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【第1章】交差する信念
1話.怠惰な副団長
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栄華の影に腐敗を宿した王国【アルステリア】。
かつては智勇に秀でた王が名を連ね、人々の誇りであったはずのこの国の王都【ロヴェリア】では日々、忠義を掲げる騎士たちが剣を振るっていた。
――ただ一人、形だけの忠義を嫌う男を除いて。
ある日の午前、王都中央部に位置する王国騎士団本部の訓練場では、団員達が日課である剣技訓練に励んでいた。
「そこ、構えが甘い!もっと脇を締めろ!」
「形だけで剣を振るな!目の前に敵兵がいると思え!」
厳しくも誠意の滲む、騎士団長ダリム・エルムリッジの声が訓練場に響き渡る。
それを団員達を挟んだ対角線上にあたる位置から、制服をだらしなく着崩し、寝そべりながら見守る(目は瞑っている)男がいた。
ふいに騎士団長の視線がその男を捉えた。
「副団長!団員達に示しがつかん!もう少し真面目にしろ!」
たった今叱責を受けた張本人、副団長のアシル・ジルフォードはだるそうにゆるゆると目を開けると、これまた緩慢な動作で体を起こした。
「ふぁ~あ……やれやれ、今日は許してもらえなかったか……」
と独りごちていると、団員達からも何やら
「……あれ、別に今までもあったっちゃあったけど、今日は珍しく団長、注意するんだな」
などと言う声も聞こえてきた気がしたのでそちらを一瞥すると、団員達は慌てて訓練に集中し始めた。
そのまま何となくダリオンの視線と逆の方向にアシルが視線を走らせると、ふと1人の団員が目に止まった。
ーあの振り方は……ちょっと声だけかけとくか……。
アシルはおもむろに立ち上がると、ゆっくりとした足取りでその団員の元へ向かう。
「……君、今の振り方とさっきの振り方違ったろ。
振り方自体は今のでいいけど、その分さっきより膝に負担かかるから、もっと軸足に体重かけた方がいいよ」
突然ふらっとやってきた副団長に、核心を突かれた団員は目を丸めた。
「えっ、あっ……見てたんですか!?」
「まぁね、俺寝ながらでも見れるから」
冗談とも本気とも捉えづらい発言を残し、アシルは手をひらひらと振って団員の元を離れると、また元の場所へと戻っていった。
そんな様子を途中から見ていたダリオンもまた
「……ったく、あいつはまた……」
と誰も気付かない苦笑と呟きをもらした。
かつては智勇に秀でた王が名を連ね、人々の誇りであったはずのこの国の王都【ロヴェリア】では日々、忠義を掲げる騎士たちが剣を振るっていた。
――ただ一人、形だけの忠義を嫌う男を除いて。
ある日の午前、王都中央部に位置する王国騎士団本部の訓練場では、団員達が日課である剣技訓練に励んでいた。
「そこ、構えが甘い!もっと脇を締めろ!」
「形だけで剣を振るな!目の前に敵兵がいると思え!」
厳しくも誠意の滲む、騎士団長ダリム・エルムリッジの声が訓練場に響き渡る。
それを団員達を挟んだ対角線上にあたる位置から、制服をだらしなく着崩し、寝そべりながら見守る(目は瞑っている)男がいた。
ふいに騎士団長の視線がその男を捉えた。
「副団長!団員達に示しがつかん!もう少し真面目にしろ!」
たった今叱責を受けた張本人、副団長のアシル・ジルフォードはだるそうにゆるゆると目を開けると、これまた緩慢な動作で体を起こした。
「ふぁ~あ……やれやれ、今日は許してもらえなかったか……」
と独りごちていると、団員達からも何やら
「……あれ、別に今までもあったっちゃあったけど、今日は珍しく団長、注意するんだな」
などと言う声も聞こえてきた気がしたのでそちらを一瞥すると、団員達は慌てて訓練に集中し始めた。
そのまま何となくダリオンの視線と逆の方向にアシルが視線を走らせると、ふと1人の団員が目に止まった。
ーあの振り方は……ちょっと声だけかけとくか……。
アシルはおもむろに立ち上がると、ゆっくりとした足取りでその団員の元へ向かう。
「……君、今の振り方とさっきの振り方違ったろ。
振り方自体は今のでいいけど、その分さっきより膝に負担かかるから、もっと軸足に体重かけた方がいいよ」
突然ふらっとやってきた副団長に、核心を突かれた団員は目を丸めた。
「えっ、あっ……見てたんですか!?」
「まぁね、俺寝ながらでも見れるから」
冗談とも本気とも捉えづらい発言を残し、アシルは手をひらひらと振って団員の元を離れると、また元の場所へと戻っていった。
そんな様子を途中から見ていたダリオンもまた
「……ったく、あいつはまた……」
と誰も気付かない苦笑と呟きをもらした。
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