
団長は首を傾げた。デネブの方が人間らしい感情してるな。
「団長のことを恋敵と思っていますよ」
「迷惑な話だ」
さらっとひどい事いうなぁ。
「で、おれを村に連れてきて結論は?」
「イツキがユニコーンの牝なのはわかった」
「そんなわけないでしょ!」
「分類があるなら、イツキはヒト科ユニコーン族だな」
おれは目を丸くした。
「そんなのがいるんですか?」
「人類でもレアケースだ。何で騎士団にいるのだろうな?」
「それは設定で……」
「設定?」
「あっ、いや、積極的に騎士団に入りたかったんですよ!」
「その弱さでか」
団長は不思議そうな顔をした。
「どちらかと言えば、神殿に行く人間だろうが」
神殿ーー。自分達は神の使いだという神官達が、わらわらいるとこね。おれもそうです、って言ったらどんな反応するのかなーー。
「一度神殿に行くか?」
「痛いことされませんよね?」
「……………………………ああ」
「されるんでしょ!絶対されるんだよ!」
断固お断りです!
「あっ、アンタレスですよ。お別れしたんじゃ」
レイン大隊長のユニコーンが湖の牝ユニコーンをめがけて突進して行った。牝は蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。
「嫌われてますねーー」
「普通はあんなものだ」
「もっと真摯に誘わないと。女性は嫌がりますよ」
「ーー詳しいな」
団長が意外そうな目でおれを見た。
「ふふふ。観察力だけは優れてるんです」
「なぜ?」
えらいつっ込んでくるわね。
とは言え、99人の女子に振られ続ける中で身につけたスキルだからな。結局まとはずれだったのか、誰にもかすりもしなかったし。
あっ、そうだ。
「どうしてだと思います?」
おれは団長の目をしっかりと見た。
1、2、3、4、5、6、7、8秒ーー、数えておれは視線をアンタレスに戻した。
お、おい。団長と8秒間目を合わせてやったぜ!これはもう科学的には進展アリだぞ!
「誰か~!悪いけどアンタレスと付き合ってやってよ!」
『えー!』
『やだあー』
「頼みまーす!」
『まあ、いっかぁ』
1頭がアンタレスの側に行き、2頭は角を擦り合わせてどこかへ走って行った。挨拶か、手順なのかな。
「アンタレス、がんばれ!」
アンタレスは「ヒヒーン!」、と元気に鳴いた。おれは何を応援してるんだか。
「イツキ」
「ん?はい?」
団長がおれを見ていた。
その真剣な目におれはドキリとした。
「な、何ですか?」
「おまえ、呪いをかけるつもりだったのか?」
の、呪い?
「人の顔をじっと見て呪いをかけていたな?」
真面目に何言い出すんだ。
ほんま、この人あっかんわーー!
あなたにおすすめの小説
忘れた名前の庭で
千葉琴音
BL
【凍てついた記憶を溶かすのは、不器用な守護者の体温】
「俺のことはルーカスでいい」
目覚めると、僕は自分の名前すら忘れていた。 唯一の肉親である兄・テオドールの死と同時に失われた記憶。無愛想な兄の友人ルーカスと共にゆっくりと兄の足跡を辿っていく。
厳格で甘いものが嫌いだった亡き兄・テオドール。彼が密かに弟のために植物図鑑を読み、内緒で菓子を買い与えていたという、口にされることのなかった真実。
ルーカスの語る「かつての自分」と、今の自分が少しずつ重なっていく中、アルノは因縁の魔獣の住む森へと足を踏み入れる。そこで彼が思い出したのは、独りで耐える術ではなく、誰かに抱きしめられて「息をする」方法だった。 孤独な少年と、彼を見守り続けた騎士。二人が雪解けの庭で見つける、新しい絆の物語。
『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―
なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。
――はずだった。
目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。
時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。
愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。
これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。
「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、
年上αの騎士と本物の愛を掴みます。
全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。
めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。
その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。
⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる
⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない
※全四話、予約投稿済み。
本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。
※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中
家に帰ったら、妻は冷たくなっていた。突然シングルファザーになった勇者パーティーの治癒師は家族を修復したい
八朔バニラ
ファンタジー
勇者パーティーに所属し、魔王討伐した治癒師(ヒーラー)のゼノスは街の人々の歓声に包まれながら、3年ぶりに家に帰った。家族が出迎えてくれると思ったが、誰も出迎えてくれない。ゼノスは不満に思いながら家に入ると、妻の身体は冷たくなっていた。15歳の長男ルミナスはゼノスの代わりに一家の柱として妹を守り抜き、父に深い拒絶のこもった瞳を向けていた。そして、8歳の長女ミリアは父の顔も忘れていた。
ゼノスは決意する。英雄の肩書きを捨て、一人の不器用な父親として、バラバラになった家族の心を繋ぎ合わせることを。
これは世界最強の治癒師が家族を修復する物語である。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。