黎明の王冠

なごみ

文字の大きさ
1 / 2
【第1章】交差する信念

1話.怠惰な副団長

しおりを挟む
 栄華の影に腐敗を宿した王国【アルステリア】。
 かつては智勇に秀でた王が名を連ね、人々の誇りであったはずのこの国の王都【ロヴェリア】では日々、忠義を掲げる騎士たちが剣を振るっていた。
  ――ただ一人、形だけの忠義を嫌う男を除いて。


 ある日の午前、王都中央部に位置する王国騎士団本部の訓練場では、団員達が日課である剣技訓練に励んでいた。

「そこ、構えが甘い!もっと脇を締めろ!」
「形だけで剣を振るな!目の前に敵兵がいると思え!」

 厳しくも誠意の滲む、騎士団長ダリム・エルムリッジの声が訓練場に響き渡る。
 それを団員達を挟んだ対角線上にあたる位置から、制服をだらしなく着崩し、寝そべりながら見守る(目は瞑っている)男がいた。
ふいに騎士団長の視線がその男を捉えた。
「副団長!団員達に示しがつかん!もう少し真面目にしろ!」

たった今叱責を受けた張本人、副団長のアシル・ジルフォードはだるそうにゆるゆると目を開けると、これまた緩慢な動作で体を起こした。
「ふぁ~あ……やれやれ、今日は許してもらえなかったか……」
と独りごちていると、団員達からも何やら
「……あれ、別に今までもあったっちゃあったけど、今日は珍しく団長、注意するんだな」
などと言う声も聞こえてきた気がしたのでそちらを一瞥すると、団員達は慌てて訓練に集中し始めた。

そのまま何となくダリオンの視線と逆の方向にアシルが視線を走らせると、ふと1人の団員が目に止まった。
ーあの振り方は……ちょっと声だけかけとくか……。

アシルはおもむろに立ち上がると、ゆっくりとした足取りでその団員の元へ向かう。
「……君、今の振り方とさっきの振り方違ったろ。
振り方自体は今のでいいけど、その分さっきより膝に負担かかるから、もっと軸足に体重かけた方がいいよ」

突然ふらっとやってきた副団長に、核心を突かれた団員は目を丸めた。
「えっ、あっ……見てたんですか!?」
「まぁね、俺寝ながらでも見れるから」
冗談とも本気とも捉えづらい発言を残し、アシルは手をひらひらと振って団員の元を離れると、また元の場所へと戻っていった。

そんな様子を途中から見ていたダリオンもまた
「……ったく、あいつはまた……」
と誰も気付かない苦笑と呟きをもらした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

勇者の様子がおかしい

しばたろう
ファンタジー
勇者は、少しおかしい。 そう思ったのは、王宮で出会ったその日からだった。 神に選ばれ、魔王討伐の旅に出た勇者マルク。 線の細い優男で、実力は確かだが、人と距離を取り、馴れ合いを嫌う奇妙な男。 だが、ある夜。 仲間のひとりは、決定的な違和感に気づいてしまう。 ――勇者は、男ではなかった。 女であることを隠し、勇者として剣を振るうマルク。 そして、その秘密を知りながら「知らないふり」を選んだ仲間。 正体を隠す者と、真実を抱え込む者。 交わらぬはずの想いを抱えたまま、旅は続いていく。 これは、 「勇者であること」と 「自分であること」のあいだで揺れる物語。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...