日本大戦〜日本が大変な事になりました〜

湯崎noa

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第2章・湯川平原の戦い(初陣) 編

037:元帥の襲来

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037:元帥の襲来
 丘の下で戦っている伊馬子少佐と今枝少佐は、本当にギリギリの中で戦っているのである。
 その中で今枝少佐の側近の男が丘の上を指差す。
 そして「共和国軍の旗が落ちました!」と叫ぶ。
 本当なのかと伊馬子少佐と今枝少佐は丘の方を見る。


「なにっ!? あの部流の野郎……やりやがったなぁ」

「部流さま、伝令兵が来ましたっ!」

「次から次へと忙しいなぁ………本陣からの伝令か?」


 部流少佐が遂にやったのかと、今枝少佐は思っていると次は本陣からの伝令兵がやってきた。
 次から次へと忙しいと思っている。
 どんな内容かと耳を澄ませると、その伝令兵は全軍に向けて叫んでいるのが聞こえる。
 その中身は「至急、丘の上に登って陣を張るべし!」と連呼しているのである。


「これだけ押されてるのに無茶苦茶だなぁ。この戦況だったら丘の麓にも近寄れないぞぉ………ん? 伊馬子、丘と反対の方を見て、どうかしたのか?」


 伊馬子少佐が見つめている丘の上には、どうしてこんなところにいるのかと思えるような人間がいた。
 それは牛丸元帥だった。
 クーデターの騒動が起きた後に、大将から新たに名誉階級である元帥の地位を貰っている。
 そんな牛丸元帥は戦場を見て笑っているのである。


「はっはっはっ! さすがは檜さんですねぇ。相変わらず滅茶苦茶な戦いぶりだ」


 牛丸元帥の目線の先には、檜大将らしい滅茶苦茶な戦勝で牛丸元帥は勝手に面白がっている。
 そんな風に牛丸元帥がいるなんて知らない俺たちの目の前には、ここに向かってきている共和国軍本隊の進軍が見えるのである。


「あ あの真ん中に居るのが共和国軍の総大将?」

「あぁそうだ、小僧……アレが豊栄共和国の大将軍である間堂だっ!」

「アレが豊栄共和国の大将軍………」


 俺は初めて他国の大将軍を目の当たりにした。
 遠くから見ても理解できる。
 明らかにアレは禍々しい何かだ……。
 しかしこんなにも目の前に、大きな武功を背負っている人間がいるというのに手も足も出せないなんて。

 俺は手も足も出ない事にイライラしていて、他の兵士たちは早く脱出したいと思っている。
 そんな俺たちに対して、もう少しで息絶える米田が天を仰ぎながら喋りかけてくる。


「もはや貴様らに、ここを脱する方法は無い………お前たちだけじゃないぞ? 間堂さまが動かれた今は、喜多方城と同じく皆殺しにあうぞ!」


 祖国に攻め込んでくるかもしれない北星王国兵を、ここで皆殺しにすると米田は高笑いをしながらいう。
 そして言い切ったかのように米田は絶命した。
 俺たちの方は、まだまだ問題は大きいが丘の下で戦っている伊馬子少佐たちに比べたらマシだろう。

 伊馬子少佐たちのところに、鉄馬騎馬隊が戻ってきて阿鼻叫喚というような感じになっている。
 檜大将の命令だから踏ん張っているが、これでは丘の麓に到着するような感じがしない。
 色々と崩れそうになっているのを見ると、今枝少佐は溜息を吐きながら助けに向かおうとする。
 ここで行かなければ軍務違反になるからだ。
 伊馬子少佐にも声をかけて行こうとするが、伊馬子少佐は牛丸元帥の方から目を離せない。


「こんなところに牛丸元帥がいるなんて………何が起きようとしてるんだ?」


 伊馬子少佐が見つめている牛丸元帥は、グルッと戦場を見渡してから「うーん……」と呟く。
 そしてゴホンッと咳払いをしてから後ろに控えている牛丸軍の副将《有寿 義克ありひ よしかつ》中将に話しかけるのである。


「ここよりも、あっちの方が戦場を見渡せる……有寿、そう思わないか?」

「えぇ間違いありません! あちらの方が、牛丸さまに相応しいと思います!………しかしこのまま戦争に手を出せば、牛丸さまが罪に問われる事になります。残念なのですが、ここから先に進む事はできません」

「誰も檜さんの戦争に手を出すなんて言ってないぞ? 俺はただ移動したいだけで、その途中で邪魔をするというのならば斬るだけだ………良いと思わないか?」

「さすがは牛丸さまです! これならば上の人間たちも納得する事でしょう!」


 そんな会話をすると牛丸元帥たちは、崖を駆け降りて戦場に足を踏み入れるのである。
 その存在に今枝少佐たちも気がついて、アレは共和国軍の援軍なのかと怯える。


「アレは牛丸元帥と私兵団だ……」

「なっ!? 牛丸元帥って大将から元帥になって隠居したんじゃないのか……そうか、牛丸元帥は耐えられなくなって戦場に戻ってきたんだな。さすがは北星の鬼神というわけか」


 牛丸元帥に遅れをとるわけにはいかないと、伊馬子少佐も今枝少佐も後に続くのである。
 2人とも少佐なのだから、かなりの実力者ではあるが牛丸軍の強さの前には霞んでしまう。


「元帥は置いといて、この兵士たちの強さは一体なんなんだ! 噂には聞いていたが、まさかこんなに強いとは思わなかったな………」


 牛丸元帥は別として普通の兵士たちが、並の兵士たちよりも遥かに強いのである。
 どうして強いのかを伊馬子少佐は知っていた。
 それはクーデターが起きた時に、王子の主君である伊永内務卿から話を聞いていた。
 牛丸元帥が自ら軍の先頭に立った時、元帥の鬼神が乗り移ったかのように、化け物と化すという。

 まさか牛丸元帥が来ているなんて知らない俺たちは、米田の首を刎ねて布に包む。
 部流少佐を2人がかりで起き上がらせる。
 そして多少の戦闘にはなるが、覚悟をしておいて下さいと注意しておくのである。
 しかし部流少佐は自分なんて置いて行けという。


「何を言っているんですか! 敵兵が来るところに部流さまを置いていくわけにはいきません………それに逝かれるのであれば我々の肩で」


 部下にそんな事を言われて部流少佐は、なんとも言えない気持ちになり目を瞑る。
 俺も何もしないわけにはいかないので、俺も手を貸すというのだが「お前はこっちだ!」と言われる。
 何を任されるんだと思ったら、米田の首を渡された。


「それは部流隊が勝ち取った武功だ。何が何でも王国陣営に持ち帰れ、絶対に失敗は許さない!」

「ど どうして自分に任せてくれるんでしょうか?」

「これは部流さまの命令であり、我々も異論は無い!」


 この人たちの目は本気だ。
 俺ならば王国の陣営に持ち帰られると信じてくれていて、この首を託してくれたのだ。
 それなら俺が失敗して踏み躙るわけにはいかない。
 俺は芯のある声で「引き受けました!」という。
 そして鼓舞する意味を込めて叫ぶ。


「さぁ皆んなで丘を降りましょう! 降りは登りよりも遥かに楽なはずですから!」


 俺の声かけに兵士たちはニヤッと笑う。
 しかし俺の声かけに「もう帰るのか? これからが楽しいっていうのにな」という人間が現れた。
 それは牛丸元帥だったのである。
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