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いち
chapter1 悪党の一目惚れ
しおりを挟む前世を思い出した。
私は前世、極悪で非道で善行の一つせず、それを誇りにして死ぬようなろくでもない皇帝だった。殺して、脅して、恨まれた末に殺されて死んだ悪帝だった。なぜ忘れてたのだろう。今思い出した。
けれどね、そんなことはどうでもいい。私の前世とか、どうでもいい。
なぜって。
私の目の前に今、天使がいるからだーー。
♯♯
アビゲール・ビリーは前世で、人の温かさに触れず生きた。王の側室の子供として生まれ、暗殺の危機に晒されながら成長し、十四で王位を強奪した育ちにも問題はあるのだろうが、それ以前に生来の極悪な性格から人を好きになる感覚がわからなかったのだ。
しかし彼は生まれ変わり、前世を忘れて公爵令嬢として生きた経験から性格が多少は丸くなり、情緒というものが蝉の一生くらいには少し、わかるようになったのである。
つまり何が言いたいのかというとーー。
アビゲール・ビリーは公爵令嬢に転生をして、政略結婚の相手である王子に一目惚れをしたのである。
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