前世で悪帝と呼ばれた令嬢は、婚約者の王子に一目惚れをする。

夜のトラフグ

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いち

chapter3 好きにはならない

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その後、あとはお若い二人で、のノリでアビゲールは王子と二人きりにされた。

(……何を話せばいいのかしらね……)

前世では腹違いの兄弟を虐殺して王位を強奪してから、取り敢えず寄ってくる女性には困らなかった。けれど恋や愛やらとは縁遠い性格をしていたので、言わばこの恋が初恋と言えるわけで、つまり過去の経験は全くあてにならなかった。

(我が前世ながら全く、あてにならない男だわ。まあでも取り敢えず何にしても、会話をしなければ……)

アビゲールがそう考えて適当な話題を切り出そうとしたところで、唐突に王子が口を開いた。

「………ねえ」

おや、なんだろうと刮目する。ああにしても容姿が良い。モロ好みだわ。

「婚約者になったけど。僕は君のこと好きじゃないし、この先も好きにならないから」

王子はそう冷たく言い切って、スタスタと一人歩きだした。残されたアビゲールは暫し硬直する。

(……そんな……そんなことを言うなんて………!)


肩が震え、表情を取り繕うこともできない。あふれでてくる感情が止まらなかった。


この王子、

なんっっって可愛いの……?!


アビゲールは真顔でうち震えていた。
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