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10章
6 実家とは…2
しおりを挟む一歩中に入ったエントランスも壮麗だった。
高い天井にはびっしりと装飾が施され、吊るされたシャンデリアはクリスタルが煌めいている。目の前の階段は幅広く、おとぎ話のお姫様が降りて来そうだ。
外から見た時にも、その大きさに息をのんだが、中に入ってもめまいがする広さがあった。
おいていかれたら、自力でこの場所に戻ってくることすらままならないだろうとシロウは思う。
階段を登って、広く長い廊下を進むリアムの後を必死についていく。しばらく歩き、廊下の突き当たりより少し前の扉に立ち止まると、「この部屋を使おう」と両手に荷物を持ったまま、扉を開ける。
あまりにも気を取られることが多く、シロウはリアムに自分の荷物を持たせたままなことも忘れていた。
リアムに続いてシロウも部屋に入り、入り口で立ち止まると、思わず「わぁ……」に出して、感嘆をもらしていた。
エントランスから想像できるとおりの豪華な部屋はホテルの一室のように整えられている。唯一想像と違ったのは、エントランスホールや廊下のインテリアから想像するような、ヨーロッパ風ではなく、白を基調としたモダンなものだった。
荷物を置いたリアムが気づいて戻ってくるまで、シロウはどうしたらいいかわからず、その場で立ち尽くしていた。
「シロウ?どうしたの?」
どうしたもこうしたもない。
もう、何が起きているのかわからない。
「あ……の……」
「他の人たちが来るのはもう少し後だし、少しゆっくりしよう」
ゆっくりと言われても、ここに到着してこの方、驚きの連続過ぎて、シロウは落ち着ける気がしない。
「お腹減ってない?何か軽食を持って来てもらう?」
持って来てもらう?どういうことだろう。
着いて早々挨拶も無しに家人に食事を持って来させるなんて、失礼にもほどがある。
シロウは「挨拶を……」と口にする。
「挨拶はいいよ。パーティの時にでも紹介する」
そういう訳にはいかない。
「でも……」
「まだ、俺たちしか着いてないし」
???
どういうことだ?とシロウの頭に疑問が浮かぶ。家人は到着してないが、食事を持って来る人がいる。
「食事……」
あぁという顔をして、「使用人が何人かいるから」とシロウの顔に浮かんだ疑問符にリアムが事もなげに答える。
当然だ。この広い家を金持ちのリアム(やその両親)が掃除などするはずがない。
豪邸にメイドときて、シロウは気が遠くなる。
「大丈夫です……」
何も大丈夫ではない。だが、それ以外にシロウは答えるべき言葉が浮かばなかった。
夕方になって、いよいよパーティの時刻が近づいた頃、それでも部屋は静かだった。
段々と人が到着しているようだが、この広い屋敷では他の場所や外の様子はよくわからない。窓の外を見ると、車が何台も停まっていた。
ちっともささやかではなさそうなパーティにますますシロウの気が重くなる。
目の前に座るリアムは落ち着いた様子で本を読んでいる。シロウも本を持っていたが、読むどころではなく、この数時間椅子に座ってただただ呆けていた。
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