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当て馬王子 アディオン 編
第5話 与一、フラグを立てる。
しおりを挟むふざけんなっつぅのーー!
「馬鹿にするな!誰がそんなことを望むか!」
俺が怒鳴ると、騎士団幹部達は姿勢を正した。
「とめてまいります!」
ノアとマットスが走っていく。ほんと、よけいな気をまわさないでほしいよ。俺の心が小さいみたいじゃん。
「お前たち!騎士団内で何をしている!」
「だ、大隊長!だってこいつが殿下の恋人を取ったんですよね!」
「最低じゃないですか!」
ーーなんだ、アディオンってば、みんなから慕われてるじゃないか……。
こんなときにほっこりしている場合じゃないが、自分のために誰かが怒ってくれるなんてうれしいな。ーーうん、暴力はだめだと思うけどね。
ーーアディオン、おまえの人生も悪くはないよーー。
なんて俺が黄昏れてるうちに、話がついたらしく、ノアがルーカスを連れてきた。
ーーおぉ!イケメンだなーー、軍を抜いてイケメンだよ、こいつ。
ルーカス・ハイロ・フルロンティ・ノ・バーロンド。バーロンド男爵家の三男坊。強く輝く金髪に、珍しい紅い目、はっきりとした顔立ちの生気に満ちたイケメン。背はそこまで高くないが、均整がとれていて見る者を惹きつける。
「ーー殿下、助けていただきありがとうございます」
「いや、私は何もしていない。礼ならノアに言うべきだ」
ノアが目を見張った。隣りのマットスも意外そうな顔を隠しもしない。
「ーー殿下、無礼を承知で言います」
「聞きたくないが」
「あ……」
俺も意地悪だよな。まわりの奴らは聞きたくてしょうがない顔してるのに。
「おまえが何を言いたいのかはどうでもいいが、私とイリスは終わっている。その話なら聞く気はない」
「……」
「殿下、話ぐらい聞いてあげませんと」
ーーこら、オーフェン。おまえゴシップ大好きだな。王子に催促すんなよ。
「ーー手短に話せ」
「いえ……。なぜ、イリス様をお抱きにならなかったのですか?」
ちょ、直球だねーー!キミ、若すぎない?
恋敵のパイセンに何聞いちゃってんの?イリスも、そんな話ペラペラしゃべんなよーー、あっ、こいつに言い訳したのかもしれないな……。「僕はまだきれいなままだよ~」、みたいな。
ちっ。
ふんだ。心の舌打ちがとまらないぜーー。
「ーーなぜ、と?」
俺は真っ直ぐにルーカスの瞳を見据えた。
「イリスの幸せを願う身としては、それぐらいたいしたことではない」
そう言った俺の顔に、あちこちらから尊敬の念のようなものがあたる。なんだか皆の目が輝いて見える。ルーカスなんかは、涙ぐんでしまってるよ。
「殿下、、、。なんと尊い……」
泣きだしたルーカスの肩をノアが叩く。そうだ、アディオンはカッコいいんだからな。おまえらごときにダメージを加えられるほど、ヤワじゃないんだよ。
ーーほんとはもっと、生きたかったよな……。おまえの人生は、俺がちゃんと生きてやる。ーーけど、家族をつくる、とかは無理かもしれないぞ……。
「あっ、アディ……」
久しぶりにイリスの顔を見たのは、へブリーズ領から剣術の達人が来る日だった。
ーーきっまず~、とは思ったものの顔にはださない。黙っていると向こうから口を開いた。
「……アディ、ごめんね。僕のせいで君が悪く言われてーー」
王宮の広間、こんなひとが多く通るところでする話でもないが、こいつとふたりで話す気にはならないからちょうどいい。気になることといえば、横にいるイリスの親父が、意味ありげな視線を俺に送ってくるぐらいだ。
だが、俺にはイリスの親父が何が言いたいのかさっぱりわからない。何ならおまえも息子と一緒に謝罪でもするのか?いや、このプライドの高い公爵は絶対にしないだろうなーー。
「ちょうどいい、イリス卿」
「え?」
「貴殿もいつまでもわたしのことを、愛称で呼ぶのはやめていただきたい」
イリスの大きな瞳が、驚きにさらに大きくなっていく。虹のようにきらきらと見えるのは、涙だろうか。しかし、すぐ泣くな、こいつーー。
「ーーそんな。幼なじみには変わりないじゃないか」
彼の抗議に鼻で笑いそうになるのを我慢した。
ーー何を言うか。未来のおまえを救ってやってるのにーー、ってイベントがひとつつぶれたぐらいたいしたことはないだろうけど。
「普通の友になろう、と言ったはず。では、失礼する」
「え?アディ!ちょっと待ってよ!」
「殿下ーー!」
親父も引き留めてくるが、マジいま忙しいの。剣術の達人にワクワクしてるんだからーー。
「殿下、恥を忍んでお願いがあります!」
嫌だっつうの。誰が聞くかーー。
「イリスがルーカスと一緒になりたいと言っていますが、彼の身分が低すぎます」
貴族なんだからいいんじゃないか?あいつの親父の領地、バーロンド領は豊かな土地のはずだし。
「三男坊で、爵位もないのです!」
あー、そっか。ルーカスの親父は公爵みたいに、伯爵位や子爵位をもっていないのか。そんなこといっても、俺のエトルカーナ大公とかはあげられないしな……。
「ーーどうせよと?」
わからんことは、聞きましょう。
「ルーカスが武勲をたてれば、私の爵位を叙爵したいと思っています。よろしいでしょうか?」
あー、そういうことか、あんたがもってる爵位をあげたいのね、それを許可してほしいんだね。
ーーはいはい、わかりましたよ、許可しますよ。許可したらいいんでしょ?俺のおしゃれな印章をついてあげますよ。
「武勲と?いまは戦もないが」
「エウローペーの南では、魔ドラゴンが最南村の近くにいるそうではありませんか、それをルーカスに討伐してもらうのです!」
「……」
なるほど、それは手っ取り早いーー。なんせこの世界じゃ、魔ドラゴンは、害悪獣のなかでもトップクラスのやばいやつだ。
よく、魔物とか聞いたりする存在を、こっちでは害悪獣って呼んでる。文字通り、害悪な獣。害悪と定められた存在は、討伐が可能だ。
だけど、たまに食材や薬に使えるからと、貴重種を害悪獣にして乱獲するケースもあるから、色々と問題も多いんだよ。
まっ、魔ドラゴンは、害悪獣で間違いないんだけどーー。
「ーーいくら騎士でも魔ドラゴンには敵わんだろう」
ああ、絶対に無理だぜーー。
「大丈夫ですよ」
ルーカスってそんなに強いのか?今度、タイマンはってみるか。
ーーいや、ちょっと待てよ……。
俺はなんだか嫌な予感がした。
「では、魔ドラゴンの牙をルーカスが持ち帰れば、爵位を叙爵するということでーー」
きつく押し付けるように公爵は言葉を残し、逃げるように去っていった。イリスが俺を見て何か言いたそうだったが、無言でその後に続く。
俺はそんなふたりを気にする余裕もない。
心臓がバクバクと言っている。
まず間違いないーー。
俺がフラグを立ててしまったのかーー。
ルーカスは魔ドラゴンと戦い、生命を落としてしまうのかもしれないーー。そして、その後イリスが他の男爵とのルートに入ってしまう。
ーーうっわ~~、ルーカスかわいそうじゃん。これはちょっと、なんとかしてやらないと、ヤバいんじゃねーー?
そのほうがイリスもビッチの汚名を着ずにすむだろう。なあ、おまえもそう思わねぇ?
ーーアディオン……。
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いつも最後まで読んでいただきありがとうございます😊
たくさんのお気に入り登録ありがとうございます✨たくさんつけていただくと、それはそれで緊張してしまいますが、面白い話になるようにがんばりま~す🥹
また、よろしくお願いいたします~🙇
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