(完結)主人公の当て馬幼なじみの俺は、出番がなくなったので自分の領地でのんびりしたいと思います。

濃子

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当て馬王子 アディオン 編

第3話 与一、不意打ちをくらう。

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「ーーマルス、好みの方がいなかったので下げてくれーー」
「はい。坊ちゃまは面食いですね」

 違うんだよ、普通なんだよーー。

「朝食のお時間ですよ。お急ぎください」
「ーーもう、部屋で食べたい」
「おや、陛下がご心配なさりますよ」
「いい。バルコニーに用意してくれ」

「はい。わかりましたーー」
 何を拗ねているんだか、とマルスが呆れたようにため息をついた。
 拗ねもするよーーーー………。この後、俺の人生に、なんの幸せがあるっていうんだ~~~っ!!
 






 ひとり風に吹かれながら、バルコニーで朝食をとる。このオムレツみたいなのソースがすごい上手いな。ケチャップしか知らない俺としては、黒っぽいソースにビビるが、これはトリュフらしい。
 王子様は朝からトリュフを食べるのかーー、ヤベーな。

 でもって、食後はやはり紅茶かーー。個人的にはコーヒーがいいんだよ。アディオンが飲んでた記憶がないから、城にはないのかなーー。美味いのに……。

 庭も見渡す限り広い。確実に東○ドーム1個はいけるぞ(まさかこの例えを使う日がくるとはーー)。木や花もよく手入れされているみたいで、雨も降っていないのに濡れているところから、早々に水やりをしてくれたのだろう。

「はあー、幸せだな……」
「ーーどうした、我が愚息よ」
「おはよう、アディ」
 背後からの声に振り向く。
「おはようございます。父上、兄上」

 すぐに立ちあがって頭を下げる。国で一番偉い人来たなーー。アディオンにとっては若い父親のレディガンと、ふたつ年上の兄リディアンだ(ちなみにアディオンは19歳よ)。

 



 どちらもアンガーティ王家特有の、黒い髪に翡翠色の目をしたイケオジ、イケメン。体型も同性でも憧れる、程良い筋肉に長い足ーー、アディオンもそうだが、足長すぎだよ。

「ーー失恋をしたそうだな、アディ」
「おや、もうお耳にはいりましたか……」
「ああ。おまえのエッチが下手くそだったからふられたのだろう」
 ーー親父、超おもろいキャラしてんな。

「つい最近付き合ったのに、もう別れるとはーー。やはり身体の相性を確認してから交際するべきだと言っただろ?」
 ーーきれいな顔してぶちこんでくるな、このお兄様。そんなこと、クソ真面目なアディオンにできるわけないって。

「ーー手はだしていませんよ」
「はあ?昨晩、ウキウキと気持ち悪い顔でイリスの屋敷に行ったよな?」
 言い方よ、お兄様。
「まあ、手は出さずともできると言えばできる」
 素人には無理だろ。本当に父親か?

「ーーベッドまではいきました」
「おおっ!それで!」
「いいぞ!」
 ノリが良いな、あんたら。

「裸にまでなってくれましたーー」
「よし、いけ!」
「なんだ、問題はないじゃないかーー。まさか勃たなかったのか!?」
 なんで全部俺のほうが悪いんだよーー。
「ーーやっぱり無理だと言われましたーー」
 俺の言葉にふたりが目を大きく開けた。


「ーーイリスは、悪魔か?」
「ーーなんと、そこで耐えたのか?あれだけ惚れていたのだ、無理やりにでもしたらよかったのにーー」
 同情の眼差しが飛んでくる。ホントだよ、可哀想なアディオン。フラレてショック死しちゃうぐらい、イリスの事が好きだったのに。

「いえ、気持ちがないのに身体だけつながっても無駄です」
「おまえ、勇者のなかの勇者だな」
「ついでに魔ドラゴンの退治をしてこい」
「嫌ですよ」
 ーー家から追い出さないでください。

 とてもじゃないが信じられない、とふたりが顔を見合わせる。
「ーーひどいなイリスのやつ」
 リディアンが苦々しい表情で、用意された紅茶を飲んだ。

「あんのクソビッチ。今度会ったら御前稽古と称して、目の前でルーカスを痛めつけてやる」
 本気で怒るリディアンを見て、俺は笑顔になる。アディオンには良い家族がいるんだな……。

「ーー兄上……。いいのですよ、私はふっ切れましたから」
「確かに、それだけ酷い目に合わされて、まだ好きとか言ってたら病気だな」
「それにしても、裸にしてやめるとはーー。凄すぎだ、アディ……」
 親父、どこにいつまで食いついてんだよ。

 だが、アディオンのままだったらどうだったんだろうーー、彼なら無理やりしてたのかーー、いや、優しいこいつのことだ。ーーそれこそ死ぬより辛い思いをして諦めたんだろうな……。

「ーー陛下、お時間ですよ」
 近衛兵アートレが親父に声をかけた。この明るい金髪に、青い大きな目をしたイケメンは、イリスと一緒でアディオンの幼なじみだ。




 アートレ・マカエル・バランティ・ノ・ファイラン、ファイラン侯爵家の次男坊で、剣の腕も立つ頼れる兄貴分。
「そうだった。では、愚息よ。早く新しい出会いがあるようになーー」
「ありがとうございます」
 いらないけどね。

 親父達がいなくなり、ホッと息をつく。良い人達だが、他人感がすごい。
「アディーー。ほんとうに平気なのか?」
 顔を覗き込むようにアートレが身を屈めた。
「ーー大丈夫だ。思ったよりスッキリしている」
 うん、ほんとに大丈夫だよーー。
「そうかーー、なら遠慮はいらないな」
「?」
 遠慮?

 まさか、まさかこいつイリスのことが好きなのか?あ、アディオンに遠慮していままで言えなかったのか!

 すっごいせつないじゃんーー。胸キュンだよーー……。

「アル……」
 アートレ・マカエルを略してアル。アディオンとイリスしか呼ばない愛称で呼ぶと、アートレが鼻をかいた。そして、何かを決心するように俺の顔を見る。イリスのことならほんとに俺はもう、関係ないからねーー。

 ただ、残念なことに、アートレルートはなかったような……。
「ーーアディ」
「何だーー……!」

 目の前にイケメンのドアップがーー、と思った瞬間、俺はアートレにキスをされていた。

「ーーっ!」
 突き飛ばしたのにびくともしない、さすがだーー、って感心してる場合じゃない。

「アル!」
 舌がくる前に唇を離すと、怖さすら感じるほど真剣な目とぶつかった。
「ーーずっとアディが好きだったーー」
「え?」
「これからは、オレがアディを幸せにする」

「ええっ!」
「ーーそんな驚いた顔も、いいなーー」
 ああ、そうだ。アディオンはポーカーフェイスじゃないといけないんだよ!けど、けどーー、俺のファーストキスを勝手に奪うんじゃない!くそっ!!

 そりゃアディオンは、イリスとキスはしてたーー。今となってはイリスのなかじゃ黒歴史のキスかもしんないけどーー、ってそれはどうでもよくて、俺としてははじめてのチュウよ。本気ではじめてなんです!

「返事は?」
 真摯な目で見つめられるが、俺は呆然として何も返せなかった。

「あ、アル……。私はおまえのことが確かに好きだーー、だが、この気持ちはおまえが望んでいるものではない」
「ーーそうか。安心しろ、オレは自分でも嫌になるぐらい辛抱強いし、おまえが信じられないぐらいおまえのことが好きだーー」

 ……。

 ーーお~い!アル、ってばかっこいいんですけどーー。イケメンはやはり、台詞もかっこいいな。
 だけど、ゲームじゃアディオンとアルは友達なだけ、登場シーンもみんなが集まるときにいる、ぐらいだったと思うんだけどーー。
 裏で俺に告っていたなんてーー、驚きの展開だよ。

「ーー何と返していいか、わからない」
 友達でいてくれよ……。本気でさ……。
「焦る必要はないさ、オレの気持ちは変わらないからな」
 いやだ、イケメンーー。

 マントを翻して鮮やかに去る姿に、同性なんか興味もないのに、俺は惹き込まれてじっと見てしまった。

 あんなイケメンが俺のことを好きとはーー。いやぁ、アディオンったらそりゃそうか、おまえもイケメンだもんな。アルは良い奴だし、気まずくなるのもなーー。
 どっちにせよ、もう普通の友達としては付き合えないんだ……。

 あれ?もう、俺の友達いないのか。その辺の設定はきっと制作陣もどうでもよかったんだろう。俺としては、いっぱい友達ほしいなーー。やっぱり恋人より友達がいるよ。
 



    
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