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「奥様、お湯の準備が整いました。」

ノックと共にシーラちゃんの声がした。

「今行く。」

私が答えるのを制して代わりにアイザックさんが返事をした。
立ち上がってズボンを整えると私を横抱きにして歩き始める。

「私、自分で歩けますよ!」
「俺の不注意で汚してしまったんだ。洗わせてくれないか。不快なら無理強いはしない。」
「不快では無いですが、あの恥ずかしいです。」
「大丈夫だ。誰も文句は言うまい。」

いや、人目も気になるけれど貴方に見られるのが恥ずかしいの!と言う前にドアを開けられてしまいびっくりした顔のシーラちゃんと目が合った。

「戻るまでにベッドを整えておいてくれ。」
「は、はい!お任せ下さいませ!」

あぁ、シーラちゃんのキラキラした目が私達を見つめる。
すれ違う他の使用人の皆さんも驚きながらも微笑んでいるような・・・。
まるで晒し者になったようで恥ずかしくて、私は胸元のシーツを引っ張って顔を隠した。


しばらくして、アイザックさんに声をかけられて顔を出すと浴室に着いていた。

「さぁ、こちらへ。」

彼に手を引かれ浴室に入る。
もちろん彼も私も裸だ。
恥ずかしいから早く済ませて欲しいのに彼はとても丁寧に時間をかけて私の体を洗ってくれた。

「俺に触られるのは嫌じゃないか?」
「えぇ、嫌じゃないです。」
「そうか。」

二人で入っても余裕のある浴槽の中で、向かい合わせに座ったが、目のやり場に困ってしまった。
鍛え上げた体に整った顔立ちの『夫』が目の前にいるのだ、誰だって目のやり場に困るだろう。

「ダイアナ、大丈夫か?」
「ある意味、大丈夫ではないかもしれません。」
「ん?どういう意味だ?」
「旦那様の裸は目の毒だってことですよ。そんな格好いい体で顔まで格好良くて、ジロジロ見ちゃいけないと思っても気になっちゃって、あぁもう!何を言っているのやら・・・。」

顔が火照るのはお湯のせいではない気がする。
一人でアワアワしている私を見てアイザックさんは嬉しそうに笑った。

「好きに見て良い、私は貴女の夫なのだから。気に入ったのなら触っても構わない。」

右手を私に差し出すと優しく頬を撫でられた。
あぁー!!何これ!!何でこんな恋人みたいな雰囲気に!!あ、でも私達は夫婦なのか。
だったら見たり触ったりしてもおかしくないのかな?と誘惑に抗えず言い訳を探してしまう。

「旦那様。」
「名前で呼んでくれ。」
「アイザックさん・・・。あの嫌だったら言って下さい。」

そう言うと彼に寄りかかるようにして抱き締める。
鼓動が伝わってきて心地が良い。
出会いは最悪なのに不思議と安心感があるのはなぜだろう。

「ダイアナ、もし許されるのならキスがしたい。」
「いいですよ。」

触れだけのキスをして、彼の唇にそっと舌を這わせる。
薄らと開いた唇の隙間に舌を差し込んで、口の中をなぞったり彼の舌を絡めて吸ったりする。

「ダイアナ、すまないがこれ以上はいけない。貴女を抱くのを我慢出来ない。」
「あの、アイザックさんは私が孕んだらどうしますか?」

恐る恐るそう聞くと彼は少し考えてから口を開いた。

「そうだな、まず良い医者と産婆を手配して、優秀な子守りも必要だな。」
「いや、あの、私が孕んでも良いのですか?男の子だったらこの家の跡取りになりますよ?」
「ん?それの何が問題なんだ?」

私達は二人して首を傾げ合った。

「得体の知れない素性の私と一夜の過ちで夫婦になって、その女の血を引いた子供が貴方の大事な家の跡を継ぐんですよ?分かってますか?」
「もちろん理解している。貴女の血を引く子供ならきっと頭の良い子だろう。男なら優秀な跡取りになるだろうし、女なら才女として嫁の貰い手が引く手数多だろうな。」

ちょっと何を言っているのかわからない。
本当にそれでいいのだろうか?

「後悔しませんか?」
「何をだ?あぁ、貴女の意に反して行為に及んだ事は生涯償い続けるつもりだ。ただ、実のところ貴女の様な素晴らしい女性を妻に迎えられたことは神に感謝している。」

彼はそう言って笑いながら、また私の頬を撫でた。
今までこんな風に賞賛され求められたことなど無い。
物のように扱われ捨てられて、そこから救い出してくれた母さんも亡くなってしまった。

「私には何も無いと思って生きてきました。だから今は貴方のその言葉がとても嬉しいです。」
「それは良かった。でも、貴女は嫌だろうな。無理矢理犯されて妻にされて、自由を奪われて。」
「自由は確かにとても大切なものです。でも人として尊重され大事にされるなら、それは果たして不自由でしょうか?」

私がそう微笑むと彼は泣きそうな顔で私を抱きしめた。

「貴女を幸せにすると誓う。生涯貴女一人を愛し貴女との子供が出来たら大切にする。言葉だけが不安なら宣誓書を教会に提出しよう。そうすれば何か起こっても貴女は守られる。」
「ありがとうございます。」

私は彼にもう一度、キスをする。
舌を絡めて吸って、彼の主張しているモノをそっと撫でさする。

「ダイアナ、我慢が出来なくなるから触るのは駄目だ。」
「我慢しないで、私は貴方の妻なんですよ?」

彼がごくりと喉を鳴らす。

「いや、しかしまだ宣誓書を作っていないし。」
「私を抱いて孕んだら捨ててしまうんですか?」
「そんなことはしない!決して!」
「では貴方を信用します。」

私は彼の猛ったものの上に乗り、そっと体を沈めた。

「ダイアナ、これはいけない。」
「あっだめ、急に動いたら痛いです。」

慌てて立ち上がりかけた彼を言葉で制すると彼はビクリと体を震わせて動きを止めた。
ゆるゆると体を揺すって出し入れすると中のものがビクビクと震えながら存在を主張してくる。

「アイザックさん、気持ちいいですか?」
「あぁ、溶けそうだ。女に狂って身持ちを崩す男の話をたまに聞くが彼らの気持ちが今ようやく理解できた。」
「他の女性で試すのは出来ればやめて下さいね。やっぱり複雑な気持ちになります。」

他で恋人でも作ったらなんて、ついさっきまで思っていたけど人間とは現金な生き物で、もう手放すのが惜しくなっている。
するとアイザックさんが私の腰を掴んで下から激しく突き上げた。

「ひゃん!」
「貴女だけだっ。」
「あ、あっ、奥だめっ。」
「駄目なのか?こんなに、気持ち良さそうなのに?」
「気持ち、いぃから、だめなのぉ。」
「それなら続けよう。」

アイザックさんが突き上げるたびに、奥を叩かれて蕩ける様な快感が脳髄を刺激する。
はしたない嬌声を上げながら喘ぐ私を見て、アイザックさんはとても楽しそうだった。
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