飛び降りるつもりが、恋に落ちました

私、飛べません

 さて、どうしたものか…。

迷惑をかけずに消えたいから海の藻屑になろうとしたのだけれど、あと一歩がどうしても踏み出せない。いっそのこと助走をつけて思いきり飛んでしまおうか。某時をかける少女みたいにさ。
崖っぷちから20メートル退く。
両手を地面に着き、海の更に向こうを見つめる。
最後に一つ息を吐くと、

ready  set   GO！

天宮選手、速い！あっと言う間に20メートル地点通過だぁ！このまま一気に行って、いや、逝ってしまうのか？！ここで最期のジャンp…。おや、どうした天宮選手。いきなりUターンを始めました。額からは大粒の汗を滴らせ、今、スタートラインに戻って来ました。おっと、天宮選手、膝から崩れ落ちた！たった今、腰を抜かした天宮選手が地面に両手両膝を着きました！！なんて無様な姿！！！皆さん、ご覧ください！これが、天宮 曇の集大成ですっ！

「くそぉっ！無理だよ、高いよ、死ぬよ！」

冷たい土に拳をつく。
なんでみんな飛べるのさ。怖くないの。いや、違うか。高所恐怖症の人は身投げしないね。

 そうだ、樹海行こう

「そこ、どいてくんない？」