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四話 ごめんね
しおりを挟む数刻前。
「おもてを上げよ」
ツンと冷えきった声に恐々としながら、アルーシャは顔を上げて王に拝謁していた。
いくら宮廷勤めとはいえ、とくに地位も功績もあげてこなかった。いつ来ても王さまの謁見など慣れないなあとアルーシャは思う。
そんなアルーシャをとくに気にした様子はなく、王はいつもの質問をする。
「楽にしろ。それで、ユーリットの様子はどうじゃ?」
「はい。お元気です。とても優秀で、先日は新しい論文が雑誌に載ったんですよ」
ニコニコ、とつい顔が緩む。こんなときでも、愛弟子についての話題ではアルーシャも饒舌だった。そんな魔導士に王もつられて笑い、ほっとした様子でこう言った。
「………そうか。ここ数年は表情も明るくなって、安心していたところだ。そなたの影響かもしれぬ」
「いえ、そんな。私のほうこそ、いつも助けられてばかりで」
あわあわ、と落ち着きなく手を振る。人との関わる楽しさ、魔導を教えることで得る知見。アルーシャのほうこそ、優秀な弟子にいろんなことを教えられるばかりだった。
「最近は私の苦手な計画立案や原稿執筆まで手伝ってくださって………。殿下を見ていると、ああ私も頑張ろう、と思うことができるんです」
♯♯
「………おまえは? 会ったことがあったか?」
「はい。私はユーリット様に魔導をお教えしている研究者にございます」
「おお! おまえか!」
ニコ、とアルーシャは苦手な愛想笑いを貼り付ける。横からユーリットがチラリと不安そうに見上げるのが見えた。
大丈夫だよ、ユーリット。
「ところで殿下、ご歓談中失礼ですが。国王陛下からの言を預かって参りました」
「あっ! そういえば次の予定に入っていたぞ」
「左様にございます。なるべくお急ぎいただきたいとの仰せでした」
「そうか。ならばしょうがないな」
くる、とユーリットに嫌味な笑顔を向けて「おい落ちこぼれ、またな」なんて言うと、ランドロフは足早に去っていった。
残されたアルーシャはさっとユーリットに向き直り、何も言わずに優しく抱き締める。
「………ごめんね、ユーリット。独りにしちゃって」
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