愛した人は(書き直し)

わかば

文字の大きさ
3 / 9

しおりを挟む

風がひゅうひゅうと吹き付け、木はざわざわとざわめく。まるで僕らを阻むかのようだ。二人の親友の元気がだんだんなくなっていくのがわかる。
「ねえ、いくの、やめない?」
そう切り出したのは明美ちゃんだった。この空気に、恐怖を感じてしまったのだろう。
「やだね。俺は一人でもいくぜ?」
明美ちゃんにそっと耳打ちをする。
「駿を一人にはできないけど、きっと駿も帰ってくれないよ。僕らも行こう。」
震える声でそう伝えると、明美ちゃんも
「うん、うちら、死ぬときは一緒だよね?」
と返事をくれた。だいじょうぶ、死なないから。そう言いたかったけど、そういって慰めたかったけど、明らかに何かが違うこの森の中で、そんな不確かなことは言えなかった。

「こ、ここか?」
「そう、みたいね。」
「今にも崩れそうだね?入るの?」
駿は少し顔をしかめて考えていたがすぐに笑顔で
「ここまで来たなら入るっきゃねえ!」
と大きな声で叫んだ。
とても大きな扉の前に立つ。駿が、俺が開けてやるといってギィギィと音を立てながら扉を開けた。長年ほったらかされていなかったのだろうか?扉の上に積もっていたであろう埃が降ってきて、咳き込む羽目になった。
「ホコリ溜まりすぎい…。」
明美ちゃんが文句を言うと、駿はそれに頷いた。
「ほんとにね。」
僕も相槌を打つ。ゴホゴホ、と咳をしながら。
「じゃ、入るぜ。」
明美ちゃんは駿の腕にしがみついていて、もう片方の手で僕もつかもうと僕を引っ張った。明美ちゃんに引っ張られて、あっさりと館の中に入る。腕は明美ちゃんに拘束されたまま、中に進んでいく。やはり、埃っぽい。
「てか、ちょっとさみいな。」
「うん。寒いね。大丈夫?明美ちゃん。」
「う、うん。」
風が廊下をひゅうひゅうと吹いていて、少し肌寒く感じた。
ギイイイイ、バタン!
突然、後ろから大きな音がした!僕らが入ってきた入り口の方だ。…ま、まさか。
明美ちゃんの腕を振り払い、二人を残して駆け戻る。
扉は、閉まっていた。全力で押すも、開かない。今度は引いてみた。勿論、全力で。それでも、扉が開くことはなかった。二人が後から追いかけてきて手伝ってくれたのだが、それでも扉はびくともしなかった。あたりを見渡す。人が通れそうな窓は、ない。今気づいた。この家の窓はすべて、鉄格子がはめられているのだ。出られないと言う事実に、恐怖する。
「いやあああ、出して、出してよっ!」
「落ち着け!」
二人が叫ぶ。落ち着けるものか。出られない、帰れないんだぞ!こんなことなら、こんなことなら、こんなところに来なければよかった…。駿を引きずってでも、うちに帰ればよかった。が、後悔をしてももう遅い。進むしかないのだ。前に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...